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オリビア視点 2

「まあっ!オリビアちゃん、しばらく見ない間に綺麗になったこと・・・さあ、こちらに来てもっとお顔を良く見せて頂戴。クリスも・・・本当に立派になって・・」


母様より預かった、王妃様のお好きなお菓子の詰め合わせを手土産にお渡してしばらくの間、歓談した後、人払いと遮音などの魔術をかけられた部屋の中でわたくしは、王家と我が公爵家において取り決められた契約のことを聞いたのです。


「・・・それでね、オリビアちゃん、内々にだけど、できれば私達王族の意向としてはオリビアちゃんに王妃になってもらいたいと考えているの。エルドラン公爵からは、娘が納得して了承すれば・・・といわれているんだけどどうかしら?


クリスはもう随分前からオリビアちゃん一筋だし・・私も、陛下もオリビアちゃんの事を本当の娘のように思っているから了承してくれたらとてもうれしいのだけども・・・・オリビアちゃん???」


あまりの事の大きさに頭がついていってません。わたくしは今きっと王妃様の前でとても間抜けな顔をしていることでしょう・・・・お兄様が本当は皇子様で、皇子様だと思っていたアル兄様が私の本当の双子の兄?


「オリ??」

心配して顔を覗き込んできたクリス兄様の端正な顔を見てとたんに頭に血が上ったのが判ります。きっと今わたくし真っ赤な顔をしていますわ。だって・・・・密かにお慕いしていた兄様が本当は皇子様でわたくしのことを想っていて下さるなんて・・


「あらあら・・・・オリビアちゃんもまんざらじゃなさそうね。良かったわね、クリス、少しは脈があるのではなくて?」


「母上・・・からかうのはやめてください」


「あっ・・え?? えっと・・・兄様・・・じゃなかったクリス皇子は知っていらしたんですか?わたくし達が本当の兄妹じゃないこと・・・え、じゃあ、アル兄様も?」


「オリ・・落ち着いて。ひとつづつ質問に答えるから・・・。まず僕がオリの本当の兄ではないということについては、実は随分前から知っていたよ。躾のなっていない犬がこそこそと嗅ぎまわっていたからね。一度捕まえて事情を聞いた上でエルドラン公爵から王に直接交渉させてもらうようにしたんだ。随分二人とも驚いていたようだったけどね。僕につけられていた犬を褒美に貰って躾しなおしてからは随分マシになったけど・・ああ、一応オリにも見せておいた方がいいか・・。」


そういってどこから取り出したのか細身のナイフを何もない空間に向けて投げつけました。


投げられたナイフが壁に突き刺さるかと思った瞬間、驚くことにナイフがすっと消えてしまいました。すると何もなかったはずの空間がぐにゃりと歪み、そこから兄様が投げつけたナイフを手にした不機嫌そうな男の方がでてきたのです。


「っちょ!マジで殺す気ですかっ?!てゆうか・・・普通に紹介してくれませんかね・・皇子。ちょっと俺っちの扱い年々酷くなってませんかっ?!」


突如「何も無い」と思っていた空間から出てきた男の方は国の暗部に属する諜報員で、赤子の取り換えの行われた幼少のみぎりから、王の命令により兄様の警護に当たっていた方だそうです。

平民出身だそうですが、その腕は暗部の中でも折り紙付きでなおかつ、珍しい擬態・隠密能力をもっている為、皇子の警護という大役に若くから抜擢されたそうです。本当に、素晴らしい能力をおもちですので、わたくしも興味津々で、ご挨拶させて頂こうと近づくと、途端に顔を青ざめて、少し後ずさり引きつったお顔で握手をしてくださいました。

わたくし、初対面でそんなに嫌われるようなことを致しましたでしょうか・・・・ショックです。


「えっと・・・よろしくな、姫さん。俺はシンってもんだ。平民出身なんで言葉遣いもなっちゃいねえが、これから・・も王族の一員になる姫さんの警護は任せといてくれ」


<<心の声>> おいおい・・てかタダの握手だろう!そんな殺気向けるなっつーの!!ないわ~・・・これが主とかってマジないわ~・・・完璧なはずの俺の空間擬態見破る相変わらず化け物じみた感してるし・・こと姫さんに関してはとことん心狭だし・・前から監視・・じゃなかった生活ストーカーしてるヤバい奴だし・・ってのは姫さん知らんだろうしなあ。くそ・・知られて嫌われやがれ!ちょっ、腕!曲がる!折れるっ!ああ、世も末だ!こんな悪魔に目を付けられた純情可憐な姫さん・・ほんと同情するぜ・・


