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第10話 「歩道橋と、信号機」

85:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:55:40.00 ID:AoiAOI99

 葵です! 画面上の歩道橋のドット絵が真っ赤なノイズで埋め尽くされました!

 画面いっぱいに巨大な『3色の目玉』を持った大きなドット怪異が形成されてます……!

 逃げ遅れた会社員の人も囚われてて……! いま主のスマホに画面の写真と解析データを送信してます!!


86:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:56:05.12 ID:x8J9aK10

 おいおいおい!? 画面を埋め尽くす巨大な赤信号の影ってそれかよ!?

 歩道橋のところに何が沸いてんだ!? 主マジで気をつけてくれよ!!


87:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:56:40.00 ID:8bitLove

 制限時間残り18分か……!

 逃げ遅れた市民を避難させながらあのデカい影を倒すとか、ミッション難易度跳ね上がりすぎだろ!!


88:【解析班】名無しのアセンブラ@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:57:30.00 ID:Assembler

 葵さんナイスだ! 『点滅パターン』の解析に入る!


 スレ主、そいつは第3階層のエリア中核——『赤信号の監視者(ガイダー)』って奴だ!

 『青』『黄』『赤』の色の切り替わりに合わせて物理法則を書き換えてくる!

 信号の色を絶対に凝視しろ!!


――


ヒュオォォォォ……ッ!


 深夜の駅前大通り。


 街灯の明かりは不気味な紫色にバグり散らかし、夜風には焦げた電子基板のような甘い異臭が混ざっていた。


「ハッ……ハッ……!!」


 アスファルトを蹴り上げ、俺は一直線に坂道を駆け上がる。


 右手に握り締めた『呪導のラジオナイフ』の刀身が、自室のファミコン画面と微弱に同調しているらしく、ピコピコと低い電子音を脈打たせていた。


 左手のスマホが激しく振動する。


 画面には葵から爆速で送られてくる、自室のブラウン管を撮影したドット絵マップの画像。


『陸! 歩道橋の下! 残業帰りの会社員のおじさんが、巨大怪異の『赤信号バリア』に閉じ込められて動けない状態になってる!!』


「見えたッ!!」


 大通りの坂を上りきった先——駅前へと続く巨大な鋼鉄の歩道橋。


 その階段の麓で、背広を着たサラリーマンが、頭上に広がる『血のような赤いドットの光輝』に押し潰されるように膝をついていた。


「ひっ……う、動きが……体が、重い……!?」


 そして、歩道橋の真上。


 そこにそびえ立っていたのは、常軌を逸したバケモノだった。


ザザザ……ピキピキピキッ!!


 巨大な旧式(白色電球の)信号機。


 そのスチール製の箱体から、不気味な二本のドット絵の巨腕が生えている。


 信号の三つのレンズ——『青』『黄』『赤』の丸い色ガラスの中には、ぎょろりと蠢く巨大な目玉が埋め込まれていた。


【中ボス反応検知:『赤信号の監視者(ガイダー)』】

【特殊能力:『絶対停止(赤信号・完全拘束)』】


ゴゴゴゴゴゴゴッ……!!


「グオォォォォン……ッ!!」


 信号機の巨体が、耳腔を破壊するようなスピーカーのハウリング音を撒き散らす。


 その中央、真っ赤な『赤信号の目玉』がカチリと音を立てて凶悪に発光した。


ピッ、ピッ、ピッ……


【エリア異常:『赤信号判定』発動】

【全プレイヤーおよびNPC(通行人)の移動速度:-90%(ほぼ完全停止)】


「くッ……手が、脚が重え……ッ!?」


 重力が十倍になったかのような凄まじい圧迫感。


 俺の身体がアスファルトにへばりつくように硬直し、足が一歩も前に出なくなる。


「陸ッ!!」


 スマホのスピーカー越しに、自室にいる葵の悲鳴のようなナビが飛んできた。


『陸、互換機の画面を見てるよ! いま画面の右下に『カウントダウン:03』が出てる!』


『青信号に切り替わるまで、あと三秒! 三秒耐えて!!』


「三秒……だなッ!!」


 俺は歯を食いしばり、必死に右足を踏みとどまらせた。


 歩道橋の上の巨塊——『赤信号の監視者』が、その巨大な金属の腕を振り上げ、動けないサラリーマンへ向けて叩き落とそうと振りかぶる!


