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「あの時の炎ーー……。」
分からないーー、出し方が……。
ーーけれど、体の中、その中心ーー、心臓の少し上にーーそこに何か熱いものがるのが分かった。
「(熱いーー……。)」
意識する程、その熱は広がり、体の内側から外側へ放たれる様にーー……。
「その調子です。そしてその力で、この世界から飛び出しますよ。」
「(世界からーー飛びーー出す……。)」
熱は背に籠もったかと思えば、そこから炎の羽が生え、大きな翼が出現した。
「は? え? 」
「うわ!? 重たいーー!? 」
「!? ーー私にも意外ですがーー継いでいたのですね……。良いでしょう、そのまま飛びますよ。」
「え? 飛ぶ? ーー掴まって! 」
「飛べるの!? 」
「何か来る! まずは避けるから! 」
「え!? ヤバッ!! 」
上空へ逃げた。
「ーーーーーーって、わ〜、綺麗な景色……。」
「長い時間天成君にしがみついても居られませんよ。」
「もう少しだけーーって、天成が駄目か! 先生、早く元の世界へ! 」
「僕らを元の世界に戻してください!! 」
「えぇ。承知しましたよ。」
「目の前がーー!? 」
「何これ!? 歪むーー!! 」
「干渉を受けました……。振り切ってください、天成君! 」
「振り切るってーー、振り切れーーないっ! 」
「天成じゃ無理か……。先生、こっちも何か出来ない? 」
「貴方に出来る事ですか? ーーありますよ。」
「それって何? 」
「この干渉をーー魔女たちの術を解いてください。」
「えーーと、どうすれば良いんだろ……。どうやればーー……。」
「難しくーー考えない方が良い、のかも! 」
「あ〜ーー、解けてっ!! 」
世界が割れてバタバタとその場に落ちた。解けてという言葉の通りに、天成の翼も消えてしまっていた。
「見事にーー全て解けてしまいましたね……。」
「痛た……。でも、帰って来れたよ」
「ーー元の世界じゃないかも……。」
周囲の学生達に、見覚えがなかった。
「見覚えがあります。」
「僕らはないけどーー先生は知ってるんですね? 」
「見知った顔が、待って!! 待ってください! この声と顔に覚えがあればーー! 」
「? ーー! 」
「ーー何してんだ? 」
「揃いも揃って、転けたか? 転けてどうした? 直ぐ立ち上がらないと、ほら、危ない。」
「わっ! 轢かれるっ! 」
「轢かれるところでした……。」
「大丈夫か? 何をしてーー、!? 」
「ドッペルゲンガー!? 」
「うわっ、初めて見た! 」
「そっくりだ……。あ、若い頃の父さん? 」
「多分違う。」
「そうですよ。」
「ノアさんだ! 分かる! 」
「ノア? 」
「随分大昔の名前でーー……。」
「ノアという名は最近呼ばれ始めたはずですが、まさか昔も? 」
「待って? 昔なのに更に昔が今の名前? 」
「先祖返りは同じ名を付けられやすくーーまたその名で呼ばれやすいんですよ。」
「何か、ちょっと見ない間に成長した? 大人にーー……。進化した? 」
「進化はしてます。ーー良かった……。この時代の貴方は無事ですね。」
「天照さん? 」
「それはお前ーーじゃないのか? 」
「僕は」
「あ〜駄目っ! (ーー多分駄目、……。パラレルとか、昔の世界とかで、自分たちの世界ーー元の世界の名前名乗るのは……。)」
「(そ、そっかーー! )」
「(えぇ。深く関わらない方が良いです。ーーですが、)」
「でも、君とは関わりたい……。話を聞いてはくれませんか? 」
「ーー俺で良ければ。勿論。」
「(先生、本当に天照さんじゃないの? その人。)」
「(違います……。何ですか? )」
「(なら天照さんーー父さんには関係とか、あの人といるところとか、見られない方が良いかも……。)」
「(ーー……。私たち二人が居るところを見るのが好きでしたよ、天照は。ーーいえ、本当は違いましたかね? )」
「(ーーあ、そうなんだ? 公認? 公認なら良いのか……。)」
「(公認ならって……。どう考えても二人はーー)」
『両想いに見える』と天成は親友に目で問い掛けた。
「(天成、俺も両想いに見える。)」
「(! だよね! )」
「(両想い? ーーえぇ、それは勘違いじゃないですよ。私たちは両想いです。ただーー貴方方と同じく、友情ですが。)」
「ひそひそ話終わった? ひそひそ話混ざって良い? 」
「駄目です。このひそひそ話はーーあの子やあちらの子くらいしか……。」
「俺ーーは良いのか……。なら混ぜて貰おうかなぁ? どうしようかな……。」
「良いからちょっと、こっちへ。こちらへ。」
「ーー……。何? 」
「(私たちは未来から来ました。)」
「(ーーマジ? 兄貴の未来予知当たってーーまた当たったし……。)」
「(お兄さん居るんだ? )」
