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第27話 国家選抜戦、開幕

 国家選抜戦。


 その名前を、俺はニュースでしか聞いたことがなかった。


 S級ダンジョン攻略メンバーを決めるための、国主導の選抜制度。

 全国の探索者、企業ギルド、管理局、スポンサー、配信事業者、研究機関が絡む巨大な舞台。


 強い探索者が集まる。

 有名探索者が集まる。

 大企業が推す精鋭が集まる。


 つまり、Fランク鑑定士がいる場所ではない。


 なのに、俺は今、その受付ゲートの前に立っていた。


 場所は、旧臨海第七訓練場。


 かつて大型ダンジョンの臨時封鎖区画として使われていた施設を、国家選抜戦用に改修した会場らしい。


 広い敷地。

 高い外壁。

 上空には管理局と運営の記録ドローン。

 入り口には、報道関係者と配信者が集まっている。


 ゲートの奥には、巨大な仮設モニターが並び、参加チームの名前が次々と表示されていた。


【天城ブレイヴ】

【蒼穹騎士団】

【王城医療支援班】

【アルカディア・ゲート推薦チーム】

【九条セーフティリンク臨時隊】


 最後の名前を見た瞬間、俺は少しだけ目を逸らした。


「……俺たちのチーム名、これなんですか」


 隣に立つ九条セイラが、当然のように答える。


「正式登録名ですわ」


「強そうではありますけど、九条さん感が強すぎません?」


「私が施設管理権限と参加枠を用意したのですから、当然です」


「まあ、そうなんですけど」


「不満なら、代替案を出しなさい」


「黒瀬探偵団とか」


「却下ですわ」


 即答だった。


 白峰リアが、少し後ろで笑っている。


 今日は配信用の派手な衣装ではなく、動きやすい白と青の探索者ジャケットを着ている。

 それでも、彼女が立つと自然に人目を引く。


 活動休止中だったはずの人気配信者が国家選抜戦に参加する。


 それだけで、周囲の視線はかなり集まっていた。


「黒瀬探偵団、ちょっと見たいけどね」


「白峰リア、悪ふざけに乗らないでくださる?」


「ごめんごめん。九条セーフティリンク臨時隊、ちゃんと強そうだよ」


「でしょう」


「でもちょっとお堅い」


「あなたに言われたくありませんわ」


 セイラとリアのやり取りも、以前より自然になっている気がする。


 仲が良い、というわけではない。

 でも、互いに相手の危うさを知った上で、ぎりぎり同じ方向を見ている。


 俺はその横で、もう一度会場のモニターを見た。


 アルカディア・ゲート推薦チーム。


 その文字だけで、胸の奥が冷える。


 アルカディア潜入で俺たちは新人たちを助けた。

 失敗記憶を商品にしている証拠の一部も持ち帰った。

 澪の記憶断片も見た。


 それでも、中枢データは逃げた。


 アルカディア本体はまだ無傷に近い。


 だから、ここに来た。


 アルカディアの中枢と、その上にいる連中に近づくために。


 佐伯ユズルは、今日は運営側の管理局職員として同行していた。


 ただし、俺たちのチームの正式メンバーではない。


 彼は受付ゲート近くで手続きを済ませると、淡々と言った。


「これで登録完了です」


「本当に通ったんですね」


「はい」


「Fランクでも?」


「国家選抜戦は、チーム推薦制です。ランク制限はありますが、補助枠としての登録なら可能です」


「補助枠……」


「戦闘員として期待されていない、という意味です」


「そこまで丁寧に言わなくて大丈夫です」


「事実なので」


 俺の言葉を奪わないでほしい。


 リアが横から言う。


「でも黒瀬さん、今まで一番重要なところ見てきたじゃん」


「戦闘力はないですけど」


「そこは私たちが何とかする」


 リアはそう言って、軽く拳を握った。


 その表情には、以前のような無理な明るさは少ない。


 誰からも好かれるための笑顔ではない。

 それでも、ちゃんと前を向いている顔だった。


 セイラが言う。


「戦闘力がないことを自覚しているなら、前に出ないことですわ」


「はい」


「勝手に走らない」


