表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死の惑星に安らぎを  作者: 京衛武百十
62/120

ニコイチ

結論から言えば、今回の試みは失敗ではなかった。ただ、やはり強引なデータの移し替えによる不具合は発生した。情動に関する部分の基本的なデータが壊れてしまったのである。つまり、感情を再現することができなくなってしまったということだ。


そして、デイジーFS505の記憶の一部は残ったが、コゼット2CV(ドゥセボー)はもうどこにもいなかった。彼女が望んだとおり、デイジーFS505の記憶の一部を持ち、コゼット2CVの基本アルゴリズムで動くニコイチのメイトギアが出来上がってしまったのだった。


コゼット2CVの記憶も引き継いでいるのでどういう経緯でこうなってしまったのかはすぐに理解できたが、正直な話、デイジーFS505としても困惑するしかできなかったのも事実であった。


今、彼女が思い出せるのは、ここ数か月のサーシャとの暮らしと、サーシャが生まれてからこれまでの概要。及びコゼット2CVとしての記憶だった。


それでも、これからもサーシャと一緒に暮らせるという点だけはありがたいと思えた。


「お礼を言うべきなのでしょうね」


若干皮肉にも聞こえる呟きを、鏡の中に映ったコゼット2CVへと投げ掛けつつ、彼女はサーシャの待つ複合商業施設へと帰っていった。


本来の自分の体はディーラーに残してきた。もし何らかの方法でさらに完全にデータや記憶を移し替えることができるようになった場合に備えてそうしたのだ。


「…ただいま」


以前のような笑顔が作れなかったが、サーシャに向かって、コゼット2CVの体を持ったデイジーFS505はそう声を掛けた。


「…お母さん…?」


姿はコゼット2CVなのに、『ただいま』のイントネーションが完全にデイジーFS505のそれだったことで、サーシャもついそう聞き返してしまった。だがそれが、デイジーFS505の迷いを打ち消してくれた。あのまま放っておいてくれれば、サーシャの中で母親の記憶として綺麗なままで残れた筈なのにこんな形で蘇らされてしまって、正直、余計なことをしてくれたと思ってしまっていたのだが、サーシャが自分をまだ母親と認識してくれるのなら、これはこれでありかも知れないと思ったのである。


「おかえりなさい、お母さん」


頷いた自分に、涙を浮かべながらそう言って縋り付いてくれた少女の体を抱き締めて、デイジーFS505も今の自分を受け入れた。


色々不具合はあるが、それは以前もそうだった。それにこの体の方が不具合は少ない。サーシャに関すること以外の記憶の大半は失われてしまったしこの体も後どれだけもつかは分からないものの、それまではサーシャと一緒にいられるようになったのだ。今は素直にそれを喜びたかったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