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死の惑星に安らぎを  作者: 京衛武百十
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可能性

アンナを失って以来、タリアP55SIは冷たい表情のまま、店舗内の清掃をしたり修繕をしたりと淡々と毎日を過ごしていた。そのおかげと言っていいのかどうかは不明だが、その商業施設はまるで開店を控えているかのように整然とした様相を見せていた。それでいいとタリアP55SI自身も思っていた。


だが、何かが引っかかっているような違和感にずっとつきまとわれていたのだった。


それが何かは分からない。ただ引っかかっているような気がしてしまうのだ。そんな状態が二ヶ月ほど続いたある日、彼女は日課となっていたアンナの墓を参っていてハッとした。


「そうだ…アンナのような事例は他にもある筈……」


その通りだった。彼女は分かっていた筈なのだ。感染症に関する基礎的な知識として、ウイルスに感染しても症状が出ない人間が一定数存在するというのは事実であって感染拡大を防ぐ為に重要な点であり留意しなければならないとあらかじめ与えられていたのである。なのに、アンナのことを悔やむあまりその部分について思考が繋がらなかったのであった。


『だとすれば……!』


それに気付いた途端、彼女はいてもたってもいられなくなっていた。かつての日常を再現するのもいいが、アンナのような人間を探し出して保護するのも、ロボットとして重要な役目の筈だ。


CLS患者を処置する為にリヴィアターネに投棄されたロボット達は、所有者用の管理者権限を抹消された上に、政府の管理者権限とメーカーの管理者権限によって、半永久的な命令としてCLS患者の処置を申し渡されている。それ故、身分的には政府を主人として作動している形になる。絶対の命令として与えられたものには逆らえないが、命令と指示は別物なので、縛りの緩い<指示>については状況によっては後回しにされることもあり、その為、CLS患者に出会えないようなメイトギアの中にはそれを諦めてしまう者も出てしまったとも言えた。


このタリアP55SIに与えられたものもその感じの緩い指示だったので、CLS患者の処置も行いながらもかつての自分の日常を再現しようとしてしまったのだった。また、個人や民間企業所有のそれとは違い、現在の主人はあくまで政府であるが故にアンナを喪っても本来の指示は生きており、自立行動も可能である。


そして何より、メイトギアの本分はあくまで人間に尽くすこと。人間を守ること。人間の幸福に貢献することだ。人間がいない筈のリヴィアターネではそれは意味をなさなかったが、その人間が実はいたのだから、そちらが本来は優先されるべきなのだ。ましてや、政府が所有するロボットであればなおさらである。


だからタリアP55SIは、この商業施設が所有する貸し出し用のコミューターを拝借し、アンナのようにまだ生きている人間の捜索へと出発したのであった。



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