オリビア視点 5
遅くなってしまいました。オリビア視点はこれが最後です。次回はアルバート視点で抜けている箇所を補充していきます。が、夏は来客が多いので、執筆がスローダウンしてしまいますのでご了承下さい。
ランドリギーヌ最後の年になり、わたくしはほぼすべての科目において最優秀の成績を収めていましたが、卒業の前には各自各々の専科においての卒業試験がございます。わたくしも、将来この国の代表の一人としてクリス兄様に恥をかかせないよう努力してまいりましたがこの度無事に卒業試験に受かりました。
優秀な成績を収められたことに王や王妃様にも喜んで頂き、なんと卒業舞踏会で着るローブデコルテのドレスを贈らせてほしいとの有り難いお言葉をいただきました。クリス兄様にお聞きしたところ、王妃様が自国の特産であるレースを使用してとても張り切ってデザインから細かい刺繍までこだわってくださっているとのこと、出来上がりがとても楽しみです!
クリス兄様の卒業試験は一般のものに加え、密かに王族としての試験も受けられました。幼い頃、二つの魔力をうまく扱いきれず苦悩されていたと聞いていましたが、此度の王族の試験に際し、歴代に勝る際立った能力を発揮されたそうで、王も安堵と共に、卒業後の発表に向けて動きだされました。
ですが一般の卒業式が終わり、舞踏会の準備の為家に帰ったわたくしは、驚くこととなるのです。王妃様がデザインにこだわった為、通常よりも仕立てに時間がかかっていた舞踏会の為のローブデコルテが、届いておりません。お母さまが確認したところ、数日前になって突如アル兄様がデザインとサイズの変更を仕立屋に伝えた為さらに時間がかかってしまったが、ドレスは皇子の指定通りにすでに他家の令嬢の元に届けられたと・・・。
その知らせを聞いたときの母様とクリス兄様の背筋の凍るような微笑は忘れられません・・・。常々優しい母様ですが一度怒ると実はかなり怖いのです。本当は血の繋がりはないはずですのに、やはり育ての母の影響は強いのでしょうか・・・クリス兄様の黒い微笑はどことなしに母様によく似ています。(つい母様の前でぽろっと零してしまった為、後でこってりと叱られてしまいました)
ですが、せっかく王妃様が心を込めてデザインし、オーダーしてくださったドレスです。仮にも公爵家ですので、代わりのドレスは用意できますが、心情的に申し訳なくて、とても王と王妃様の御前に出られません。母様はてきぱきとメイド達に指示を出してすぐに代わりのドレスと装飾品をもってこられました。兄様も正装に着替えられ、わたくしに言われました。
「大丈夫だよ、オリ。衣装が届かなかったのはどこかの馬鹿がやらかしたせいでオリが気に病むことは何もない。それにオリだったら、何を着ても似合うんだから心配しなくていいよ。」
「そうですよ、オリビア。それよりもとりあえず支度を済ませて会場へ向かいなさい。少し遅れてしまっていますが、既に事の次第はシンによって王宮に伝えてあります。しっかりしなさい。貴方は今後この国をクリスと一緒に背負っていくこととなるのですよ。アルバートのことは・・仕方ありません。王とあの人の判断に委ねましょう。きっと悪いことにはなりませんよ。さあさあ、ほらそんな顔をしないで!せっかく綺麗にお化粧してもらったのにまた崩れてしまいますよ。」
そうしてわたくしとお兄様は支度を済ませ、王宮へと向かったのです。
門番が広間に続く扉を開いた時、幾百もの好機の目がわたくし達に突き刺さりましたが、わたくしはしっかりと顔をあげて兄様と共に王座まで進んでゆきました。視界の端に心配そうな顔をしたソフィア様を初めとした大切な友人たち、そしてもう片方にはこちらを睨みつけるアル兄様を初めとした側近の方々、そしてやはり・・わたくしが着るはずであったドレスを纏ったシャロン様がアル兄様にかばわれるように立っていました。
「本日は聖ランドリギーヌ学院の卒業生の晴れ舞台である王家主催の舞踏会に遅れてしまったこと、真に申し訳ございません。」兄様と一緒に紳士淑女の見本となるであろう最上級の礼をもって拝謁すると王より慈悲のお言葉を頂戴いたしました。
ですが、すぐにアル兄様の空気の読めない発言と見当違いの言いがかりにクリス兄様は冷たい微笑を浮かべながら反対に彼らを糾弾していったのです。王家の秘密と真実を晒すこととなった舞踏会は混乱に陥りました。真実を知ったアル兄様はシャロン様や他の側近の方々と共に近衛兵によって連れ出される際、何度かわたくしの方を見て何か言いたそうにしていましたが、結局何も言われずに出て行かれました。
