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第4話 「残り90秒。壊れたラジオでエリアボスを手球に取る方法」

35:名無しさん@ゲーマー:202X/08/03(月) 19:51:40.00 ID:RikuMKB

 逃げません!!

 未回収のアイテム全部拾い直して、目の前の敵も倒して、完勝で生還します!!

 主は「ゲーマーのプライドが許さない」って笑ってます!!


【エリアボス:黄泉の門番】って奴を倒します!!


36:名無しさん@ゲーマー:202X/08/03(月) 19:52:00.12 ID:x8J9aK10

 おい嘘だろスレ主(と横の子)!!


 逃げるどころか戦利品拾い直してボス倒して生還する気かよ!?


37:名無しさん@ゲーマー:202X/08/03(月) 19:52:25.88 ID:8bitLove

 残り1分30秒だぞ!? 包丁の耐久値も【3/10】しかないのにどうすんだよ!!


38:【解析班】名無しのアセンブラ@ゲーマー:202X/08/03(月) 19:52:50.02 ID:Assembler

 落ち着け。門番のグラフィックは巨大なはずだが、動きも重いはず。

 スレ主、廊下に落ちている未回収の『壊れたラジオ』を拾え!!

 昭和のあるゲームのボスが、特定音波の割り込みで【確定スタン】が入る!!

 

 そいつのオマージュっぽい!


――


ドスッ……!! ドスッ……!!


 実家の庭の砂利を踏み荒らす、重苦しい足音が玄関へ迫ってくる。


 開いた玄関扉の向こう——

 夏の夜闇を割って姿を現したのは、高さ二メートルを超える『巨躯のノイズ塊』だった。


 頭部が巨大なブラウン管テレビに置き換わり、画面の中には真っ赤なノイズで「死」の文字が明滅している。

 太い腕には、血で汚れた巨大な鉄格子が握られていた。


『ギギギギギギ……死……死……死……』


 ブラウン管のスピーカーから、耳を刺す低周波のノイズが爆音で響き渡る。


「ヒッ……!? おっきい……こんなのどうやって……!?」


 葵が息を飲み、俺の右肩を強く抱きしめる。


「葵、スレ民の指示通りにする! 廊下の紫の光——『壊れたラジオ』を拾うぞ!」


 俺は痛む右脚を力任せに踏み込み、玄関から廊下へと反転した。


 床に転がる三つの紫色の光。


 その中央にある武骨な昭和製ラジオのドット絵アイコンへ、右手の指先を伸ばす。


【未回収アイテム:[壊れたラジオ] を回収しました】

【インベントリに追加:(2×1マス)】


「拾った! 葵、ラジオの使用コマンドは!?」


「待って、見る! ……『ラジオの電源を入れる』『周波数を合わせる』がある! 周波数は……1422kHz!?」


「1422kHz……ラジオ日本か! 1987年のファミコン音源が、ノイズ割り込みを起こす特定の周波数帯だ!!」


「えっ!? 音波でプログラムをバグらせるの……!?」


「昭和のハードは全部力技だったはず!! 喰らいやがれッ!!」


俺は右手だけでスマホの画面を連打し、インベントリ内のラジオを選択して【周波数:1422kHz】を叩き込んだ!


ジジジジジッ……ザザッ……!


「……こちらは、ラジオ日本……ただいまの時刻は……」


 部屋のブラウン管テレビと、俺の手元のスマホ画面が同調し、ノイズ交じりの昭和のラジオ音声が廊下に響き渡った。


 その瞬間。


 玄関を叩き割らんばかりに踏み込んできた『黄泉の門番』の動きが、ピタリと止まった。


 頭部のブラウン管画面がギャギャギャと激しく点滅し、巨大な身体が痙攣を始める。


【割り込み処理成功!】

【エリアボス『黄泉の門番』:8秒間の行動不能(スタン)】


「効いた……! 8秒間の確定スタンだ!!」


 俺は不敵に口角を吊り上げ、右手に握りしめた『錆びた包丁』の柄を固く握り直した。


「残り時間、一分! 残りの戦利品を全部拾って、首を刈る!!」


 俺は廊下に倒れ込む巨大な門番の足元をすり抜け、残る二つの紫色の光へ飛びついた。


【未回収アイテム:[黄泉の銅貨×2] を回収しました】

【警告:すべての戦利品の回収を確認。Extract条件達成】


「全部拾った!! 陸、あと三十秒!!」


 葵の絶叫が廊下に響く。


「うおおおおッ!!」


 俺はスタンの解けかけた門番の胸元——赤く明滅するノイズのコアへ向け、右手の包丁を一直線に突き立てた!


