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第89話 七曜会は味方ではない

 七曜会が動いた後、被害は減った。


 それは、誰にも否定できない事実だった。


 浪華色街の地下闘技場は、翌朝までに三つ潰された。


 難波ジャックの直系ではないが、観客熱量を利用した簡易契約場が二つ。

 低ランク探索者を借金で縛り、色相反応を賭け札に変えていた拠点が一つ。


 どれも管理局が以前から把握していた場所ではない。


 少なくとも、正式な摘発対象には入っていなかった。


 七曜会は、それを一晩で押さえた。


 被害者は救出された。


 登録前の新人探索者が五名。

 契約を盾に戦闘を強要されていた低ランク探索者が十一名。

 違法な観測端末に繋がれていた色相反応未確定者が三名。


 七曜会は速かった。


 強かった。


 迷わなかった。


 泣いている探索者には医療班をつけた。

 暴れる運営側には拘束具をつけた。

 証拠端末は即座に隔離した。

 契約書は金系解析へ回した。

 記憶汚染が疑われる被害者には紫系処置を入れた。


 正しい。


 あまりにも正しい。


 だから、誰も最初は言えなかった。


 その正しさが、怖いと。


     ◇


 白峰リアの端末には、朝から通知が溜まっていた。


 昨日、リアは配信をしなかった。


 自分で決めた。


 七曜会に言われたからではない。

 管理局に止められたからでもない。


 浪華色街の件を、怒りや善意の熱量として燃やしてしまうのが怖かったから。


 だから、配信画面を閉じた。


 だが、閉じたからといって世界が止まるわけではない。


 視聴者からの心配。

 憶測。

 切り抜き。

 七曜会という名前への反応。

 浪華色街という未確認ワード。


 何も言わなければ、別の誰かが勝手に物語を作る。


 リアは、それも分かっていた。


 だから、短い文章だけ出そうと思った。


 配信ではなく、投稿。


 怒りを煽らない。

 断定しない。

 でも、自分が黙らされたわけではないと伝える。


 文面は、何度も直した。


【昨日の件について、今は詳しいことは話せません。

ただ、私は自分の意思で発信を控えています。

誰かに黙らされたわけではありません。

心配してくれた人、ありがとう。落ち着いたら、私の言葉で話します。】


 これならいい。


 リアはそう思った。


 送信ボタンに指を置いた瞬間、画面が白くなった。


【高影響情報源による危機事案関連発信】

【七曜会リスク評価中】

【投稿は一時保留されました】


 リアは、しばらく画面を見ていた。


 怒りより先に、寒気が来た。


「……は?」


 声が漏れる。


 投稿は削除されたわけではない。


 禁止されたわけでもない。


 ただ、保留。


 評価中。


 言葉が柔らかい。


 柔らかいのに、指先が動かなくなる。


 すぐに別の通知が届く。


【七曜会・日向アキラ】

【白峰リアさん。あなたの判断を尊重します。

ただし、現段階ではあなたの発信が被害者保護と捜査進行に影響する可能性があります。

文章は確認後、必要最小限の形で公開可否を判断します。】


 あなたの判断を尊重します。


 その一文が、一番気持ち悪かった。


 尊重しているなら、止めるな。


 リアは端末を握りしめた。


 配信をしなかったのは、自分の意思だ。


 でも、投稿を止められた瞬間、その意思まで七曜会の管理下に置かれた気がした。


 リアはメモアプリを開いた。


 公開できないなら、せめて自分のために書く。


【私は、黙ることを選んだ。

でも、黙らされることは選んでない。】


 その一文だけを残し、リアは端末を伏せた。


     ◇


 九条セイラは、代表権を失った財団の応接室にいた。


 昨日まで自分の部屋だった場所。


 今は、使用許可を取った個人相談室という扱いになっている。


 馬鹿げている。


 だが、法的にはそうなっていた。


 金剛サクヤの《正統簿》は、財団の代表権を一時停止した。


 セイラが作った場所。

 セイラが資金を集めた場所。

 セイラが契約相談の仕組みを整えた場所。


