EPISODE 30.1
蒼白になって美香さんと野原さんのところへ行き、お休みの件はぜひ私にと申し立てた。明日と明後日は会社に来られません。今日ももう帰らせてください。社長や専務や他の部署の人まで集まってくれて、私が半泣きだったので誰かがタクシーを呼んでくれた。タクシーは首都高と中央自動車道を府中の実家に向かって飛ばす。泣いたら気分が落ち着いてきたように思えた。
「お義母さん、自衛隊から電話がありました」
「さっきからテレビで報道してる。どんな電話だったの」
居間にいた義父のところで説明をして、全員で震えながらSONY製の平面ブラウン管テレビを見た。ダンジョンゲートから続々と出てくる冒険者たち。この中には観光客や研究者もいるのだろう。パトカーが規制する道路を救急車が行ったり来たりしている。怪我人が出ているようだ。
「大地はまだなんですよね」
「早退させよう。迎えに行ってくる」
ゴブリンが多数出現。ホテル周辺でも格闘になった。地上に出たら町がパニックになるだろうと言っている。
「100匹以上いるって言ってますよ」
「どこかに隠れてたんだよ。それがいっぺんに出てきたんだ」
ダンジョンから出る人がいれば、集まってくる人もいる。心配した家族だろうか。いやあれはアイドルファンだ。
「もうすぐ大地も帰ってくるから晩ごはんを用意しないと。美智子さんも食べるでしょう。激辛カレーと激甘カレーがあるよ」
「じゃあ、私は混ぜたのを」
義母は信じられないという顔をした。
「混ぜたら中途半端じゃないの」
「そういうのが好きなんです。あ、ちょっと待ってください。テレビを見てください。自衛隊が派遣されます。災害派遣です」
ダンジョン前に張られた大型テントが白く照らされて担架や簡易ベッドが並べられた。テントの隣に整列しているのは、これから突入する小隊だ。茶系の洞窟迷彩戦闘服は専務が好みそうな色合いだと思った。
「人数はこれで派遣部隊の半分くらいですね。残りはもう中に入ってるんでしょう」
それから大地が戻ってきて、全員でおいしいカレーを食べていたら、ついに待ち望んでいたメールを受信した。
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あんかけ豆腐が食べたい。
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私はメールを見てすぐ大地とアパートに戻った。義父に車を出してもらってコンビニに寄ってもらった。義母も認めてくれたし、私は私のできることをしよう。まずはメールの返信だ。
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あんかけ豆腐の材料を買ってきました
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豆腐好きの夫のために、私はあらゆる豆腐料理のレシピを溜め込んでいる。具体的にはクックパッドのページをIEからWordにレイアウトごとコピペして保存しているのだ。フォルダ名は豆腐百珍。
買ってきた材料はカニカマ。私としては揚げ出し豆腐のほうが好みなんだけど、今回はリクエストを優先するよ。