クリス兄様、改めクリス(クリストファー)皇太子は公にて王の後継者として自国及び他国においても認められ、わたくしも時期王妃として、王妃様について1年間公務を共に担った後に結婚式を挙げることとなります。そのことを一番喜んでくれたのはソフィア様です。彼女とは今後も国を通して交流を持っていくこととなるでしょう。
舞踏会の後、様々な事が発覚いたしました。クリス皇太子が、ランドリギーヌ在学中に証拠集めをしていた今回の事件の根っこは思いがけず深いところにあったのです。過去に妊娠中の王妃に毒を盛った人物、そして今回禁忌の麻薬花であるシュレスカのポプリをシャロン様に渡していたのは数代前に当家と同じく王家から降下された王女の血を引く侯爵家と2代前に王族の政権争いに敗れ蟄居していたはずの王弟による陰謀であることが公表され、侯爵家は断絶、王弟は、2度目の反逆罪により死刑となりました。
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今回の粛清にあたり、高位貴族であったドートン侯爵家は、レドウィン様のご実家であるブルボン侯爵家を始め、娘の嫁ぎ先や親族の末端に至るまで大きな影響を及ぼすことになったのは言うまでもないでしょう。クリス皇子が国の最高裁判所に提出した事のあらましはこうであったようです。
侯爵は権力主義者で自分の娘を王妃に推薦し、ゆくゆくは外祖父として王家に対する権力を移行させていくつもりであったが、現王が強硬な手段によって現王妃を立后したため、一度は断念、その後なかなか子に恵まれない王家に、権力争いから脱落して不満を抱えていた王弟と協力して、自分の娘を測妃に上げようとしていたところ、王妃の妊娠が発覚。子飼いの侍女に薬湯と称して子を流す薬を飲ませたりしたが、失敗し、子供が生まれてしまった。しばらくはその子供にも毒を盛ったり暗殺を企ていたが、なかなか成果が上がらない為、計画を変更した。
もう一人、他所に嫁がせていた娘が同時期に第二子となる男児を産んでいたので、その子を皇子の学友とさせるために手元において洗脳に近い教育を施し、今度は男児ということもあり、うまく側近の一人として潜り込ませることに成功。その後は孫を使って、将来自分の傀儡とさせるべく少しずつ皇子にうまく真実と虚実を混ぜた概念を念入りに施していった。侯爵もまさか皇子自体が入れ替わっているとは思わなかったに違いない
それと同時に念には念を入れて以前知り合った他国から流れて来ていた踊り子が産んだ魅了の力を持つ娘を子飼いの男爵家に娘として迎えさせ、シュレスカを持たせた。国の禁忌であるシュレスカの花は、王弟が密かに栽培と密売をしていたもので、男爵家に引き取らせた娘の母親もシュレスカの常習者であった。稀に、母親の胎内にいるときから、シュレスカを母を通して接種した子供は通常よりもシュレスカに対する耐性が高いことがあるという研究結果もあるが、この娘はまさにそれに当たる事例であった。
娘をうまく騙して利用し皇子を完璧に自分の側につけ、これを機会に現王族とも繋がりの深い目障りな公爵家を陥れるつもりであったという。
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一年後にクリス皇子が王として即位される頃には全てのことに片がついていました。この事件の一番の被害者は、アル兄様やシャロン様、そしてレドウィン様といった大人の汚い思惑に翻弄された子供たちだったのではないかと思います。
アル兄様は、現在辺境の地にて贖罪と、また王弟が禁忌の麻薬花を国境を越えて密売していたことなどの後処理と地域の立て直しのため毎日奮闘されているようです。
クリス様がおっしゃるには、そこで数年一からやり直しをして使えるようになれば新たに爵位を授けて中央に呼び戻すことも視野に入れているのだとか・・・それを聞いた母様たちもホッとしておりました。わたくしも、きっと遠くはない将来、アル兄様とまたお会いする日まで日々の生活を頑張って行こうと思っているのです。わたくしは今朝がた辺境から届いた一通の手紙を胸に歩き出しました。
晩年まで、ランドリギーヌ王国で、賢王として語り継がれるクリストファー王の傍には、また美しくも賢い王妃とその子供たち、そしてその治世には、国をより豊かにさせた人材も豊富であったと言われている。