「死ねええええッ!!」


「いかせるかよぉぉぉッ!!」


ピピッ!


 3秒のカウントがゼロになった、その一瞬(1フレーム)!


 巨大怪異の胸のレンズが、カチリと音を立てて『青色』に切り替わった!


【エリア異常解除:『青信号判定《進行可》』】

【全プレイヤーの移動速度:+100%(超加速)】


 フッと身体の重圧が消え去り、逆に全身に弾丸のような推進力が駆け巡る!


「スキル——『ノイズ・干渉(ジャミング)』!!」


ドォォォンッ!!


 俺は爆発的な加速でアスファルトを蹴り、半径五メートル先への赤銅色の衝撃波を発動させた!


ピピピキキキッ!?!?


 サラリーマンを拘束していた赤いドットバリアが、一瞬でガラスのように粉々に砕け散った!


『陸! 今! バリア判定【無効(NULL)】! さらに青信号でこちらの攻撃のフレーム威力が二倍になってる!!』


「助かったぜ葵! 一秒で逃げろおじさん!!」


「は、はいぃぃぃっ!?」


 腰を抜かしていたサラリーマンを背後へ放り投げ、俺はそのまま歩道橋の階段を一気に駆け上った!


「グオォォォンッ!?」


 青信号の超加速に乗った俺の身体が、残像を描いてボスの目の前——歩道橋の手すりの上に跳躍する。


「互換機(テレビ)の画面でフレームを読まれてるんだよ、お前はッ!!」


 刃先を赤銅色に発光させた『呪導のラジオナイフ』を、俺は全力でボスの『青信号の色レンズ(目玉)』へ突き刺した!


ドドドスゥゥゥンッ!!


【痛恨の一撃! 120ダメージ!(青信号効果)】


「ギャアアアアアアッ!?」


 巨大怪異が耳をつんざく悲鳴を上げ、青いレンズがドットの破片となって弾け飛んだ!


89:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:58:15.00 ID:AoiAOI99

 画面が青信号に切り替わりました……!

 陸が青信号の加速に乗って歩道橋へ跳躍!! ナイフで敵の青い目玉を直撃させました!!

【画像:画面上の青アイコンが砕けてダメージ120のポップアップが出る瞬間】

 青のレンズを破壊しました!! “一般通行おじさん”も無事に逃げられました!!


90:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:58:30.00 ID:x8J9aK10

 うおおおおおあああああッ!? 一撃で120ダメージ叩き込んだぞスレ主!?

 青信号の加速に乗って目玉打ち抜くとか神プレイすぎるだろ!!


91:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:59:01.12 ID:8bitLove

 葵さんの自室ナビが爆速すぎる!!

 ファミコンの画面でカウントダウン読んでタイミング指示するとか、世界一のオペレーターかよ!!


92:【解析班】名無しのアセンブラ@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:59:35.00 ID:Assembler

 油断するなスレ主! 青のレンズを割られたことで、奴の行動パターンが変化する!

 次は『黄信号』!!範囲攻撃だ!!


――


「グ……グググ……ガガガガガッ!!」


 青いレンズを破壊された『赤信号の監視者』が、狂乱したようにその巨体を激しく横揺れさせた。


 中央の『黄信号のレンズ』が、目も眩むような凶悪な黄色い光を放ち始める。


ピピピッ……


【警告:『黄信号判定(点滅ノイズ)』発動】

【空間全体に『コマ落ち判定』が発生中】


「なっ……視界がバグる……!?」


 世界全体が、まるで動画が一秒間に何回も停止(コマ落ち)しているかのように、ガタガタと途切れ途切れの映像へ変異した。


 自分の手足の動きすら、パラパラ漫画のように不連続になっていく。


「陸! 互換機のブラウン管も激しく横揺れしてる……! でも、画面の右下に『隠しコマンド』のドットが表示された!!」


 スマホのスピーカーから、葵のハキハキとした力強い声が届く。


『コマンドは【上・上・下・下・左・右】! 互換機のボタン入力判定が、陸のナイフの『ノイズ・干渉』と直結してる!!』


「つか、お約束の裏技(コナミコマンド)かよ……最高だなッ!!」


俺は途切れる視界の中、右手のラジオナイフを胸の前で高速で十字に振り抜いた。


上、上、下、下、左、右——!