ガガガガガガガガガッ!!


 ブラウン管スピーカーから、今日一番のクリティカルヒット電子音が爆発する。


【痛恨の一撃! 52ダメージ!(弱点特効)】

【『錆びた包丁』の耐久値が 0 になりました(破損)】

【『黄泉の門番』の体力が 0 になりました】


ドシャァァァンッ!!


 巨大なノイズの巨躯が、激しい電子音と共に崩壊し、部屋中に黒いドットの塵となって散らばった。


 同時に、ブラウン管の画面全体が神々しい金色の光に包まれる。


【ミッションクリア】

【戦利品】

・[壊れたラジオ×1]

・[黄泉の銅貨×2]

・[門番の鍵(ボスドロップ)×1]


【ロスト部位の還元処理《レストア》を実行します】

シュウゥゥゥ……!


 俺の左腕を覆っていた「8bitのドット絵質感」が、温かい光と共にサラサラと解けていく。


 指先に感覚が戻り、血が巡る熱さが腕全体へと広がった。


「あ……ッ」


 ドクンッ、と脈打つ重い心拍音。


 肩から先が凍りついていたような感覚が吹き飛び、指先の一本一本に、怒涛のように「血の熱さ」が巡っていく。


 カチ、と親指と人差し指を擦り合わせる。


 皮脂の感触、爪の硬さ、皮膚の体温。

 

 完全にノイズと化して死んでいたはずの左腕が、完璧な生の肉体として蘇っていた。


「動く……! 俺の左腕が、完全に治った……!!」


「陸……! 陸ぅ……っ!!」

 葵が感極まった声を上げ、俺の胸に飛び込んで抱きついてきた。


 ハーブの香りと、彼女の温かい体温が、生き残った実感を俺の脳に叩き込む。


「はは……勝ったぞ、葵。無事に生還だ」


 葵は涙を拭うと、興奮で震える指先でスマホの画面をタップし、スレへと爆速で完勝報告を打ち込んだ。


39:名無しさん@ゲーマー:202X/08/03(月) 19:53:50.00 ID:RikuMKB

 た、倒しました!! ボス撃破です!!

 ドロップ全部拾って玄関から出ました!

 左腕、光が消えて元通りに動いてます!! 治りました!!


40:名無しさん@ゲーマー:202X/08/03(月) 19:54:10.12 ID:x8J9aK10

 うおおおおお!! マジで倒したアアアア!!

 片手持ちでボス撃破して完勝回収とかスレ主凄すぎだろwwww


41:名無しさん@ゲーマー:202X/08/03(月) 19:54:35.88 ID:8bitLove

 てかラジオの1422kHz(ラジオ日本)を即座に特定したアセンブラも変態だし、それを片手で入力したスレ主もヤバすぎだろwwww


42:【解析班】名無しのアセンブラ@ゲーマー:202X/08/03(月) 19:55:00.00 ID:Assembler

 俺は事実を提示しただけだ。遂行したのはスレ主と横の彼女だ。

 ……それより、浮かれるのはまだ早いぞ。

 ボスからドロップした『門番の鍵』の説明文を見ろ。


――


「え……?」


 俺は畳の上に転がっていた、重厚な黒い金属鍵——『門番の鍵』を持ち上げた。

 ブラウン管の画面に、新しいシステムメッセージが浮かび上がる。


【門番の鍵】

[説明:実家地下の『開かずの蔵』を開放する鍵]

[警告:『黄泉』のワールド階層が【深層:第二階層】へ移行しました]

[次回レイド予告:『実家地下・旧家破りの蔵』]


「実家の……地下の蔵……?」


 葵が顔を上げ、俺の顔を見つめる。


 実家の物置の奥にある、明治時代から一度も開けられたことがないという『開かずの蔵』。


 俺は左手を固く握り締め、口元に不敵な笑みを浮かべた。


「葵……次のレイドの準備をするぞ」


 ——第1章【真壁家・八畳間からの脱出】完。


――続く。


――――


【ステータス(レイドリザルト)】

・プレイヤー:真壁 陸

・HP:[頭:100] [胸:100] [右腕:95] [左腕:100(完全還元)] [右脚:100] [左脚:100]

・獲得アイテム:[壊れたラジオ×1] [黄泉の銅貨×2] [門番の鍵×1]

・現在のミッション:【第1章クリア/次回『実家地下・旧家破りの蔵』攻略準備】

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