通信網
「アンナ。私はしばらく戻れません。でもあなたと同じように今もこのリヴィアターネで生きている人間を見付け出して必ず帰ってきます。それまでお別れです。ご両親も一緒だから寂しくはありませんよね……」
アンナの墓の前でそう告げて不顕性感染者の捜索に出たタリアP55SIは、その事実を、通りがかりに自分の通信範囲に入ったロボット達に告げて回った。そして生きている人間を発見した場合にはそれを保護し、自分に知らせてくれるように通知したのであった。
現在、リヴィアターネの通信網は完全に失われている。だが、各地に配置されたロボット同士の通信機能を活用しリレーする形で通信を行えば、時間は掛かるがいずれ自分のところにも届くということでそうしたのだ。
『生きている人間がいる…!?』
タリアP55SIから人間が生存している可能性を告げられたロボット達は色めき立った。人間に仕え奉仕することこそが存在意義だったが故に、仕えるべき人間がいるかもしれないと思うと昂ってしまうのである。そして、ロボット達は情報を共有する為にと互いに通信を常時接続状態にし、それによって疑似的な通信網を作り上げていったのだった。
その通信網はドミノ倒しのように連鎖的に広がり、瞬く間にリヴィアターネを覆いつくしていく。
「…人間が生きている可能性ですか…?」
隣接する担当区域のメイトギアからその通信を受けたのは、フィーナQ3-Ver.2002であった。そう、アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士が所有するメイトギアであり、<リルフィーナ>の名を与えられた彼女にも、その情報は届いたのだ。
リルフィーナはさっそくメルシュ博士の下に行き、それについて報告した。
「ほほう? 不顕性感染者の存在が確認されたのか。まあ分かっていたことだが、裏付けが取れたというのは喜ぶべきことだな。よろしい。それではこちらとしても情報収集を行うことにしよう」
メルシュ博士はニヤリと笑みを浮かべ、ロボット同士の通信用のリレー装置を配置すべく、新たにレイバーギアを<アリスマリアの閃き号>から降下させ、その任務に当たらせた。これによってロボット同士の通信を傍受。いち早く情報を得ることができるようになるだろう。
ただ、その情報をこの狂人に与えてもよかったのかどうか。それはこれからの状況を見て判断するしかないのかもしれない。
いずれにせよ賽は投げられてしまったということだ。それがリヴィアターネに安らぎをもたらしてくれることを祈る他になかったのだった。