 その中心権限が、公共性と危機対応の名で切り離された。


 完全に奪われたわけではない。


 そこが余計に腹立たしい。


 相談者がセイラを個別に選ぶことは許されている。


 職員が個人的にセイラへ意見を求めることも禁じられていない。


 ただし、財団としての決定はできない。


 支援先の指定も、資金の動きも、契約保全の優先順位も、危機審査委員会の承認待ち。


 セイラは椅子に座り、机の上の端末を睨んでいた。


 画面には、低ランク探索者向けの緊急支援リストが表示されている。


 浪華色街から救出された被害者のうち、数名が財団の支援対象になる可能性があった。


 セイラなら、すぐに動かした。


 医療費の仮払い。

 悪質契約の停止申請。

 宿泊先の確保。

 家族への連絡支援。


 だが、今はできない。


【代表権限が一時停止されています】

【危機審査委員会の承認を待機してください】


 その表示が、何度も出る。


 セイラは低く言った。


「承認を待っている間に、人は困るのですけれど」


 応接室の扉が開いた。


 入ってきたのは宮野アキだった。


 以前、悪質な契約書にサインしそうになった新人探索者。


 昨日、金剛サクヤの前でセイラの後ろに立った一人だ。


「セイラさん」


「ノックくらいなさい」


「しました」


「聞こえませんでしたわ」


「じゃあ、たぶんセイラさんが端末にキレてたからです」


「キレてませんわ」


「キレてます」


 セイラは睨んだ。


 アキは怯えたが、それでも部屋に入ってきた。


「相談、いいですか」


「財団代表としては受けられませんわ」


「セイラさん個人として」


 その言葉に、セイラは少しだけ黙った。


 金剛サクヤが残した抜け道。


 代表権は奪う。


 だが、個人として相談されることまでは禁じない。


 禁止すれば、現場承認がさらにセイラへ寄るから。


 嫌な女だ。


 だが、その隙間は使える。


「座りなさい」


 セイラは言った。


 アキが座る。


 差し出されたのは、浪華色街から救出された探索者の仮支援申請だった。


「この人、同じ訓練所にいた子です。契約を盾に、しばらく闘技場に出されてたみたいで」


「財団の公式支援はすぐには動かせませんわ」


「分かってます」


「分かっていて持ってきたの?」


「はい」


 アキは、少しだけ俯いた。


「セイラさんなら、まず何を読むのか知りたくて」


 セイラは端末を見た。


 悪質契約。


 医療費立替。

 装備債務。

 映像利用権。

 違約金。

 本人同意。


 似たような文面を、何度も見てきた。


 怒りが湧く。


 同時に、手が動いた。


「まず、本人同意の時刻。次に、医療処置記録との矛盾。映像利用権は範囲が広すぎますわ。装備債務は上限記載がない。違約金は無効主張できます。ここ、見なさい」


 セイラは、いつものように説明を始めていた。


 代表権はない。


 財団の決定権もない。


 だが、読むことはできる。


 教えることはできる。


 アキは真剣に頷いた。


 その様子を見て、セイラは不意に気づく。


 所有とは、命令できることではない。


 自分がいなくても、誰かが読めるようにすること。


 金剛サクヤの《正統簿》は、セイラから代表権を奪った。


 なら、セイラは別の形で残せばいい。


 権限ではなく、読み方を。


「アキさん」


「はい」


「今日から、あなたにも契約書の読み方を覚えてもらいますわ」


「え、私がですか」


「当然です。私が止められている間、あなたが読めばいい」


「無理です」


「無理と言う前に読みなさい」


「セイラさん、教え方きつそう」


「きついですわよ」


 アキは青ざめた。


 それを見て、セイラは少しだけ笑った。


 七曜会は味方ではない。


 だが、全部を奪われたわけではない。


     ◇


 鴉羽ミナトは、七曜会の摘発現場を遠くから見ていた。


 場所は大阪市内の古い雑居ビル。


 浪華色街の末端拠点。


 表向きは配信用機材の倉庫。


 中身は、賭け札端末と契約ログの保管庫だった。


 七曜会は、速かった。


 ミナトが裏口の監視カメラに触れるより先に、土岐ネムが中へ入っていた。


