↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/74

幸せな生活

 拓人が初めて紫星の屋敷に行ってから二ヶ月が過ぎていた。

 季節はいつのまにか秋になり、少し肌寒い日も増えて、庭の紅葉が色付き始めている。


 ホンシアと初めて会ってから、拓人は毎日のように紫星の屋敷へ通い続けた。

 そして、一日何回も死線を超える修行を重ねていた。

 

 その主な内容は、ホンシアの弟子たちによるフルボッコだ。

 屋敷に着くなり、全員が容赦なく襲ってくる。


 拓人は、全力でチャクラを回しながら、それらを相手に一日中戦い続けていた。

 怪我をしたらホンシアが治し、疲労したらアキラが用意してくれたお茶を飲む。

 

 『心が折れない限り付き合うヨ』


 ホンシアが言ったその言葉に嘘はなかった。

 たとえ心臓が止まっても、何度でも蘇らせてくれた。


 弟子たちに手加減などない。

 常に全力で命を取りに来る。


 特に紅一点でホンシアの一番弟子、趙 鳳玲(ジャオ フォンリン)の攻撃は苛烈を極めた。

 まるでこちらに恨みを持っているかの如く、執拗に急所を狙って来る。


 フォンリンの実力は確かなもので、怪我のほとんどは彼女が理由だった。

 

 『结婚!我絶対不能恕你了!』


 などとよく叫んでいるが、中国語はよくわからない。

 口元を赤い布で隠しているが、その瞳からは常に俺へ対する殺気が漏れていた。

 

 とはいえ二ヵ月も戦っていると、対応が出来るようになってきて、死線を超えた分だけチャクラも増大していた。


 自分が毎日強くなっていく感覚。

 目標があると、殺伐とした戦場も悪くない。

 

 もともと暗く薄汚い裏街道で、孤独を友として生きてきた。

 自分と肩を並べられるような人間は一人もおらず、それを必死に探していた日々。

 

 あの時に比べ、今では本気で戦える相手がたくさんいる。

 なにより、アキラという光に向かって歩めることを幸せだと感じていた。


 そして、家に帰れば哲夜がいる。

 彼女は、俺が修行を始めてから日に日に優しくなっていった。


 最初は当番制にすると言っていた掃除や料理も、気づけばやってくれていた。

 毎日服をボロボロにして帰るけど、代わりの服を常に用意してくれる。


 相変わらず口は悪いけど、こちらを気遣う言葉を掛けてくれる。

 一緒に過ごす時間は、初めて家族と暮らしているみたいで、とても幸せだった。


 あと、アキラの彼女だという三人の女子と少し仲良くなった。

 哲夜から聞いてはいたが、どうやら全員納得して付き合ってるという。

 

 さすがアキラだ、意味がわからない。

 彼を目指すなら、俺もそれを参考にした方がいいのかと本気で悩む。

 

 その中で、水瀬 裕子(みなせ ひろこ)という女子とは何度も手合わせをした。

 というか、ホンシアの弟子たちに混ざって殺しに来る。


 彼女が能力を使って瞬間的に見せるスピードはフォンリンをも超えており、最初は何もできずに倒された。

 それでも最近は色々と工夫して対応できるようになってきた。


 裕子は負けず嫌いらしく、さらにスピードを上げたり能力の時間を伸ばしたりして、日々競い合っている。

 

 少し話をするようになって、彼女もアキラに救われて今は彼を目標にしていると言っていた。

 同じ目標を持っているのが嬉しくて、それから話をする機会も増えた。


 雪乃は、ホンシア以外にもいるアキラの娘の面倒を、泊まり込みで見ているらしい。

 そのせいで、あまり紫星の屋敷には帰って来ない。

 雪乃の家族も、ほとんど顔を見なかった。


 山岸 心寧(やまぎし ここね)というアキラの彼女にも会った。

 どうやら有名な芸能人らしい。

 だが、性格があまりにも明るすぎて、俺では話がまともにできなかった。

 仕事が忙しいらしく、そこまで会うこともないので助かった。


 アキラは頻繁に顔を見せに来てくれて、あの不思議なお茶の補充と、俺の相手をしてくれた。


 当たり前だがアキラは凄い、少し強くなってあらためて思う。


 まるで戦いにならないのだ。

 ただ、俺が必死に攻撃するだけ。

 あの倉庫の時と何も変わらない。


 だけど、立ち会うたびに発見があった。

 体の動かし方はもちろん、気脈の流し方、チャクラの回し方、新たな技の発見。

 向かうたびに、何段階も強くなれる。


 そして何より、俺の成長を信じてくれている。

 

 言葉ではない。

 体の動きすべてで、もっと強くなれると伝えてくれた。


 世界一尊敬する人が、自分を心から認めてくれるのだ。

 こんなに嬉しいことはない。

 

 おかげで修行にもますます熱が入った。


 それは裕子も同じのようだった。

 アキラと彼女の組手は、まるでデートをしているように見える。

 言葉はなくても、お互いが愛を語り合っているようで、見ているこっちが赤くなるほどだった。


 そして、彼女もアキラの手で、見る間に強くなっていく。


 哲夜に裕子の話をしたら、なんだか微妙な顔をしていた。

 もしかして、俺が他の女子と仲良くなったことに、嫉妬でもしてくれているのだろうか?

 だとしたら、なんだか嬉しい。


 最近は、俺の哲夜に対する気持ちが輪郭を持ってしまっている。

 一緒に暮らしていると、どうしても意識してしまうのだ。

 もう認めざるを得ないのだろう、彼女へ対する感情を。

 

 そういえば哲夜は、研究所の構想を美籐とアキラで話し合っているらしい。

 そして、学校にも再び通っている。


 戸籍は変えたが、前と同じ学校で同じクラスに転入し直したと言っていた。

 大蔵文翔とかいう、あの施設出身の男と協力して何かをやるために、学生の身分がいいらしい。


 アキラの役に立てることが増えたと言って、毎日嬉しそうにしている。

 ただその顔が、なんだか見た事のない表情をしていて、胸がざわついてしまう。


 でも、今は強くなることだけ考えよう。

 せっかく最高の環境にいるのだから、余計な雑念は抱かず、真っ直ぐに上だけ見て駆け上ろうと決めた。


 だが、そんな修行漬けの日々に、大事件が起きた。

 ホンシアとテラが、決闘を始めたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。