「(……。そっちにも居そうだけど? )」
「(居ない。)」
「(力を貸してください。元の世界へーー)」
「(うわっ……。引く程大当たりーードンピシャ……。)」
「(未来予知がですか? )」
「(待って? )ーーお前は認めない、認められない! 何で居る!? 」
「は? 」
「(天成君は天照に似ていますからね……。)」
「(僕ーー? )」
「そう、そこの君、お名前は? 御免ね耳良くて。ひそひそ話、ちょっと聞こえちゃった。」
「(ちなみにこのお兄さんはあの魔女の息子さんです。つまり)」
「(気を付けろってことか、了解。)」
「(あの魔女ーー? )」
「(えっと、そのお兄さんのお母さんが魔女って未来では呼ばれてて? )」
「(天成、過去で呼ばれてた。だと思うよ。)」
「(あぁ、あの人か。確かに魔女だよね、あのお母さんーーお祖母ちゃんは。)」
「えっ!? 」
「若かったような? 」
「二十代にしか見えなかったでしょうが、お祖母様ですよ。」
「ーー若作り……。」
「お二人共、あのお祖母様の様になりたくなければこの世界の方々とは極力関わらない事です。ーーこの時代の方々はあの魔女たちに絆されていますからね……。」
「それ、最もひそひそ話にしなくて良い感じ? 」
「えぇ、もうこちらも消えますので。消えたら貴方方の記憶も消えます。では、さようなら、過去の友人ーー親友とも呼べる方。」
「何か分からないけど、バイバイは仕方無いんだろうね。」
「じゃあ飛ばすよ? え〜いっ! 」
「あの! 未来で! また未来で会えたら! 」
「うん、未来で会えるはずだから。だから良い子に帰って! 」
「ーーまたね、この時代の父さん。」
「! ーーそっーーかぁ……。父さんになるのかぁ〜……。自分が父親にーー……。」
「なるよ。未来の俺のこと、よろしくねーー! ……。聞こえてたかなぁ? 」
「聞こえてなかったかもね。」
「うん、今聞いた。」
「わ! 現実の父親! 」
「おかえり。ちょっと梃子摺ってたのかな? 」
「梃子摺りました。」
「過去に落っこちちゃって……。」
「君たちは受験生だろーー? 」
「あ。」
「戻って来れたから大丈夫! ーー受験、梃子摺るかもしれないけどさ、大丈夫だよ。きっと。」
「ーーうん……。梃子摺るのは仕方無いね。」
「帰って来たな? 揃っているな? ーーなら俺も帰る。」
「えぇ。また来るんでしょうけど……。」
「あぁ、様子は見に来る。」
「また来てよ。」
「また来てください。」
「気に入られたか? ーー」
去り際にフッと小さく笑って帰って行った。
「未来のお前たちが来た。帰してやったよ。帰って行った。」
「え? 」
「ーー帰ったか……。帰したか……。」
「うん。帰した。」
帰したことで俺は魔女に呪われる。ーーだけど……。
「帰さない訳にいかないだろ? 兄さんたちをさ。」
「それは俺がやるつもりでいたーーが……。お前がもうしてしまったなら、仕方無い……。」
「どんなだった? 未来の私たち。」
「ーー幼少期の一人と、パラレルワールドのもう一人と、それからーー成長した兄さんだったかな……。」
「俺は成長するのか……。」
「自分を『私』って言ってたよ。社交が身に付いた姿なんじゃない? 」
「そうか、それはーー社交が身に付いたのは良かったか。だがーー、しかしそうだな、一人称が私ーーか……。」
「私が大人になった姿じゃーー? 」
「あ〜、それは無い。」
「無いーーあ、そうか。」
「? 」
「そうだよ、兄さん。」
「そうだな。明確に違う……。ーー家に帰ったら教える。だからその不思議そうな顔をこっちに向けるのはやめてくれ……。」
「! 」
間を置いてから『分かった』と少女は言った。心の中で。
「分かったのなら良い。……。少し、」
「少し? 」
「会いたかった気もするーーが、これが運命なんだろう……。」
「私も少し、会いたかった……。」
「ーーあ〜、そういうの、その雰囲気、家に帰ってからして貰って良い? 道端だとーーちょっと身内が俺が恥ずかしいからさ。」
「恥ずかしがれ。存分に恥ずかしがって良いぞ。」
「どういう雰囲気? 」
「ドラマみたいなの。」
「ドラマみたいなのか……。俺たちはどうやらドラマの様に見えるらしいぞ? 」
「嬉しい? 」
「分かっている事を」
「嬉しそう。」
「ーーああ、そうだ。」
「あ〜、先に帰ってるね〜。」
「夜道はーー! 」
「ーー危ない? 」
「危ないぞ。お前は先に帰れ。こいつを送ったら直ぐに俺もそっちに行く。」
「ーー分かった。」
「寂しそうにするな。ーーいい、こっちも分かった。一緒に来い。」
「夫婦水入らずに俺が混ぜられるのはーーちょっと安心。」
「良かったな。」
「うん。」
真っ暗な帰り道も、きらきら輝く星空と、家族が居れば怖がらずに帰ることができる。
手を繋いで。それぞれの足で。
2025.12.20