「あ、はい。シンさん。こちらこそよろしくお願い致します。」あ・・つい返事してしまったけど、これから王族の一員になるってっ・・・・本当にわたくしで良いのでしょうか・・・・


「はい、もういいでしょうオリ、いつまでもそんな奴の手を握ってなくていいよ。まあ、今後もしかしたら状況によっては、シンには色々と動いてもらうこともあるかもしれないから、とりえず顔合わせだけはね・・。」


「兄様・・あ、いえクリス皇子・・・、あのぅ・・シンさんの手首が変な方向に曲がってしまっているように見えますが・・大丈夫でしょうか?」


「気にしなくていいよ。ね、シン・・?うん、とりあえずもう下がっといていいから。ああそうだ。オリ・・これから卒業して王家として正式に婚約を発表するまでは、今まで通り、兄と呼んでくれていいよ。その方が都合がいいしね。うん?なぜかって?ふふ、卒業するまでにこの国に蔓延った蛆虫を徹底的に駆除しないといけないからね。それまでは兄妹と思われていた方が都合が良いんだ・・(まあ、幾人か気が付いている奴らもいるみたいだけど・・)」


なんと兄様(学院を卒業するまではこれまで通り兄様と呼ぶことに)は、5歳の頃からわたくしと本当の兄妹ではないことを知っていらしたそうです。

それから王妃様はもう一人の兄様・・わたくしの本当の兄であるアル兄様についての心配事を語られました。


「・・・・・・それからね・・最近アルバートの様子がおかしいのよ。あの子に付けている暗部からの報告によると、どうもあの子と側近候補の幾人かが身分の低い娘に随分と入れあげてるみたいなの。このところ成績も下がっているみたいだし・・。そろそろあの子にも事情を伝えて今後についても話し合いたいけれど、呼び出しにも応じないし・・」


「ああ、母上・・そのことですが、どうやら裏で例の勢力が動いているようです。暗殺するよりは懐柔したほうが得策だと踏んだのでしょう・・・まあ、あの馬鹿のうかつさが招いた部分もあるが、このまま泳がせておいて証拠を集め一気に潰した方が手っ取り早いか・・」


「クリス・・!あなたのそういう所は本当に陛下にソックリね・・・王族としての判断としては間違ってはいないんでしょうけど・・・少しはオリビアちゃんや私、それにミルフィーユの心情を考えて頂戴?アルバートは私達にとっても大切な息子なのよ。できるだけ・・・あの子を傷つけたくはないのよ。判っているでしょう?すでにあの子はあなたの代わりに大きな代償を払っているというのに・・それにあまり強引に事を進めると・・嫌われるわよ?」そういって王妃様はわたくしの方をちらりと見て微笑まれました。


クリス兄様は苦虫をつぶしたような表情で肩をすくめました。

「わかっています。できるだけ穏便に済ませる方法を探るつもりですが・・あいつにもチャンスとヒントは与えます。まあ、ただそれに気づくことができるかどうかはアルバート次第ですね。1年前のあいつなら、組み取ったかもしれないが、今のあいつの目は随分と曇っているみたいだからな。」


「アル兄様・・・・」


「オリビアちゃん、どうか、あの子を・・アルバートが間違った道へ進まないように手助けして頂戴・・。このままでは・・本当にミルフィーユに合わせる顔が無くなりそうで怖いのよ・・。学院内の事は王族と言えどもおいそれと口出しできないし・・・。」


話し合いの後、家に戻ると父様と母様が私達を待っていました。何故かクリス兄様は満面の笑みでわたくしが、・・・・その、兄様との婚約を了承したことを伝え、父様はしばらくの間、がっくりとうなだれていましたが、母様になだめられ、渋々正式な婚約と婚姻は卒業するまでは開示しない旨念を押し、祝福してくださいました。


家族内でも、色々と今後のことについて話し合いがなされました。お父様曰く、学院を卒業した際にアル兄様を公爵家の跡取りとして同時に発表する予定であるものの、王妃様が心配していらした通り、アル兄様は以前の兄様と違い、その・・何か色々とこじらせてしまっているようなのです。


もしアル兄様が卒業までに公爵家の跡取りとして相応しくないと判断されたのであれば、廃嫡し、わたくし達の年の離れた末の弟を跡継ぎとする意向を聞かされ、父様の当主としての厳しさと母上の悲しそうな姿にわたくしは何とかしてアル兄様を取り戻す決意をしたのでした。


しかしながら、わたくしの意図とは裏腹に物事はそんなに簡単には進まなかったのです・・・。


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