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14、特殊スキル返却の結果?

 ◆特殊スキル返却の結果



 ── リコたちは、地球への「扉」を開いたが、キョウカがリコを逆に「扉」の外へ落とそうとして、オーデンがお守りとしてリコに渡した「因果応報」の護符と、ツカサの能力で、座標をずらした"扉"の世界へ引き込まれ、元の世界どころか、今の世界からも永久に戻れる方法がなくなり、人間的な知性のある生物が何もいない荒れ果てた荒野みたいな世界に放り出された ──






 その後。


 災害の起きたムーン国から逃亡したキョウカから救けを求められたことで、中断していた奴隷にされた亜人たちを救い出した、リコとツカサ。


 ムーン王国は、衰退の一途をたどっていくことになるだろう。






 一方、周辺国との和平も進み、帝国は活気にあふれていた。


 色々なことが落ち着いたある日。


 リコとツカサは、帝国に逃亡して保護されてから、宰相に用意してもらった木造のこじんまりとした小さな家でくつろいでいた。


 静寂が訪れた夜。


 リコは息を整え、胸の護符に触れた。思い出したように、ツカサと話をした。


「結局、キョウカは……」


 リコは息を整えながらツカサを見た。


「……彼女は、どこに?」


 「「扉」の座標がずれて、別の世界に飛ばされてしまったようだよ……」


 ツカサが静かに言った。


 「う~ん?……おそらく……どうやら人間的な知性を持つ生物がいない、荒れ果てた世界……」


 ツカサの声には深い悲しみがあった。


 「扉を作るための力はもうなくなってしまったから……元の世界にも、この世界にも戻すことができなくなった……彼女の選択の結果だよ……残念なことにね」


「でも……なぜ?」


 リコはツカサの手を握った。


「なぜツカサは最初から正体を教えてくれなかったの?  隠蔽を使ってるせいだと思ってたけど、その実、帝国以外での他の国では、みんなあなたの存在を見ることができなかったってことなのでしょう?」


 ツカサは寂しげに微笑んだ。


 「リコが召喚される前のコンビニの前で私は車で……その後、神様たちに会って転生させてもらったって話はしたよね?」


「ええ。だから、純粋な地球人ではなく、異世界人として転生していたのかと……」


 「それがさ……実はもう……この世の存在ではなくなっているというか……正確に言えば、人間ですらない」


「え?」


 「あの日、ムーン王国でリコたちが召喚される前に、私は既に死んでいて、転生させられて精霊になってたの。この世界に来た時、私は世界樹に選ばれた聖女として転生していた。だけど、マナの少ない帝国以外の他の国では、普通の人間には姿を見せることができなかった。


 リコ、他の国では妖精たちが光の玉にしか見えないでしょ? ムーン王国から脱出する時も、帝国の国境に着いた途端、妖精の姿が見えたのを覚えてる?」


 リコはハッと息をのんだ。


「でも……私は、召喚されたときに、ツカサの声が聞こえた……だけど、それは、言霊を聴ける代理人としてのおかげ?」


 「そう」


 ツカサの目に涙が光った。


 「リコだけが、この異世界に召喚された最初から私の存在を感知できた。あなただけが、私を「見て」くれてた。


 それから多分……おそらく歴代の聖女や賢者と呼ばれた召喚されてきた人たちも、この異世界を統べる妖精王や、精霊たちの言霊を聴き、その対価に能力を借りることができた人達だったのかもしれないね」


「それで……ステータスを改竄してくれたのも?」


 ツカサはうなずいた。


 「時間を止めて、リコのステータスを隠蔽するように助言したのもね。そしてキョウカのことも……彼女が、本当は聖女ではないこともわかっていた」


 リコはすべてを理解した。なぜ周辺国で活動する時だけ、ツカサはわざと隠蔽を使うと言っておきながら……その実は人々には姿を見せることができないとわかってたから? なぜリコだけが、ツカサと会話することができたのか?


