オリビア視点 3
3話以内に収まらなかったので、番号付けにしました・・・・T_T
まずは一度アル兄様にお会いして昔のように話すことができれば、誤解やわだかまりはなくなると簡単に考えていたのですが・・・大間違いだったのです。学院の中では、将来の職業選択や身分等に合わせて多様な選択授業があり、騎士になるもの、領地経営に携わるもの、商売を営むもの、花嫁修業をするものと、授業も男女別に分かれているものが多くあります。元々、アル兄様とは選択授業で接点がないだけでなく、どうやらアル兄様といつも一緒にいる5名の側近(本来なら候補)の方々にわたくしは何故か相当嫌われているようで、いつも接触を邪魔されてしまいます。また、彼らに皇子に近づこうとする毒婦などと陰で呼ばれていることも知っております。
ほとほと困っていましたが、ある日、ソフィア様よりアル兄様達がいつもサロンを使用していらっしゃることを聞いてそちらへ伺うことに致しました。ソフィア様は口を濁しながら、あまり近寄らない方がよいと助言されましたが、そこでなら確実にアル兄様にお会いすることが可能です。一応これでも身分と資格は兼ね備えているはずでしたが、久しぶりに訪れたサロンでは、信じられない光景が広がっておりました。以前、入学したての頃に訪れた時は、成績優秀な先輩方が集い、ある時は試験のこと、はたまた卒業後のそれぞれの道や夢について熱く語り合う場であったのですが・・・今のこの状態は一体どうしたことでしょう。アル兄様を初めとした側近の方々が一人の少女に群がっており、サロンの中心部を独占しています。それをまた離れたところから、「サロンに出入り出来る」資格のある高位貴族らがこそこそと困惑気味に様子をうかがっています。
中心に座っておられる方が、王妃様がおっしゃっていた女性なのでしょう。それにしても、側近の方々の・・その女生徒に対する所作も少し行き過ぎているように感じます。何と言いますか・・・ボディータッチが多くて、貴族の子息・子女としては少し・・・いえ、多大に問題があるような気がします。部屋の隅で固まって様子みていた女生徒のうちの一人が決心したように側近の一人の方へ歩いて行った。
「あっ、あの、レドウィン様、少し宜しいでしょうか」
声をかけられた青年は煩わしそうに振り向きざまに冷たい視線を落としつつ返答した。
「・・・なんでしょうか」
「っつ・・・その、ここでは何ですので・・」と視線を彷徨わせて言いかけた言葉をレドウィンは邪険にぶった切る。
「何かここで、殿下の御前で話せないような内容なのですか?」
「い、いえ、そんなわけではございません。ですが・・」
「ですが何です?」
「そ、それでは僭越ながら申し上げさせて頂きますが、レドウィン様は私の婚約者ですよね・・?」
「・・・、私が決めた訳ではありませんが、現状ではそうなっていますね、それが何です?」
「ですからっ、その、私という婚約者のある身でその、、、そちらの男爵令嬢に対して少々行き過ぎたっ・・・」
「・・・へえ・・・」低いあからさまに機嫌の悪さを含んだレドウィンの唇が愉悦を込めて弧を描いた。
「僕がシャロン嬢に対して何だって?大体、僕は君のことを婚約者だと認めた覚えはないよ。伯爵位の娘ごときがどうやって侯爵の父に媚び打ったのか知らないが・・その程度の容姿でよく僕の隣に立とうなどと思ったものだね。君にシャロン嬢や僕の行動に対してあれこれ言う権利はない。身の程を知れ」あまりにも酷い言い様にセシル伯爵家のレイチェル様はさっと顔を赤らめて俯き、涙をこらえてサロンから走り去られました。
あまりの事にわたくしの周りでもひそひそと「酷い」といった言葉や「あり得ない」といった言葉がささやかれています。わたくしも、仮にも自分の側近の暴言を止めもしなかったアル兄様に対して驚きを通り越して呆れてしまいました。とりあえず、わたくしは、アル兄様と直接会話することを諦め、走り去ったレイチェル様を探しにサロンを抜け出しました。