「はい」


「無駄に叫ばない」


「それは場面によります」


「そこも、はいと言いなさい」


「はい……」


 たぶん無理だ。


 でも、今は言っておいた。


 その時、背後から軽い声がした。


「お、真面目に作戦会議してるねえ」


 振り返ると、黒いジャケット姿の男が片手を上げていた。


 鴉羽ミナト。


 元アルカディアの情報工作員。

 現在は情報屋。

 こちらにもアルカディアにも情報を売る、信用ならない男。


 彼は相変わらず薄い笑みを浮かべている。


「遅いですわ」


 セイラが冷たく言った。


「時間ぴったりだよ」


「五分前集合が常識です」


「九条さんの常識、高そうだなあ」


「あなたの常識が低すぎるのです」


 ミナトは肩をすくめた。


「まあまあ。ちゃんと来たんだからいいでしょ」


「来なければ契約違反ですわ」


「そうなんだよねえ。あの契約、ほんと嫌な書き方してた」


「褒め言葉として受け取っておきます」


「褒めてないんだけどな」


 ミナトは俺の方を見る。


「黒瀬くん、久しぶり。ちゃんと寝た?」


「あなたに心配されると不安になります」


「いい反応」


「よくないです」


 俺はミナトを鑑定した。


 対象:鴉羽ミナト

 状態:平静

 嘘:完全に味方

 備考:契約範囲内では協力


 分かりやすい。


 完全に味方ではない。


 ただし、契約範囲内では協力する。


 それだけでも、以前よりはマシなのかもしれない。


 俺が表情を動かしたのを見て、ミナトが笑う。


「何か見た?」


「完全に味方ではない、と」


「正解」


「普通、そこは否定しません?」


「嘘ついても無駄でしょ」


 腹立つ。


 でも、嘘をつかない分だけ扱いやすいのかもしれない。


 セイラが俺に言う。


「彼を信用してはいけません」


「分かってます」


「ですが、契約範囲内では使いなさい」


「使うって言い方」


「道具扱いでいいよ」


 ミナトが軽く言った。


「俺も自分のこと、そういうふうに使ってるし」


 その言葉は軽かった。


 だが、鑑定表示は出なかった。


 嘘ではない。


 この人は、自分のことも商品や道具のように扱っている。


 それが少しだけ嫌だった。


 いや、かなり嫌だった。


 そして、最後の一人がまだ来ていなかった。


 御影カナタ。


 佐伯が連れてくると言っていた、元S級探索者。


 国家選抜戦を戦うには、経験のある前衛が必要だ。

 そう言って、佐伯が選んだ人物。


 元S級。


 その響きだけで、周囲とは世界が違う。


 S級探索者は、全国でも限られる。


 巨大災害級ダンジョンへの対応経験を持ち、複数の高危険度任務を生き抜いた人間。

 普通なら、こんな即席チームに入るはずがない。


「御影さん、遅いですね」


 俺が言うと、佐伯は時計を見た。


「連絡は入っています。もう到着するはずです」


 ミナトが笑う。


「カナタさん、ほんとに来るんだ」


「知っているのですか?」


 セイラが聞く。


「知ってるよ。元S級探索者、御影カナタ。《契約剣》の使い手。七年前の北関東第九ダンジョン攻略で有名になって、その後いろいろあって引退状態」


「いろいろ、とは?」


「さあ」


 ミナトは笑う。


「その情報は高い」


「後で契約書に追加しますわ」


「怖いねえ」


 その時、ゲート前に一人の男が現れた。


 背が高い。


 年齢は三十代前半くらいだろうか。

 黒いコートを羽織り、肩に古びた剣袋をかけている。


 髪は少し伸び、無造作に後ろへ流している。

 無精髭があり、目元には疲れが残っている。


 強そう、というより。


 くたびれている。


 それが第一印象だった。


 男は周囲の華やかな探索者たちとは明らかに違った。


 スポンサーのロゴもない。

 配信用の装備もない。

 派手な武器も見せていない。


 ただ歩いてくるだけなのに、周囲の何人かが自然に道を空けた。


 佐伯が一歩前へ出る。


「御影さん」


「遅れたか」


「時間内です」


「ならいい」