 ツカサが私の方に向き直った。彼女の銀髪は微風に揺れ、紅の瞳には穏やかな決意が宿っていた。


 「そして今……」


 ツカサは、帝国の中心部に立つ、遠くに見える世界樹を見上げた。


 《……ああ……どうやら時間切れみたい。私も、そろそろ行く時が来たようだよ》


「え? ツカサ……」


 《私は本来いるべき場所に戻らなければならない。聖樹となったユグドラジルが立つ聖域で、この世界のバランスを保つために》


「待って!」


 リコが叫んだ。


 《私はこの世界の妖精王みたいな存在で、精霊になったといったよね? 普段は森羅万象とともにあり、必要とされる時だけに姿を現せるような存在なんだよ》


 彼女は微笑んだ。


 そうだったんだ……


 実はリコは何となく気付いていた。「返却」のスキルを使った時に。


 借り受けていた聖女の力を全て戻すということの行為に。


 そのために何を戻し、何を失うことになるのかを……


「あなたも去ってしまうの?」


 《リコ、貴方なら、きっと大丈夫だ。立派な聖女の代理人として、この世界で生きていける》


「でも……また会える?」


 ツカサの笑顔が少し寂しげになった。


 《またいつか私を必要とする時が来たらね。それまでは、いるべき場所に戻るよ。


 でも安心して。「扉」は二度と開けられないように、きちんと封印して、作る方法もわからないようにしたし。もう異世界から代償を伴うように誰かを召喚することが出来なくなった。でも代わりに、誰かを帰してあげることもできなくなったけどね……》


 ツカサは優しい笑顔を浮かべた。


 その言葉に、リコはある決意を固めた。彼女は深く息を吸い、ツカサを見つめた。


「うん。それでいいのよ」


 《?》


「私はもう、とっくにこの世界に骨を埋めると決めたんだから」


 リコの目は確信に輝いていた。


「オーデンがいる。この世界で見つけた大切な人が。そして聖女の代理人としての役割もある。まだ苦しんでる亜人たちも大勢救わなきゃいけないのでしょう?


 それに……二度と元の世界に帰れる方法はなくなったけど……ここが私の居場所なんだって、最近特に思えるようになったんだ」


 ツカサの目が大きく見開かれた。そして、彼女の顔に本当の笑顔が広がった。


 《そっかあ……ん~……でもオーデン陛下をあんまり長く待たせるんじゃないよ? あ、でも。私がこの家から去っても、陛下と一緒に暮らすから、さみしくはないか》


 ツカサは揶揄うように笑った。


「ちょっ! なんでオーデンから、引っ越してこないのかって言われたこと、知ってるのよ?」


 《あはは。リコ、真っ赤! 私が読心術使えるのすぐ忘れるんだから。でも使わなくても、最近の二人を見てたら、察せるもんね》


 それから、ツカサはゆっくりと近づき、リコを抱きしめた。


 《では、お別れだね。でもきっとまた会える。ユグドラジルが立つ聖域での、精霊たちの時間は流れが違うから、世界樹の加護があれば、いつか……》


「うん」


 リコも涙を浮かべて微笑んだ。


「ありがとう、ツカサ。すべてをありがとう」


 銀色の光がツカサを包み、彼女の体が透明になっていった。最後に、彼女は言った。


 《幸せにね、リコ。あなたは……私の最高の友人だった。ありがとう。そして、さようなら》


 彼女は沢山の妖精たちに囲まれると……光の中に溶けるように消えていった。光が消え、ツカサの姿は完全に消えた。


 宰相が帝国で用意してくれた木造のこじんまりとした小さな家の庭に、リコ一人が残された。


 帝国の中心に立つ巨大な世界樹、家からは遠いが、ユグドラジルが優しく葉を揺らし、彼女たちの別れを見送っているかのように。






 *****






 ツカサが去ってから数日後。


 リコは少しずつ日常を取り戻していた ──


 小さな家は以前より静かになってしまったが、彼女の心には確かな決意があった。聖女の代理人としての役割、まだ救わなければならない亜人たち、そして ── オーデンとの関係。