他にも同じようにレイチェル様のことを気遣ったお友達の方が来られて手分けして探した結果、中庭の片隅にてうずくまって泣いている彼女を見つけ、他のお友達の方たちと一緒にわたくしのお部屋で落ち着くまでいてもらうこととなりました。
それにしても・・・、確かにレドウィン様は伯爵位より高位の侯爵家にお生まれになっていますが、所詮は次男で、爵位は優秀なお兄様が継ぐこととなっていたはずです。それにこの婚姻は商才があり、潤沢な資金を持つセシル伯爵家に、ここ数年不作で借金が嵩んでいた侯爵家当主自らが「お願い」して婚約に至ったという話・・・レドウィン様はご存知ないのでしょうか・・・。
わたくしのお部屋に集まった皆さんは、アル兄様の側近の方々の婚約者のお嬢様方でした。一人一人からお話しを聞くにしたがって、段々と頭痛がしてきます。どうやら皆さま、男爵令嬢のシャロン様に並々ならぬ関心がおありのようで、本来であれば、絆を深めるべき己の婚約者とは距離を置いているそうなのです。ただ一人を除いて・・。
「私の婚約者である、ブランドン様は、少し他の方々とは違うのです。学院に入学してからはお会いできる回数も少ないですが、お会いすると幼少の頃と変わらず良くして頂いていますし・・でも最近、よく体調を崩されているみたいでとても心配なのです。」と小柄で美しい栗色の巻髪を持つミリアンヌ様が話し始めました。
領地が隣同士の伯爵家に生まれたミリアンヌ様とブランドン様は、家族同士の付き合いもあり、早々に婚約を取り交わしたそうです。アル兄様とわたくし達のように・・幼い頃から幼馴染として育った二人は、また将来を共に誓い合うものとして愛情を育んで来られたそうです。ブランドン様もとても優秀な方で、ランドリギーヌ入学後にアル兄様の側近候補として才覚を現し、他の方々と違い、現在においても優秀な成績を収めているようなのですが、シャロン様が、特にアル兄様を初めとした側近の方々と近くなるにつれ、良く体調を崩すようになったらしいのです。
「ブランドン様が言うには、シャロン様が近くに寄られると何故か甘い匂いと共に激しい頭痛と吐き気をもよおすとの事で、とみに最近ではほぼ毎日のように傍にいるため、ずっと体調がすぐれないそうなのです。」そう言われてみると、確かに、一人、青白い顔をしていた男性がいたのを思い出す。彼がブランドン様なのでしょう。そういえば、側近の方々にはいつもアル兄様との接触を邪魔されていますが、今までブランドン様にはあまりお会いしたことも、また邪険にされたこともありません。
「甘い香り・・ですか?シャロン様がつけられている香水か何かでしょうか?たまにある特定の植物にアレルギーを持つ方がいらっしゃいますから考えられないことはありませんわね。」
「でも・・・うらやましいですわ。体調がすぐれないブランドン様にはお気の毒ですが、ミリアンヌ様は大切にされてますもの・・。私の婚約者のベンジャミンなんてほんとに酷いんですのよ。先月、私の誕生日でしたの・・・いくら親の決めた婚約者とはいえ、学院に入るまではそれなりに婚約者らしい対応はしてくださってましたのに・・今年のわたくしの誕生日にはおざなりの花束と従者が書いたカード、それなのにあの小娘には200クローネ(200万円ほど)はするであろう髪飾りを特注でオーダーして、誕生日でもなんでもないというのに貢いでるんですわ!私こんな侮辱を受けたのは初めてですわよ!!今度の休みには実家に戻ってお父様に断然婚約破棄の抗議をさせて頂きますわ!」と南の侯爵令嬢のマリアンヌ様が高らかに宣言なさっておられます・・・。これはベンジャミン様、お覚悟なさった方がよろしいかと・・・。同格の侯爵家同士の婚姻とはいえ、マリアンヌ様は一人娘、ゆくゆくは長子ではないベンジャミン様が婿養子となるはずでしたが・・・確かあそこはもう一人年の近い弟がいらっしゃいますから、きっと最悪は廃嫡の上、婚約者の取り換えになってもおかしくはありません。他の方々にもお話しをうかがいましたがどうやら似たり寄ったりの状況のようです。
状況の把握と情報交換を行った後、わたくしは、問題の中心でもある、シャロン様への接触を試みました。ですが、それがあんなことになるなんて・・・