 男は短く答えた。


 佐伯は俺たちへ向き直る。


「紹介します。御影カナタさん。元S級探索者です」


 御影カナタは、俺たちを一人ずつ見た。


 リア。

 セイラ。

 ミナト。

 そして俺。


 俺を見た時だけ、少しだけ目が止まった気がした。


「黒瀬透真です」


「知ってる」


 声は低く、乾いている。


「配信禁止区域のFランク鑑定士だろ」


「はい」


「よく生きてるな」


「よく言われます」


「言われるだろうな」


 会話が終わった。


 いや、終わらないでほしい。


 気まずい。


 リアが明るく言う。


「白峰リアです。今日はよろしくお願いします」


「配信者か」


「はい。一応」


「今日は配信するのか」


 リアは少しだけ間を置いて答えた。


「必要な時だけ。何でも見せるつもりはありません」


 カナタはリアを見た。


 数秒。


 それから短く言った。


「ならいい」


 リアは少し驚いた顔をした。


 セイラが名乗る。


「九条セイラです」


「知ってる」


「そうでしょうね」


「嫌われてる令嬢」


 空気が凍った。


 俺は内心で、終わった、と思った。


 だが、セイラは眉一つ動かさなかった。


「事実ですわ」


「そうか」


「ただし、足を引っ張るつもりはありません」


「ならいい」


 また、それだけ。


 ミナトが笑いながら片手を上げる。


「鴉羽ミナト。よろしく」


「情報屋か」


「そうそう」


「信用しない」


「正解」


「邪魔したら斬る」


「え、初対面で物騒じゃない?」


「邪魔しなければ斬らない」


「優しいなあ」


 ミナトは笑っているが、少しだけ目が警戒していた。


 カナタは、本当に斬りそうな雰囲気がある。


 俺はそっと鑑定した。


 対象:御影カナタ

 ランク:元S級

 スキル:《契約剣》

 状態:疲労、無関心

 嘘:もう戦いたくない

 危険:自己犠牲


 息が止まりかけた。


 嘘。


 もう戦いたくない、が嘘。


 つまり、本当はまだ戦いたいのか。


 いや、そう単純ではないのかもしれない。


 危険:自己犠牲。


 そちらの方が重い。


 この人は、自分を犠牲にする方向へ行きやすい。


 カナタがこちらを見る。


「何か見たか」


 鋭い。


 俺は少し迷った。


「少し」


「そうか」


「聞かないんですか」


「聞いても、今は変わらない」


「……そうですか」


 何なんだ、この人。


 やる気が薄いのに、鈍くはない。

 疲れているのに、隙があるわけでもない。


 佐伯が言っていた通り、本物なのだろう。


 国家選抜戦の受付が終わると、参加者たちは第一予選会場へ案内された。


 巨大な仮設ドーム。


 中には、複数のダンジョン環境を再現した試験区画が用意されている。


 観客席もある。

 ただし、一般観客は一部だけ。

 多くは関係者、スポンサー、報道、配信許可を得た解説者たち。


 リアはその様子を見て、小さく息を吸った。


「配信、すごく多いね」


 あちこちに記録ドローンが飛んでいる。


 コメント欄こそ直接は見えないが、きっとネットではすでに話題になっているだろう。


 白峰リア復帰か。

 九条セイラが国家選抜戦参加。

 謎のFランク鑑定士。

 元S級御影カナタ。

 情報屋鴉羽ミナト。


 悪目立ちする要素しかない。


 セイラが言う。


「白峰リア」


「ん?」


「無理に愛想を振りまく必要はありませんわ」


「分かってる」


 リアは少し笑った。


「今日は、ちゃんと見る人だけ見てくれればいい」


 その言葉は、小さかったが、嘘には聞こえなかった。


 ミナトが横から言う。


「でも注目されるよ、このチーム。炎上要素の詰め合わせだし」


「黙りなさい」


「事実だよ」


「事実でも言わなくていいことがあります」


 俺がそう言うと、ミナトは楽しそうに笑った。


「黒瀬くんも言うようになったね」


「あなた相手だと、言わないと損なので」


「いいね」


 カナタは一人、黙って会場を見ている。


