第9話 「23時52分」
75:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 17:30:10.45 ID:x8J9aK10
保守。スレ主、昨日の今日だけどちゃんと大学行けたか?
深夜2時半に避難してきた女の子、そのまま朝まで何事もなかったんだろうな?ww
76:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 18:15:22.01 ID:8bitLove
おいおい、今夜24時に第3階層『真夜中の通学路』が開くんだぞ。
いちゃついてる場合じゃねえ。
普段使ってる通勤路がダンジョン化するとか、一般人が巻き込まれたらどうすんだよ……。
77:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 18:40:55.00 ID:AoiAOI99
スレ主の幼馴染の葵です! スレお借りします!
昨日は無事に彼の部屋で朝まで(ちゃんと別々の布団で!)休めました!
今、仕事が終わって、講義終わりの彼と役所の近くで合流して作戦会議してます!
これから彼の部屋に移動して、今夜24時の開門に備えます!
78:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:40:10.45 ID:x8J9aK10
あと20分で24時だな……。スレ主、葵さん、準備はいいか?
第3階層『真夜中の通学路』……昨日の今日で連戦とかマジで体調気をつけろよ!!
79:【解析班】名無しのアセンブラ@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:45:22.01 ID:Assembler
スレ主、昨晩手に入れた『赤電話のダイヤル鍵』を互換機にセットしたか?
あれが第3階層のプログラムを読み込む『拡張カートリッジ』の役割を果たすはずだ。
――
深夜23時52分。陸の自室。
入念に攻略対策を確認するの二人のそばで、デスクの上に置かれた1987年製のFC互換機が、誰の手も触れられていないのに『カチリ』と乾いた音を立てて電源が入った。
繋がれているブラウン管モニターが激しく明滅し、耳をつんざくような砂嵐ノイズが部屋に充満する。
「なっ……電源が勝手に着いた……!?」
葵が息をのむ。
モニターの砂嵐が引き裂かれ、黒と赤のドット絵で構築されたタイトル画面が浮かび上がった。
『タイトル:かえりみち ——第三階層:フライング・レイド発生中——』
ピコピコと鳴り響く、歪んだ8bitの不協和音。
画面に映し出されたのは、ドット絵で再現された俺たちの街のマップだった。
市役所から駅前へと続く一本の道路——俺たちが毎日使う通勤・通学路。
そのドット絵のマップ上で、血のように赤いノイズがドクンドクンと脈打ち、市役所周辺から駅前へ向かってリアルタイムで広がり始めていた。
「陸、見て……! マップの上に、小さなドット絵の人間が……!」
葵が指差した先。
市役所のドット絵の横に、残業帰りと思われる小さなドット絵の人物がチラチラと点滅していた。
そして、その周囲を、二頭身の不気味な黒いドット絵の怪異がじわじわと包囲していく。
『……タ……ス……ケ……テ……』
テレビのスピーカーから、掠れた電子音声の悲鳴が漏れ出す。
「ゲーム画面と現実が完全に同期してやがる……! 24時の開門を待たずに、互換機の中で侵食が先行スタートしてやがるんだ!!」
俺はデスクの上の『呪導のラジオナイフ』と、ポケットの『赤電話のダイヤル鍵』を引っ掴んだ。
「葵! 互換機とモニターの画面から目を離すな! 画面のドットが、そのまま外の『ダンジョンのレーダー』だ!!」
「うん……っ! 画面の赤ノイズの位置、全部陸のスマホに転送・ナビする!!」
「頼んだ! 市役所の残業帰りの市民が喰われる前に——現地へ突入するッ!!」
80:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:52:15.00 ID:AoiAOI99
葵です! 彼の部屋で二人で互換機の前にいます!
鍵をカセットの端子部分に接触させたら、画面に不気味なコマンドが……えっ!?
ちょっと待ってください、まだ24時前なのに、急にテレビの画面が勝手に点いて……!!
81:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:53:10.00 ID:AoiAOI99
【画像:自室のブラウン管に映る赤いドットマップと『かえりみち』のタイトル】
勝手にタイトル画面が立ち上がって、現実の道路のマップと市民の人たちが映ってます……!
主がナイフ持って走って現場に向かいました!! 私は部屋で画面のマップを実況します!!
82:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:54:12.00 ID:x8J9aK10
マ マ マ マ ジ で 画 像 き た あ あ あ あ あ !?!?
なんだよこの禍々しいドット絵!? ファミコンの画面に現実の街がリアルタイム描画されてんの!?
83:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:54:45.12 ID:8bitLove
マジで先行侵食始まってんじゃねえか!! 部屋で画面見てナビして、外で主が無双するとか……
激熱すぎるだろ!! 主人公、絶対に一般人助けて無事に帰ってこいよ!!
