EPISODE 6.1
出会ったときの夫はまだ冒険者学校の寮暮らしだった。そして週末の外出で私と知り合った。
妊娠がわかったとき義母は私を疑った。結婚式を夫はやりたいと考えていた。だけど厳しい学校の寮で暮らしながら式の準備なんてできはしない。義母ははっきりやるなと言った。妊婦の結婚式なんて親戚に何を言われるかわからない、恥ずかしいと。
正直なところ儀式はどうでもかまわなかった。子供が無事に生まれることがいちばん大事だった。でもそのとき、この人は私が嫌いなんだなあと思い知った。
明け方に F501i HYPER が震えたような気がした。枕元の白い電話を手に取って開いてみると夫のメールが届いていた。
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地上に出た。これから仮眠する。今日は帰る。
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私は感謝を胸に短い返信を送った。ゆっくり休んで欲しいこと、実家に大地といること、心配していたこと。
明るくなってから居間に行くと寝巻きの義父が新聞を読んでいた。報道は事実に追い付いていなかった。
「朝刊の記事を締めたあとで見つかったんだろう。そのうち続報が出るはずだ。それにしても、これは自衛隊の任務とは違うようだねえ。こんなのは想像してなかった」
「特殊な任務と聞いています。草むしりとか虫取りとか」
義父とはそのことを話したこともあったので笑ってくれた。黙っていた義母が吹き出しそうになって取り繕っていた。
## 奥多摩ダンジョンで崩落事故 冒険者の男性、安否不明のまま捜索続く
【奥多摩発】16日午後、東京都奥多摩市の奥多摩国営公園内、特定危険領域「奥多摩ダンジョン」の地下20階付近で通路の一部が崩落する事故があった。日本冒険社によると、テレビ番組の取材案内を同社から委託されていた冒険者、**小林高雄さん(64)**が崩落に巻き込まれ、行方が分かっていない。同社は冒険者十数名に捜索・救助を要請し、16日夕刻から活動を続けている。
同社の説明では、事故当時、小林さんと冒険者の**峰恵さん(22)**がテレビ局の取材クルー2人を案内し、同区域を進んでいたところ、天井の一部が崩れ落ちた。同行していた取材クルーは無事に避難したが、その際に小林さんとはぐれたという。取材クルーにけがはなく、事情聴取に応じている。
日本冒険社広報部は「一般人の安全確保を最優先とした結果、小林冒険者との離脱に至った。現在、全力で捜索にあたっている」とコメント。同社によれば、崩落現場では二次災害の危険もあることから、慎重に作業を進めているという。
日本冒険社は続報が入り次第、あらためて発表するとしている。
*2000年8月17日 読売新聞朝刊*