 何を考えているのか分からない。


 だが、その視線は試験区画の構造、ドローンの位置、退避ゲート、運営席の動きまで見ているようだった。


 やる気が薄いのに、見るべき場所は見ている。


 佐伯が俺たちの前に立つ。


「第一予選の概要が出ました」


 端末の画面を、俺たち全員に共有する。


【第一予選:嘘つき迷路】


 その文字を見て、俺は眉をひそめた。


「嘘つき迷路?」


 佐伯が説明する。


「各チームは迷路型ダンジョンに入ります。制限時間内に出口へ到達すれば通過。ただし、迷路内には運営からの案内、標識、音声指示、他チームからの情報が混在します」


 セイラが目を細める。


「偽情報が含まれる、ということですわね」


「はい」


 佐伯は頷いた。


「正しい情報だけではありません。むしろ、試験の中心は情報判断です」


 リアが俺を見る。


「黒瀬さん向き?」


 ミナトが笑う。


「そう思わせる試験かもね」


 嫌な言い方だった。


 でも、俺も同じことを思った。


 嘘を見抜く鑑定士がいるチーム。

 そこに、嘘つき迷路。


 一見、俺たちが有利に見える。


 だが、そんな単純な試験を国家選抜戦が用意するだろうか。


 俺は端末に表示された試験概要を鑑定した。


 対象:第一予選説明文

 嘘:嘘を見抜けば突破できる


 やっぱり。


「嘘を見抜くだけじゃ駄目です」


 俺が言うと、全員がこちらを見た。


「説明文に、嘘を見抜けば突破できる、みたいな前提があります。でも、そこに嘘が出ました」


 セイラが頷く。


「つまり、嘘と分かっても、それだけでは足りない」


 ミナトが楽しそうに言う。


「いいね。情報戦っぽくなってきた」


 カナタが短く言う。


「迷路は、嘘より焦りで死ぬ」


 俺たちはカナタを見た。


 彼は淡々と続ける。


「情報が多いと、人は止まる。止まると囲まれる。全部読むな。捨てる情報を決めろ」


 その声には、経験があった。


 元S級探索者。


 やる気が薄いように見えても、やはり現場を知っている。


 佐伯が言う。


「御影さんの言う通りです。黒瀬さんの鑑定に頼りすぎると、判断が遅れます」


「はい」


「あなたは全てを見ようとしないでください」


「……耳が痛いです」


 澪の断片を思い出した。


 全部知りたい。

 全部見たい。


 でも、それが今すべきこととは限らない。


 セイラが言う。


「役割を決めますわ」


 彼女は即座に整理し始めた。


「黒瀬透真は、重要な標識と指示の鑑定。全部見る必要はありません。私が判断する情報だけを見ること」


「はい」


「白峰リアは、周囲の反応と他チームの動き。あなたは人目と空気の変化に敏感です」


「了解」


「鴉羽ミナトは、他チームの情報収集。ただし、契約範囲外の売買は禁止」


「はいはい」


「はいは一回」


「はい」


「御影カナタは前衛およびルート安全確認」


「ああ」


「私は全体判断と権利関係の確認。迷路内の設備が所有可能なら使います」


 すごい。


 即席チームなのに、一応形になっている。


 佐伯も頷いた。


「悪くありません」


「当然ですわ」


 セイラは少しだけ胸を張った。


 その時、会場の大型モニターに予選開始時間が表示された。


 第一予選開始まで、あと十分。


 周囲のチームも準備を始めている。


 華やかな装備のチーム。

 企業ロゴを背負ったチーム。

 無名だが明らかに鍛えられた探索者たち。


 その中に、アルカディア・ゲート推薦チームの姿もあった。


 白と銀を基調にした統一装備。

 全員若い。

 顔に迷いが少ない。


 整いすぎている。


 その中心に立つリーダーらしき男が、こちらを見た。


 目が合う。


 俺は反射的に鑑定した。


 対象:アルカディア推薦チーム隊長

 状態:平静

 嘘:今回の予選は公正


 嫌な表示だった。


 公正ではない。


 少なくとも、彼らは何か知っている。


 俺は佐伯へ小声で伝えた。


「アルカディアの隊長、今回の予選は公正って認識に嘘があります」


