第39話 可愛いは正義!
「なんと申しましょうか、本当にごめんなさい」
勇者パーティーが卓を囲み、食事をしている中、スオーラが他のパーティーメンバーに対して頭を下げる。
憮然とするデビィド、無反応のモロコス、苦笑いをするしかないティオラ、反応はそれぞれだ。
そして、異物が一人。
転生魔王リボンちゃんだ。
「あ~、このローストチキンがたまらん! 丁度よい塩加減、最高! 最近、魚の干物ばっかりだったからな~、動物性タンパク。やっぱり獣や鳥の肉も食べないとな」
などと言いつつ、目の前の鳥肉にかぶりつくリボンちゃん。
見た目は可愛らしいが、中身は魔王である。
なんで勇者パーティーの食卓に魔王が紛れ込んでいるのか、理解に苦しむのがパーティーメンバーの偽りなき反応だ。
スオーラにしても、魔王が転生したという話は聞いていたが、容姿までは把握しておらず、ましてレベルアップからの擬態能力の向上などと言うのは、完全に盲点であった。
「なあ、魔王よ、勇者パーティーの晩餐に紛れ込んで、何がしたいんだ?」
「もちろん、食事だが? (。´・ω・) バカナノ? 」
「俺らに食い物せがんで、魔王としてのプライドないのか!?」
「食わなきゃ死ぬ体だからな、今の体は。定期的な“物理的”栄養摂取は必須だ」
「今までは!?」
「そりゃあ、人間の負の感情を糧にするのが、魔族と言うものだ。適当に村一つ丸焼きにすれば、それだけで1ヶ月は持つぞ。 (`・з・)b~♪」
「よし、このバカを消そう!」
しかし、意気込んではみても、デビィドには手が出せない。
リボンちゃんに掴みかかるも、薄い膜のようなものが現れ、掴みかかろうとする腕を弾き飛ばす。
納税者に対して無敵状態となる、徴税官の固有スキルだ。
「あ~、マジでそうなるんだ。こりゃ手が出ませんね」
ティエラも無敵状態の徴税官を始めて見たので、興味津々だ。
「ちなみに、魔王、“徴税官”って儲かる?」
「標的を見つけられるかどうかだな」
「あ、やっぱり?」
「最近は『個人証明札』と銀行口座の紐づけで、税金の自動引き落としが主流になっているからな。国税局も、地方の税務署も、徴税官への依頼がめっきり減っている。高額現金取引した輩の調査がせいぜい。ほぼ廃れた職業だ」
「その割には、わざわざ徴税官を選んだわね」
「勇者がいたからな。 ( ^艸^) ムププ」
魔王が馴れ馴れしく勇者を小突き、これ見よがしに挑発する。
一発ぶん殴ってやりたいデビィドであるが、やっても無駄だと分かっているので、我慢の一言だ。
そんなイラつくデビィドを後目に、リボンちゃんとティエラは話を続ける。
「実際、ジャン王も意外な顔をしていたぞ。『勇者や王族以外の職業ならどれでもいいぞ』と言われてな。ペコニアの提案で徴税官にしたら、『え? いいの?』みたいな顔をしていた。 (´・ω・`) ← コレ」
「わざわざ廃れた職業を選んだらそうなるよね」
「ペコニアもあれこれ調べていたようだからな。順法闘争しつつ、勇者への報復を考えた場合、徴税官がベストであったというわけだ」
「“金欲”の二つ名はハッタリでもないわね~」
などとのほほんと会話するティエラ。
そこに“バァン!”とデビィドの拳が机に振り下ろされる。
危うく料理の皿がひっくり返されるほどの衝撃が、音と共に周囲に広がる。
「ティエラもいい加減にしろよ! なぁに、魔王と馴染んでんだよ、おい!?」
デビィドからすれば、リボンちゃんとペコニアは不倶戴天の敵だ。
納税者視点の徴税官は、悪魔、厄介者、それ以外の何者でもない。
しかし、自分以外のパーティーメンバーは平時と変わらない態度で通している。
「いや~、何と言うか、ペコニアより友好的な態度だし? 可愛いって言うかさ」
と、ティエラ。
「そうそう。可愛らしいですからね」
と、スオーラ。
「まあ、ペコニアほど、露骨に嫌がらせはしてきていないし」
と、モロコス。
「お前らさぁ、【常時発動・魅了】にかかってないか?」
と、疑ってかかるデビィド。
実際、その可能性は捨てきれなかった。
ティエラとモロコスは“職業変更”によって、現在はレベル1。
リボンちゃんはレベル10であるため、格下扱いだ。
スオーラはレベル46ではあるが、そもそも“子供には大甘”という性格。
3人揃って隙だらけだ。
そして、納税者であるデビィドは、徴税官であるリボンちゃんに手も足も出ない。
(まさか、この状況を呼んで、わざと魔王を単独でここに来させたか!? ペコニアの野郎、相変わらずいやらしい性格をしている!)
可愛いは正義である。
中身が魔王だと分かっていても、見た目に引っ張られてしまう。
勇者パーティーは実質無力化されたのかもしれない。