 ステータスを確認してみると、ツカサから借りていたような聖女そのものみたいな特殊な治癒力とか、全属性魔法とか、チート級な能力は確かになくなっていた。けれど未だに、「言霊を聴ける代理人」としての能力があるおかげで、妖精達から必要な場合に限り、力や知恵を貸してもらうことはできるようだから。


 リコはツカサが去った翌日、報告の為に、執務の合間でよいから謁見できないかと、陛下に伝言を認めていた。


 そして午後。


 宮廷からセレニウスが訪れた。


「リコ様、陛下がお会いになりたいと仰っています」


 リコは少し緊張しながらも、うなずいた。


 着替えを済ませ、宮殿へ向かう道中、彼女は胸の護符に触れた。オーデンが渡してくれた「因果応報」の護符 ── あの日、キョウカの裏切りから彼女を守ってくれたものだ。


 宮殿の庭園でオーデンは待っていた。赤い髪が風に揺れ、金色の瞳がリコを見つめる。


「来たか、リコ」


「はい、陛下」


 オーデンも、セレニウスも、リコの話を真剣な表情で聞いていた。すべてを話し終えると、オーデンは深くため息をついた。


「キョウカという少女には、可哀想だと言えば嘘になるが……あの者がリコを扉の中に引きずり込もうとした行為には、我も腸が煮えくり返ったのだ。自業自得と言わざるを得ないな」


「ええ。その報告を陛下から聞かされたときには、私も人を見る目がなかったものだと反省しましたよ。


 それにしても、ツカサ様こそが本当の聖女であらせられたとは」


 と、言う割には、セレニウスはしれっと答えた。


「ただ者ではない空気をまとっておったからな。帝国にいる妖精たちも、あの者のそばでは、楽しそうにしておったのにも、今なら頷ける」


 リコもうなずいた。


「そうですね。でもツカサはツカサですから。今でも、彼女は私にとっては普通の友人なんです。


 それと。キョウカが言っていたことは間違っていました。聖女の力は、ただ異世界から来たというだけで引き継げるものじゃない。心と覚悟が必要なんです」


「何度も確認するようですまぬが、本当によかったのか? 帰る方法は二度となくなったのだろう?」


 オーデンが立ち上がり、リコの前に近づくと、彼女の手を取った。


 リコも彼の手を両手で優しく包むと、強く握り返した。


「もう帰る場所はここです。大切な人がいますから」


「そ……そうか。大切な人がおるのか……」


 この時、オーデンは皇帝でありながらも、本当に恋愛には臆病なままのようだ。


 リコの大切な人とは誰なんだ? まさかセレニウスの奴ではあるまいな? それとも職場の人の良い上司か? 相談に来た元奴隷にされていた獣人の誰かか? 聖女として聖域にいるツカサ殿ならましなのだが……


「ん、んんっ! 陛下? なぜ私を睨むのですか? それに、リコ様が困っているようではありませんか」


 セレニウスのその言葉のせいでオーデンは、折角差し出してくれたリコの手のぬくもりを、ゆっくりとひきはがすことになったのだから。


「あっ!……こ……これは……これは違うのだ。すまぬリコ。親しかったツカサ殿が去ってしまったことで、どれほど寂しかろうかと。本当にすまぬ。我にはそういう時の慰め方がわからなんだ」


 焦ったオーデンは、バツが悪そうにさっと離れた。


「リコ様。まあ、そういうことで。


 暫くは外交や亜人の奴隷問題、ムーン王国の災害など、ゆっくり休んでからすすめるのがよろしいでしょう。私はお邪魔のようなので執務に戻りますが、陛下のお茶会には、付き合ってあげてくださいね」


 それからセレニウスは、こっそり囁きの魔法を風の妖精に頼んで使ってきた。


(リコ様。扉が開かれる前も、キョウカ様やツカサ様が消えた後も、リコ様が悲しんでおられるのではと、陛下は食欲が落ち、睡眠もよくとれていないようなのです。よければ、慰めて差し上げてくださいね)


「セレニウス宰相閣下……わかりました」






 *****


orz ツカサの正体は中盤で既に分かっていたと思うけど、あえてね…わかっていても離脱させるとさみしいな…


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