 佐伯の目が鋭くなる。


「記録します。ただし、今は動けません」


「分かってます」


 セイラが低く言う。


「やはり、向こうは何か仕込んでいますわね」


 ミナトが軽く笑う。


「まあ、アルカディアが何もしないわけないよね」


「あなたも何か知っていますの?」


「知ってるかも」


「契約違反ですわよ」


「まだ違反じゃない。予選開始前に言うと情報価値が落ちる」


 セイラの目が冷たくなる。


「鴉羽ミナト」


「冗談だよ」


 ミナトは両手を上げた。


「次の試験、チームを壊しに来る。これは言ったよね。でもその前から、揺さぶりは始まってる」


「第一予選から?」


「もちろん」


 ミナトは迷路入口を見た。


「嘘つき迷路で怖いのは、嘘そのものじゃない。嘘を見抜ける奴がいるせいで、チームがそいつに依存すること」


 彼は俺を見る。


「黒瀬くんが間違えた時、このチームはどうする?」


 返事に詰まった。


 セイラが即答する。


「私が判断します」


 リアが言う。


「私も見る」


 カナタが言う。


「足を止めない」


 佐伯が言う。


「それが答えです」


 俺は少しだけ息を吐いた。


 俺が全部を見なくていい。


 俺が全部正しくなくていい。


 そう思えることは、少しだけ怖くて、少しだけ楽だった。


 開始のアナウンスが鳴る。


『国家選抜戦、第一予選を開始します。各チーム、指定ゲートへ移動してください』


 会場の空気が一気に変わった。


 歓声。

 ドローンの羽音。

 運営スタッフの声。

 各チームの足音。


 俺たちのゲートは、第三迷路区画。


 入口は黒い石でできた門のような形をしている。


 その奥には、薄暗い通路が続いている。


 壁には最初の標識があった。


【右へ進め。最短経路】


 俺は鑑定する。


 対象:迷路標識

 嘘:最短経路


 開幕から嘘だった。


「右は最短じゃないです」


 俺が言うと、セイラは即座に言った。


「左へ」


「左が正解とは限りません」


 カナタが言う。


 セイラは頷く。


「分かっています。ですが、右へ行く理由は消えました」


 リアが後方を見る。


「他チーム、右行った」


 ミナトが笑う。


「じゃあ左は空いてるね」


 俺たちは左へ進んだ。


 国家選抜戦が始まった。


 Fランク鑑定士。

 元人気配信者。

 嫌われ者の令嬢。

 信用できない情報屋。

 やる気の薄い元S級探索者。


 どう見ても綺麗なチームではない。


 でも、今はこの五人で進むしかない。


 通路の奥から、次の音声案内が流れた。


『この先、味方の一人が嘘をついています』


 俺たちは同時に足を止めた。


 早すぎる。


 開始して一分も経っていない。


 セイラが小さく笑った。


「なるほど」


 リアが息を呑む。


「いきなりチーム揺さぶってくるじゃん」


 ミナトが楽しそうに言う。


「開幕から性格悪いねえ」


 カナタは前を見たまま言った。


「止まるな」


 その声で、俺たちは再び歩き出す。


 嘘つき迷路。


 その名前の意味を、俺たちはすぐに思い知ることになる。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


今回から国家選抜戦予選に入りました。


新メンバーとして、御影カナタが登場しました。

元S級探索者ですが、本人はかなりやる気が薄く、どこか投げやりな雰囲気があります。

ただし、迷路に入る前から現場の見方は本物で、経験の差が見え始めています。


チームは、透真、リア、セイラ、ミナト、カナタの五人。

信頼し合った仲間というより、事情と契約で集まった即席チームです。


第一予選は「嘘つき迷路」。

透真の鑑定が有利に見えますが、嘘を見抜くだけでは突破できません。

むしろ、透真に頼りすぎること自体が罠になります。


次回、果たして透真たちのチームは、第一予選を突破できるのか?

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