 黒。


 暗殺と潜入の色。


 ミナトの《影帳》は、認識ログから自分の重要度を薄める。


 見られても、重要だと思われにくくする力。


 だが、ネムの黒は違う。


 見られる前に、そこにいない。


 痕跡を薄めるのではなく、処理対象との距離そのものを消す。


 ミナトは、正面から戦いたくない相手だと思った。


 数分後、ビルの中から悲鳴が上がる。


 すぐに静かになる。


 七曜会の車両が到着し、拘束された運営関係者が運び出される。


 被害者らしき若い探索者も数人出てきた。


 医療班が駆け寄る。


 毛布をかける。


 水を渡す。


 優しく声をかける。


 ミナトは、思わず舌打ちした。


「……仕事が早いね」


 救出としては完璧だった。


 ミナトが一人で潜っていたら、ここまで綺麗にはできない。


 証拠も押さえている。


 被害者も守っている。


 運営側の逃走経路も塞いでいる。


 七曜会は、本当に役に立つ。


 それが腹立たしい。


 ミナトの端末が震えた。


【七曜会・土岐ネム】

【鴉羽ミナト。現場周辺での影帳使用を確認】

【警告:救出作戦への干渉を禁止】

【次回確認時、拘束対象】


 ミナトは思わず笑った。


「見えてるんだ」


 いや、見えているというより、読まれている。


 自分がここに来ると分かっていた。


 浪華色街の残党を追うなら、ミナトは必ず裏から見る。


 七曜会は、その動きも想定している。


 さらに別の通知。


【七曜会危機対応記録】

【鴉羽ミナト】

【分類:黒系情報干渉者】

【評価:有用/非協力】

【対応:限定監視】


「有用、ね」


 ミナトは笑みを消した。


 商品札と大差ない。


 浪華色街は、値段をつけた。


 七曜会は、分類をつける。


 どちらも人を見ているようで、使い道を見ている。


 もちろん違いはある。


 七曜会は被害者を救っている。


 浪華色街のように人を賭け札にしていない。


 それでも、ミナトは思う。


 ここにいる限り、自分は自由ではない。


 黒は、黒に見られている。


     ◇


 御影カナタのところにも、七曜会から文書が届いていた。


【御影カナタ】

【七曜会内部契約への干渉禁止要請】

【期間:色相危機評価更新まで】

【補足:拒否時、契約干渉リスクとして監視強化】


 カナタは、端末を一瞥して閉じた。


 返事はしない。


 署名もしない。


 ただ、内容は読む。


 癖だ。


 読まずに拒否するのは、危ない。


 相手が何を縛ろうとしているか分からないまま反発すれば、次の条件を読めない。


 水城リョウは、また来る。


 たぶん次は、もっと断りづらい条件を持ってくる。


 相原ユウ。

 黒瀬透真。

 神楽坂レイジ。

 九条セイラ。


 誰かの名前を条件に入れてくるかもしれない。


 カナタは、紙のノートに要点を書き出した。


 端末には残さない。


 七曜会に読まれる前提で動く。


 それが今の最低条件だった。


【七曜会は、正しい条件で縛る】

【悪質ではない】

【だから危険】

【相手の提示する善条件に、自分を入れない】

【本人確認より先に契約しない】


 最後の一文で、カナタは手を止めた。


 本人確認。


 それは相原ユウだけの話ではない。


 リアも。

 セイラも。

 透真も。

 神楽坂も。

 ミナトも。


 七曜会は、本人より先に危険度を定義する。


 それが速さだ。


 ならカナタが見るべきなのは、その逆。


 本人が何を選んだのか。


 選ぶ前に、何を奪われたのか。


 そこを記録しなければならない。


 カナタはノートを閉じた。


 疲れていた。


 面倒だった。


 できれば帰りたかった。


 それでも、帰るには早すぎる。


 まだ、誰も自分の名前を自分で書き終えていない。


     ◇


 灰原ナギの部屋は、今日も静かだった。


 S級ダンジョン内部に残された、休息街区。


 願望の街。


 優しい嘘を見せる場所。


 かつて、透真たちはここで休み、迷い、そして戻った。


 ナギは、人間に必要とされたいダンジョンだった。


 紫。


 記憶と願望の色。


