表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
問.俺は魔王を倒して世界を救った勇者なんだが、それでも税金って払わないとダメなの?  作者: 夢神 蒼茫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/101

第15話 装備品にかかる税 (1)

「さってと、一般的な税だけ破産確定とはいえ、まだまだ物足りませんし、とっとと次の税金を搾り取りましょうか」



 ペコニアは嘗め回すかのように勇者宅の中を見回した。


 どれにしようか、迷うかのような視線であり、獲物を見定める視線でもある。


 何が一番、搾り取れそうか?


 どれが楽に税を算出できるか?



「 アレ (σ^ロ^)σ アレガイイ」



 リボンちゃんが指さす先には、勇者が装備する“伝説の剣”があった。


 勇者だけが装備する事ができる伝説の剣『空の裂く者(チェイロ・マニポーラ)』だ。


 そう言えばそれがあったと、ペコニアも納得し、勇者の持つ剣に近付いた。



「さすがは魔王様。目の付け所が違います。“これ”がありましたね。魔王様を倒した憎き道具。今度はこれを用いて、逆に勇者を破滅させるのも一興」



「ふざけんな!」



 勇者デビィドは激昂して、剣を鞘から抜いて威圧した。


 “勇者の装備する伝説の剣”の触れ込みには一切の嘘偽りもなく、帯びた魔力も桁外れであり、魔王を倒すための武器としては極上のものだ。



「てか、“物”からも税金を取るのかよ!?」



「当然です。高価な武器防具はそれだけで“資産”ですからね。ちゃんと“償却しょうきゃく資産”として申告してもらわないと、税務署こちらとしても困ります」



「“伝説の武器”にまで税金かけんのかよ……」



「まあ、この剣の場合はちょっと特殊ですけどね」



 そう言って、ペコニアは勇者から剣を取り上げてしまった。


 通常の腕力勝負であれば勇者に軍配が上がるが、今は“監査中”である。


 監査中の“徴税官”は“納税者”に対して、税調査に関する事案に限り無敵になれる。


 資産の調査などで、物理的な妨害ができないようにするための特殊スキルだ。



「あ、俺の剣!」



「黙って見てなさい。【道具鑑定ヴェルタティオーネ】」



 ペコニアは魔術を使って伝説の剣を調べ始めた。


 軽く発光したかと思うと、いくつかの情報が可視化され、思わず唸り声を上げる。



「うほぉ~、これは凄い。さすがは伝説の武器ね。性能が店売り品とは段違いだわ」



「そりゃそうだ。量産されている武具屋の物とは違うに決まっている!」



「う~ん。基礎攻撃力130、“天操術”の性能向上、風属性魔術のMP軽減、装備者の速度向上、か。攻撃力も、付与されている魔力も、伝説の逸品に相応しいわね」



「でも、そいつに“資産価値”はないぜ?」



「あら、どうして?」



「前に、遊び半分にその剣を売ろうとしたんだよ。そしたら、店のおっさんが『5マネイでよければ買い取るぞ』って」



「そりゃ、持ってても使い道のない武器なんかそうなるわよね。頑丈過ぎて、鋳潰して材料にする事もできないし……。まして、“勇者専用装備”じゃなおの事」



「俺だけのための武器だ! 誰も使えないし、使わせないぞ!」



「だからこそ、目障り。勇者の象徴的な武器なんて、ぶっ壊したいもの。実際、魔王様がこの剣を一度破壊した時なんて、それこそ“3年”もかかったし」



「 (≡ε≡;A) モウヤリタクナイ」



「その潰されて材料の“オリハルコン”に戻されたのを、伝説の名工ロイ=ベルクの手によって、再び剣になったんだぞ。それも前作にはなかった魔力まで付与されて!」



 冒険の苦労話の一つなのだが、勇者にとっては武勇譚であっても、魔王側の視点で見れば死刑宣告文を聞かされているような気分だ。


 その作り直された“伝説の剣”のおかげで、どれほどのモンスターの血が流れた事か、想像するだけで腹立たしい。


 だが、今は別だ。


 その伝説の剣こそ、勇者を破滅させるのに十分すぎる理由がある。



「しかし、リストを見る限り、“償却資産”として、登録された形跡がありませんね」



「てか、さっきから言ってる“償却資産”ってなんだよ!?」



「平たく言いますと、土地や家屋以外の事業用資産の事を指して言います。そうですね~、例えば、食事処レストランですと、土地と家屋に関しては固定資産税の方で算出されます。一方、付属の建造物、例えば騎獣を停めておく厩舎や庭園、あるいは溝や堀などの外構部もそれに該当します」