ガチリッ……!!


【隠しコマンド認識:『体感機(周期デバッグ)モード』成功!】

【空間のコマ落ち判定を1/60秒間完全同期!】


 ガタついていた世界が一瞬で滑らかな超高画質へと巻き戻り、黄色のレンズから放たれていたホワイトノイズがすべて爽快な光へと書き換わった!


「なっ……バグが打ち消された……!?」


「葵! タイミングは!?」


『うん! 黄色レンズの無敵時間、あと0.5秒で切れるよ……今ッ!!』


「押し……通るッ!!」


 俺は歩道橋の手すりを強く蹴り飛び、空中で刀身を横一文字に振るい抜いた!


 自室のゲーム機からのハック入力と、現実の閃光が1/60秒の狂いもなく完全同調(ジャストコマンド)する!


シュガァァァァンッ!!


【痛恨の一撃! 180ダメージ!(同期特効)】

【『赤信号の監視者』の体力が 0 になりました】


ドッギャァァァァンッ!!


 巨大な信号機の怪異が、けたたましい電子の爆破音と共に、無数の8bitドットの塵となって夜空へ弾け飛んだ!


 直後、周囲を覆っていた赤と紫のモザイクが、潮が引くようにアスファルトから消え去っていく。


ピッ、ピッ、ピッ……


【ミッション達成:『第3階層:フライング侵食』の完全排除に成功しました】

【一般NPCの救出数:2/2(全員生存)】

【報酬:『歩道橋の歩行許可証(第3階層正規アクセス権)』を獲得】


「ハッ……ハッ……!! 討伐……完了だ……!!」


 俺は膝に手をつき、荒い息を吐きながら夜空を見上げた。

 バグっていた街灯が元の暖かいオレンジ色に戻り、静かな深夜の街並みが戻っていた。


 スマホを耳に当てる。


「葵、聞こえるか? 撃破したぞ。……そっちは異常ないか?」


『陸……っ!! うん、聞こえるよ……!! こっちも無事! 画面の赤ノイズ、全部消えたよ……!!』


 安堵で声を震わせる葵の気配が、スマホ越しに温かく伝わってきた。


「よし……すぐ一回、部屋へ帰る」


「うん! 気をつけて帰ってきてね、陸!」


92:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:59:48.00 ID:AoiAOI99

 主がコナミコマンド?で、コマ落ちバグを解除!!

 無敵判定が切れた瞬間にボス両断しましたあぁぁぁ!!


【画像:画面のボスアイコンが爆発して『MISSION CLEAR』と表示される瞬間】


 街の赤ノイズ消滅! 第3階層のアクセス権「歩行許可証」ゲットです!!


93:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 23:59:59.99 ID:x8J9aK10

 うおぉぉぉぉぉ完全生還キタァァァァァ!!

 隠しコマンドでコマ落ちハックしてワンパンとか神回すぎるだろ!!


94:名無しさん@ゲーマー:202X/08/04(火) 24:00:15.00 ID:8bitLove

 一般人も全員無傷で救出したし、第3階層の正規アクセス権もゲットした!!

 自室オペレーター葵×現場アタッカー陸のバディ、マジで最強じゃねえか!!


95:【解析班】名無しのアセンブラ@ゲーマー:202X/08/04(火) 24:01:00.00 ID:Assembler

 見事な攻略だった、二人とも。

 だが……安心するのは早い。

 いま、本番の『24:00』を迎えた。互換機の画面に、更なる『深層データ』が読み込まれ始めているはず……!


――第三章【真夜中の通学路】先行侵食編・完


――続く。

【ステータス】(第3章・フライング侵食撃破直後)

・プレイヤー:真壁 陸

・HP:[全部位:100(健全)]

・所持スキル:[ノイズ・干渉《ジャミング》 Lv.1(CT残り:15秒)]

・装備:[呪導のラジオナイフ(耐久:6/15)] [安らぎの護符羽織(葵装着/ノイズ耐性+10)]

・獲得アイテム:[歩道橋の歩行許可証(第3階層・深層エリア解放鍵)]

・現在のミッション:【自室拠点へ帰還し、24:00以降に解放される『深層データ』を解析せよ】

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