 そのナギの契約監視が、今日から強化された。


 管理局ではない。


 七曜会。


 担当者は、月守ユエ。


 七曜会の月。


 珍しい紫の高位能力者。


 ナギは、休息街区のベンチに座っていた。


 街灯の下。


 誰もいない夜の街。


 そこへ、月守ユエが現れた。


 黒髪を緩く結んだ、眠たげな目の女性。


 足音はない。


 まるで夢の中に、最初からいたような現れ方だった。


「灰原ナギさん」


 ユエは言った。


「七曜会、月守ユエです」


 ナギは、しばらく彼女を見た。


「あなた、紫ですね」


「はい」


「私と同じ?」


「近いです。でも、違います」


 ユエは微笑む。


「あなたは、休ませる紫。私は、記録して閉じる紫です」


 ナギは、少しだけ怯えた顔をした。


「閉じる?」


「悪夢が広がらないように」


「私は悪夢じゃありません」


「知っています」


 ユエは、ナギの隣に座った。


 休息街区の夜風が、二人の間を通る。


「あなたは、人間に必要とされたかった」


 ナギは俯いた。


「……悪いことですか」


「いいえ」


「でも、危険なんですよね」


「はい」


 ユエは嘘をつかない。


 その正直さに、ナギの肩が小さく震える。


「私は、もう人を閉じ込めません」


「記録では、そうなっています」


「透真たちも、戻りました」


「はい」


「じゃあ、どうして監視を強くするんですか」


 ユエは、街の奥を見る。


 そこには、誰かの願望から作られた店が並んでいる。


 開かないカフェ。

 帰らなくていい部屋。

 死者に会える曲が流れる古いレコード店。


「あなたが変わったからです」


「変わったら、危険なんですか」


「変わるものは、危険にも希望にもなります」


 ナギは、その言葉を理解しきれない顔で見た。


 ユエは続ける。


「七曜会は、あなたを壊したいわけではありません。むしろ、必要としています。傷ついた探索者を安全に休ませる場所として」


「必要と、してくれるんですか」


「はい」


 ナギの表情が、少しだけ明るくなる。


 だが、ユエは次の言葉を止めなかった。


「その代わり、あなたが誰を招くか、どんな願望を見せるか、誰が帰ったか、誰が帰りたがらなかったか、記録します」


 ナギの表情が固まる。


「それは、休む場所ですか」


「管理された休息です」


「管理されたら、休めますか」


「休める人もいます」


「休めない人もいます」


「はい」


 ナギは、膝の上で手を握った。


「透真は、嫌がると思います」


「でしょうね」


「リアも、嫌がるかも」


「はい」


「カナタは、たぶん契約を読みます」


「読むでしょう」


「セイラは、怒ります」


「怒るでしょうね」


 ナギは、少しだけ笑った。


 その笑いは、寂しかった。


「みんな、面倒ですね」


「はい」


「でも、好きです」


「記録しておきます」


「それは、ちょっと嫌です」


 ユエは、少しだけ目を細めた。


「では、私の記憶にだけ」


「それも嫌です」


「難しいですね」


「はい」


 二人はしばらく黙った。


 同じ紫。


 けれど、まったく違う紫。


 ナギは人を休ませるために夢を見せる。


 ユエは夢を記録し、必要なら閉じる。


 七曜会は、ナギを壊さない。


 むしろ利用する。


 休息街区を、管理された避難場所として。


 それは多くの人を救うだろう。


 同時に、ナギがナギでいる自由を狭める。


 ナギは小さく言った。


「七曜会は、味方ですか」


 ユエは、少し考えてから答えた。


「味方になる時もあります」


「敵ですか」


「敵になる時もあります」


「じゃあ、何ですか」


 ユエは夜空を見上げた。


「必要な時に来る人たちです」


 ナギは、その答えを好きになれなかった。


     ◇


 黒瀬透真は、七曜会から届いた通知を見ていた。


【分類:未確保観測対象】

【評価:中立性なし】

【対応:監視強化】


 中立性なし。


 その言葉は、まだ胸に残っている。


 透明だから、どこにも属さないのではない。


 透明だから、何を通すか選ばなければならない。