「うへ、そこまで計算されるのかよ」



「内装になりますと、机や椅子などの家具類から、調理に必要な窯やなんかの調理器具もそう」



「それもか!」



「そして、この国の法律においては、“5万マネイ以上の事業用資産”は購入時に、償却資産として登録しておく義務があります。そして、“償却資産”はそれぞれの物品の種類によって設定されている“償却年数”で割って、年間の償却金額を算出。所持する物品の年間償却金額が“15万マネイ以下”であれば課税対象とはなりませんが、それ以上であれば課税されます」



「だったら、この剣は店で売ろうとしたら5マネイなんだし、課税対象になるような資産価値ないだろ!?」



「ところが、そうでもないんですよね~。リシャール王が制定した『武器防具に関する累進課税』がありますので」



「なんじゃそりゃ!?」



 初めて聞くような話ばかりで、頭が混乱する勇者。


 一方、“税”に関する事はきっちり頭の中に叩き込んできた“元”魔王軍幹部。


 正直な話、現段階で装備している“知識”と言う名の武器は、両者の性能差は段違いと言える。



「亡きリシャール王が新たに制定した税制度として、冒険者の装備品に関する税を設定というのがあります。それまでは野放図であった冒険者への課税について、『個人証明札マインカード』の普及に合わせて、キッチリ課税しようと目論んだわけです」



「やっぱ、カードで紐づけにして、税を搾ろうって腹か!?」



「一般的にはそう思われたようですが、リシャール王が考えたのは別。武器や防具の品質向上を目指したというのが本当の理由」



「品質向上だと!?」



「それまでの鍛冶屋は工房が違えば、同じ装備品でも品質にばらつきがあり、人気不人気が出てしまっていたわ。そのため、『償却期間終了前に破損した場合は、作った工房が責任をもって修理を格安で行う事』も同時に義務付けたのよ」



「あ、そう言えば、冒険初期の頃、ティエラが壊れた武器防具を工房に持ち込んで、修理依頼してたっけ」



「その修理が面倒だからと、その回数を減らすためにとにかく、“壊れにくい武器や防具”を必死で鍛冶組合(ギルド)が全体の技術向上に努めた。結果、どの工房でも品質が安定するようになり、そうでない所は淘汰されていったわ」



「へぇ~、税金一つでそうなるのか」



「税ってのはね、言ってしまえば国家の指針を端的に表すものよ。どこから税を取り、どこに集めた税を投じるかで、国家の有様が分かる。訳の分からない事に予算を投じたりすれば、たちまち国が傾く」



「まあ、そりゃそうだな。んで、リシャール王の方針は『コンクリートから人へ!』だっけか?」



「そう。魔王軍こっちが町村や都市を潰すならば、それを防げる優秀な戦士や魔術師を育てよう。復旧はその次であり、そもそも優秀な人材が揃っていれば、街を焼かれる事もない、という信念の下にね」



 ペコニアとしては、まさに自分達が敗れた理由を呼びあげているような気分であり、忌々しくもなった。


 そして、そのリシャール王の指針が完全な形で実ったのが、目の前にいる勇者だ。


 数多の豪傑を作り出し、その中からいよいよ魔王をも倒せる英傑が生まれたのだ。


 何度も何度も繰り返して“勇者”を送り出し、戦死の報を聞いてもめげずに“勇者事業”を続けた結果の魔王討伐。


 リシャール王の執念とも言える逸話だ。



「そして、この剣、基礎攻撃力が“100”を超えていますね」



「だからなんだよ!」



「実はですね。リシャール王が『武器防具に関する累進課税』のがありましてね。それは『基礎攻撃力が“100”を超える武器に関して大幅な累進課税をする』なのよね~」



「な、なにぃぃぃ!?」



 またしても寝耳に水な話。


 ペコニアの話によると、基礎攻撃力が“100”を超えると、大きな課税対象になるのだと言う。


 そして、勇者デビィドが持つ伝説の剣はまさにその条件に合致する。


 冒険をやめた今となっては、税金だけ搾らせる“負の遺産”と言うべき代物。


 勇者には愛用の剣がゴミとして目に映るようになってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