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死の惑星に安らぎを  作者: 京衛武百十
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コゼット2CV

コゼット2CV(ドゥセボー)が何故そこまでしようとしたのかには、訳がある。


彼女は犯罪組織に違法な改造を受けたロボットであったからだ。彼女の場合は主に経済犯。手っ取り早く言えば詐欺に利用されたのである。<ロボットは嘘は言えない>という常識を逆手に取った卑劣な犯行だった。そして彼女はロボットが本来は吐くことができない嘘を吐き続け、何人もの被害者を出してきたのだった。


ロボットには心がないから良心が痛むことはなかった。だが、自分が正しくないことをしているという認識は常にあった。しかし命令されればそれに従うことしかできない。


いや、本来なら、現在のAIは、たとえ主人から命令されたとしても不法な行為は行えない。それをしては主人が犯罪者となってしまい、それは結果として主人の不利益になると判断できるからである。


しかし彼女は、違法改造によってその辺りの倫理回路が働かないようにされていたのだ。しかもまったく違法なものと認識できないのならまだしも、認識はできるのに拒めないという……


そんな葛藤の中にいたある日、とうとう詐欺グループが警察の摘発を受け、彼女も証拠品として押収されてしまったのである。


通常、犯罪に利用されたロボットは証拠となるデータを抜き取られると即刻解体処分になるのだが、彼女が捕らえられたのもリヴィアターネのお隣とも言える惑星だったので、ここに投棄されることになってしまったのだった。


さらには、以前紹介した殺し屋ロボットだったエレクシアYM10とは違い、初期化されることなくただCLS患者の安楽死を命じられただけで投棄されてしまったという経緯があった。経済犯ということで軽く考えられてしまったのかもしれない。


その為か彼女には、自殺願望ではないが、今の自分ではない別の自分になりたいという欲求があったのだった。そして、デイジーFS505のデータと記憶を、たとえ一部でも上書きされればそれはもう自分ではないというその事実が彼女を突き動かしていたと言えるだろう。


辿り着いたディーラーは、営業中にあの惨劇が起こったらしく、エントランスは解放されたままだった。展示スペースにはメイトギアの見本が並べられていたが、これは外見だけのモックアップモデルなので関係なかった。メンテナンスルームなどがあるバックヤードに入ると、データの移し替えの為の装置が、多少埃は被っていたがそのままで残されていた。アミダ・リアクターのおかげで電気も来ている。


そして彼女はさっそく、データ抽出側のケーブルをデイジーFS505に差し込み、出力側のケーブルを自分に差し込んで、装置を操作した。操作手順は煩雑だったがロボットである彼女にとってはマニュアルを見ればすぐに分かるから問題はなかった。それに、データのコピーが始まれば、後はもうそれが完了するまで待つしかない。


こうしてついに、コゼット2CVにデイジーFS505のデータと記憶の一部を不完全な形で上書きするという無謀な試みが始まってしまったのだった



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