 七曜会はそれを危険と呼んだ。


 透真自身も、否定できなかった。


 端末には、さらに複数の情報が届いている。


 リアの投稿保留。

 セイラの代表権停止後の個別相談継続。

 ミナトへの限定監視。

 カナタへの契約干渉禁止要請。

 ナギ契約監視強化。

 神楽坂レイジの発言制限。


 全部、正しい理由がついている。


 被害者保護。

 捜査保全。

 契約リスク管理。

 社会不安の抑制。

 色相危機対応。


 正しい。


 だが、その正しさの中で、透真たちの動ける場所が少しずつ狭くなっている。


 透真は、端末を閉じた。


 そして、紙のメモを取り出した。


 電子端末ではなく、紙。


 カナタの真似だった。


 そこに、関係者の名前を書いていく。


 白峰リア。

 九条セイラ。

 鴉羽ミナト。

 御影カナタ。

 神楽坂レイジ。

 灰原ナギ。

 相原ユウ。

 佐伯ユズル。


 最後に、自分の名前。


 黒瀬透真。


 七曜会は味方ではない。


 そう書こうとして、透真は手を止めた。


 味方ではない。


 それは簡単だ。


 だが、敵とも言い切れない。


 七曜会は被害者を救っている。

 浪華色街の残党を潰している。

 ナギを壊さず、管理しようとしている。

 相原を守る理由もある。

 リアの発信を止める理由もある。


 正しさがある。


 だから、厄介なのだ。


 透真は、別の言葉を書いた。


【七曜会は、正しさで自由を削る】


 それを見て、少しだけ息を吐いた。


 これなら、今の感覚に近い。


 味方か敵かではない。


 七曜会は、必要だと判断した瞬間に近づいてくる。


 助けるために。

 止めるために。

 記録するために。

 分類するために。

 そして、管理するために。


 透真はメモを折りたたんだ。


 誰に最初に見せるべきか。


 その順番を考えなければならない。


 だが、その前に、端末が震えた。


 佐伯ユズルからだった。


【佐伯ユズル】

【火野ガクが動きました】

【対象はロロです】


 透真の指が止まる。


 火野ガク。


 七曜会の火。


 紅の戦闘担当。


 そして、ロロ。


 紅黒ジョーカー・ステップ


 透真を一方的に倒し、相原をさらい、浪華色街へ連れていった災害。


 メッセージは続く。


【位置情報を送ります】

【ただし、あなたは動かないでください】

【これは命令ではなく、お願いです】


 透真は、画面を見つめた。


 お願い。


 命令ではない。


 その違いを、佐伯はわざわざ書いた。


 七曜会なら、危険だから動くなと分類しただろう。


 佐伯は、お願いと書いた。


 だからこそ、透真は迷った。


 位置情報が届く。


 表示された場所は、東京湾岸の廃倉庫街。


 そこに、短い追記があった。


【火野ガク、ロロを発見】

【単独接触の可能性あり】


 透真の背中に、冷たいものが走った。


 七曜会は強い。


 火野ガクも、当然強いのだろう。


 だが、相手はロロだ。


 強い弱いだけで測れる相手ではない。


 透真は、メモを握りしめた。


 七曜会は味方ではない。


 だが、だからといって、七曜会の誰かが死んでいいわけではない。


 透明は、何を通すか選ばなければならない。


 その選択は、もう始まっていた。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


七曜会は、被害者を救います。

浪華色街の残党も潰します。

ナギを壊さず、契約監視を強化します。


明らかに役に立っている。

でも、その正しさの中で、リア、セイラ、ミナト、カナタ、透真たちの自由は少しずつ削られていきます。


だから、七曜会は単純な敵ではありません。

けれど、味方とも言えない。


今回は月守ユエも、ナギの監視強化という形で本筋に沿って登場させました。

同じ紫でも、ナギが休ませる紫なら、ユエは記録し、閉じる紫です。


そして最後に、火野ガクがロロを発見しました。


次回、七曜会の火と、紅黒の災害がぶつかります。

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