84:【解析班】名無しのアセンブラ@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:55:00.00 ID:Assembler
見事な判断だスレ主! 互換機は単なるゲーム機ではない。『現実侵食の観測・ハック端末』だ!
葵さんは自室で画面を監視し、スレとスマホで主へ指示を送れ!
主は現場へ飛び、現実の怪異を物理破壊しろ!!
――
ピッ、ピッ、ピッ……
【ミッション発生:『第3階層:フライング侵食』の現場へ急行し、一般人を救出せよ】
【制限時間:20:00】
俺は自室の扉を蹴り開け、夜の母屋を駆け抜けて外へと飛び出した。
玄関を出た瞬間——夜気全体がドロリと重く湿り、街灯の光がドット絵のモザイク状にバグり始めていた。
スマホの画面には、葵が自室のモニターを撮影し、爆速で転送してくる『リアルタイムのドット絵マップ』が映し出されている。
『陸! 大通り側の踏切手前! ドットマップ上で赤い敵アイコンが三体、市民ぽい緑のドットを追い詰めてる!!』
「見えた……! 葵、完璧なナビだ!!」
駅前大通りのアスファルト。
本来なら静まり返っているはずの深夜の通行路が、赤と紫の8bitブロックで構成された『ドットの迷宮』へと変異していた。
ザザザ……ジジジジジッ……!!
踏切の影から、黄色い通学帽をかぶり、背中に巨大な陸上用ハードルを背負った二頭身のドット絵怪異が、悲鳴を上げる帰宅途中の市民へ迫っていた。
【敵反応検知:『帰宅妨害の通学少年』×3】
【特殊能力:『赤信号バリア』】
「助けてぇぇぇっ!!」
「そこまでだ……怪異どもッ!!」
俺は走り込みの勢いのまま右足を踏み込み、胸の前にラジオナイフを突き出した。
「新スキル——『ノイズ・干渉』!!」
ドォォォンッ!!
衝撃波が弾けた瞬間、怪異の『赤信号バリア』が1/60秒間だけ赤銅色のノイズに塗れ、プログラムのデバッグ画面のようにバグり散った!
『陸! 画面上の敵バリア消滅を確認!』
『画面のバリア判定が【NULL】に書き換わったよ! いまなら攻撃が通る!!』
「無敵判定が消えれば、ただの雑魚だッ!! 押し通る!!」
自室のゲーム画面の入力と、現実のラジオナイフの軌跡が1/60秒の狂いもなく完全同期する。
——ガチリッ。
世界がまるでヒットストップエフェクトのように一瞬静止し、直後に赤銅色の閃光が怪異の胴体を横一文字に両断した!
シュガァァァンッ!!
【特効の一撃! 45ダメージ!】
【『帰宅妨害の通学少年』の体力が 0 になりました】
ギャギャギャッという電子の砕裂音と共に、怪異がドットの塵となって爆散する!
「ひっ……!? あ、あなたたちは……!?」
腰を抜かした市民の肩を掴み、俺は叫んだ。
「いいから走って! 駅前に逃げてください!!そこなら安全です!!」
「は、はいぃっ!!」
救出した市民が逃げていくのを見送り、俺はスマホを耳に当てた。
「葵! 自室の画面の敵アイコン、あと何体残ってる!?」
『陸、すごい! 画面上のアイコンが一体消えた!!……でも、道の最奥にある歩道橋が、真っ黒なノイズで埋め尽くされて……ボス部屋っぽいのが形成され始めてる!!』
スマホ越しに聞こえる、自室のブラウン管から漏れ出すピコピコとした不気味な不協和音。
俺は不敵に口角を吊り上げ、刃先をギラつかせた。
「自室のファミコン画面で敵の居場所を炙り出し、現場で俺が叩き潰す……最高のRTAじゃねえか!!」
「葵、自室の互換機から目を離すなよ! ボスまで一気に駆け抜けて、全員まとめて部屋へ生還してやる!!」
『了解! ……あっ、陸、気をつけて! ドットマップの歩道橋の陰から、画面を埋め尽くすほどの巨大な『赤信号』の影が……!!』
——第3章【真夜中の通学路】自室ハック&リアルタイム攻略編、開幕!
――続く。
【ステータス】(第3章・通学路フライング侵食突入時)
・プレイヤー:真壁 陸
・HP:[全部位:100(健全)]
・所持スキル:[ノイズ・干渉 Lv.1(CT残り:28秒)]
・装備:[呪導のラジオナイフ(耐久:7/15)] [安らぎの護符羽織(葵装着/ノイズ耐性+10)]
・現在のミッション:【『第三階層』の先行侵食を突破し、捕らわれた一般人を救出・生還せよ】




