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問.俺は魔王を倒して世界を救った勇者なんだが、それでも税金って払わないとダメなの?  作者: 夢神 蒼茫


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第21話 再会するパーティーメンバー

 ティエラとモロコスが結婚したという衝撃の事実。


 自分が自堕落に過ごしてきた一年の内に、何がどうなってそうなったのか。


 小走りで二人がいると言う開墾現場に急ぐデビィド。



「あれだな」



 凄まじい轟音と共に吹き飛ぶ木々や岩。


 普通の開墾現場とは明らかに違う光景に、デビィドも思わず苦笑い。


 勇者パーティーの顔触れが魔王軍と戦う以外で全力を出すとこうもなるのかと、素直に感心した。


 荒れ地や原生林から耕地を作り上げると言うのは、とにかく手間がかかるのだ。


 だが、そんな常識など、勇者パーティーには通用しない。



「しっかし、持てる力、全開でやってるって感じの開墾だな」



 開墾の現場は凄まじい光景が繰り広げられていて、デビィドを感嘆とさせるに十分であった。


 開墾と言うと、原野や森林を切り開き、農地や牧場に変える作業だ。


 言葉で言えば単純なように見えるが、それほど簡単な作業ではない。


 整備された農場と違い、開墾する土地は“邪魔者”だらけだ。


 まず、木や石をどかさない事には始まらない。


 樹木は根を張っているので、それを切り倒して掘り起こさねばならない。


 石も動かさなくてはならないし、そのまま動かせないなら砕いて細かくしてから動かす事もざらだ。


 枝木なども残らず拾い、しかもそれが終われば整地作業が待っている。


 ボコボコの地表部をならし、平面にしておかねば使い物にならない。


 しかも、肥沃度が低いため、耕した後はクローバーなどの“緑肥”を植えて、地力を上げねばならない。


 あるいは、“蹄耕ていこう法”というやり方もある。


 切り開いた場所に牛などの“ひづめ”を持つ家畜を放ち、雑草を食ませ、排泄物を肥料とし、蹄をくわの代わりにして耕す。


 ある程度の期間、放牧しておけば、土地は柔らかくなり、肥沃度も上がる。


 しかし、目の前の二人はそんな“常識的な開墾方法”を無視していた。


 ティエラは並び立つ樹木に即死魔法の【冥府開門デスゲート】をかけて回って枯死させ、それをモロコスが巨大な斧でバッタバッタと薙ぎ倒していく。


 時間がかかるであろう“伐根”も、爆裂魔法や怪力で吹っ飛ばし、ボコボコになった地面も、【局所地震グランドバスター】を調整して均していく。


 その他の一般農夫はと言うと、倒れた木を斧で裁断し、たきぎに変える作業をしていたりする。


 普通にやれば何日かかるんだと言う作業も、勇者パーティーの二人にかかれば容易いものであった。



「さすがは大魔導士アークウィザード聖戦士パラディンといったところか。おおい、ティエラ、モロコス!」



 デビィドが大声を張り上げると、二人もすぐに気付いた。


 一年ぶりの再会を喜んでか、二人は駆け足でデビィドに近付いてきた。



「勇者様! 来てくれたんですか!」



「よう、デビィド! 久しいな!」



 以前と変わらぬ態度の二人。


 違う点があるとすれば、来ている衣服くらいなものだ。


 かつて来ていた漆黒のローブや純白の甲冑はそこにはない。


 泥と、汗と、堆肥・・の匂いにまみれた、実に農夫らしい姿だ。


 しかし、目の前の二人は結婚したというのだが、そう言う雰囲気が一切ないのも同時に感じる。


 なにしろ、ティエラは以前のようにデビィドに飛びつくように抱き付き、それをモロコスが咎めるでもなく、むしろ笑っている風にすらみえる。


 本当に前のまま(・・・・)なのだ。



「…………? 勇者様?」



「すまん、ティエラ。ここ一年、ろくな生活をしていなくてな。おまけに大問題が発生して、着の身着のままここへ来たんだ」



「えぇ!? って事は、あたしやモロコス、スオーラの手紙、読んでないの!?」



「あ……、ああ、読んでないんだな、これが」



 単に、郵便物に一切、手が伸びていなかっただけである。


 手紙を出したと言う事は、あのポストからあふれ出た郵便物の山の中に、仲間からの手紙が混じっていたと言う事だ。


 結婚云々の話もそうであるし、おそらくは何か重大案件が発生していたのだろうが、それを知る機会を自堕落な生活で逸していた事になる。


 デビィドとしては恥じ入るばかりではあるが、それは置いておく事にした。


 まずは情報のすり合わせが先だ。



「いや~、恥ずかしいことながら、まともに世間から隔絶した生活だったんでな。何かあった事は察するが、どうなってんだ?」



「その様子だと、新聞とかも読んでませんね? 冒険者組合(ギルド)の掲示板も」



「そんな大きな事件があったのか!?」



「その点は当事者モロコスに聞いた方がいいかも」



 そう言って、ティエラは抱き付くのを止め、モロコスに視線を向けた。


 モロコスにしろ、ティエラにしろ、その表情は深刻そのものであり、それだけに事態の深刻さが察するに余りある。


 デビィドはその話に耳を傾けた。



「実はな、それがしが所属していた騎士修道会“テンプル騎士団”なんだが、異端の嫌疑をかけられ、解散したんだ」



「マジで!? だって、あそこってメチャクチャ大きな組織じゃなかったっけ!?」



「まあな。正規の騎士階級だけで2000名を超えるし、それがしのような“従士”階級まで加えると1万人は下らない。まあ、それがしの場合は孤児だから従士階級が精々のところを、魔王討伐の功績から正規の騎士に格上げされた」



「だよな……。それが組織ごと解散!?」



「ああ。幹部も、正規の騎士も、それらが一斉検挙されたって話だ」



「なんだって、またそんな事に!?」



「理由は“邪神崇拝”だ。表向きは光神を礼賛しながら、裏で邪神を密かに祀り、邪悪な祈りを捧げていたんだとさ」



 などと説明するモロコスであったが、露骨に怒りをあらわにしている。


 そんな説明で納得がいくかと言う態度だ。


 言葉、態度、その端々から王国への不信感がにじみ出ている。


 これは本当に只事ただごとではないぞと、デビィドも冷や汗をかいた。

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