【エピソード 070】 演奏技術と読譜とは、別物だが。根音とベース音の誤解。分数コードの表記あれこれ。
【前書き】
当作品は、楽典をアニメで表現することを目的としています。文字を読んでアニメを想像する手間があります。楽典以外は余談ですので、次々とストーリーが続くジャンルではありません。
なぜ記号だらけの楽譜を見て、音にできるのか?
初心者向け楽譜の謎解きエンターテインメント。
▼ 登場人物
ハル、ミッツ、ステラ、ショージ …… 同じ中学校の生徒。
ヤッ子 …… 理科教師。プライベートでジャズピアノ。
楽譜の読み方「楽典」を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
「一方的に教えるのではなく、疑問に応える」「アニメ表現を利用」です。
オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』から、「余計な物語りは不要、要するに音楽の話だけ」の需要に応えた、楽典に特化したものです。
そのため、ドラマチックな「キャラの魅力」「ラブ要素」「ジョーク」は無くなりました。
唐突に音楽の話になる「教育アニメ(エデュテインメント)」となりましたから、ストーリーには違和感があります。
「再放送や、Blu-rayの、長期的な繰り返し需要の視点から、web小説よりも、アニメで説明したい」という気持ちが強いです。
人間ドラマも含めたもの、アニメ化に向けての自由度(情報の取捨選択、話数変更など)は、オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』を、ご覧願います。
ここでは、人間ドラマなどが無く、音楽の情報だけが、連続している。レトロSFの宇宙食のように、味気の無いものです。
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【エピソード 070】 演奏技術と読譜とは、別物だが。根音とベース音の誤解。分数コードの表記あれこれ。
■ 第12話。
第4話と第5話と第12話では、曲の演奏を行う。他の話は、楽典の説明用のサンプル演奏はするが、曲の演奏は行わない。
放課後。理科室。
ハルがヤッ子に、ギターを聞かせている。自宅から持参したギター。
まだ下手だが、申し訳程度に歌も添えている。コードが変わる時には少し間が開く。右手はほとんど単調だが、楽譜に従うように注意している。
ハル。楽譜集の書籍を机上で開き、見ながら演奏している。ヤッ子はハルの後ろから、斜めに楽譜を見ている。
ハル「どう? 弾けてる?」
ヤッ子「演奏が拙いのは仕方ないが、よく楽譜を読めているな」
ハル「まあ、芸術としては楽譜に逆らってもいいけれど、楽譜がちゃんと読めてるか確認してほしかったんです」
ヤッ子「うん。残念ながら、小学校では楽譜が読めているかの確認に、「演奏できているか」が用いられているようだが、演奏技術と読譜とは、別物だ」背景に「読譜=楽譜を読むこと」を表示。
ハル「そうですよね」
ヤッ子「読譜が不十分でも、試行錯誤で楽器演奏ができれば、それで読譜できたと判断するしかないのも実情だ。学校は忙しいからな」
ハル「楽譜の、音符だけでなく、コードもちゃんとできているでしょ」
ヤッ子「ベース音にも気を付けているんだな」
ハル「父に教わりました。ベース音に何が使われているか。根音なら基本形和音、根音以外の和音構成音なら転回形和音」
ヤッ子「ふむふむ」
ハル「和音構成音以外をベース音に使うこともあれば、ベースがメロディっぽいと、コードネームに表現しないこともある」
ヤッ子「ふむふむ」
ハル「ベース音が根音なら、コードネームは普通の書き方。ベース音が根音以外なら、コードは分数和音になる」
ヤッ子「ふむふむ」
ハル「まあ、こんな感じです」
ヤッ子「素晴らしい。ここまで説明できれば、申し分無い」
ショージが入室。
ミッツとステラ。手を繋いで、恐る恐る、ミッツが先に入って来る。「あのお、お邪魔して良いでしょうか?」
ショージ「で、ギターがあるってことは?」
ヤッ子「演奏は下手だが、楽しさは、しっかり受け取れたぞ」
ショージ「まあ、ハルの場合、ギターは演奏用ではなく、楽譜の謎解きができたかっていう、確認だもんな。思った通りの音が出たら、楽しいだろう?」
ヤッ子「ところで。東海林君は、コードがわかるか?」
ショージ「ちょっとだけですが」
ヤッ子「ちょっとでも、大したもんだ」
ショージ「あれ? この斜めの線は?」
ハル「これはベース音。ベースが、根音以外を鳴らす時、この書き方をします」
ショージ「根音以外? 根音のことを、英語でベース音って言うんだろ? 違ったっけ?」
ハル「え? 根音はコードネームの最初に書かれている単音の名前、ベース音は低音の指定」
ステラ。ハルとショージを交互に見る。
ヤッ子「この話では、早坂君の方が正しい。おそらく、東海林君の読んだ資料が誤りか、資料の文章の一部だけが印象に残ったのだろう」
ステラ。憧れの表情でハルを見る。「早坂さんは、きちんと勉強なさっているんですね」
ヤッ子「それもあるが、東海林君がデタラメなのではないぞ。一時的な勘違いは、勉強に付きものだ」
ヤッ子「東海林君を褒めるべきなのは、自分の知識が誤りかも知れないという意識だ。時には、自分が正しいから、相手が誤りだと決めて話す人もいるからな」
ヤッ子「根音は、英語でルート音だ。数学で、平方根のことを「ルート」と言うだろう」背景に「平方根」と、そのフリガナ。「根音」と、そのフリガナ。両方の「根」に差し棒で「これがルート」と指す。
ヤッ子「最低音は英語でベース音だ」
ショージ「ベースって、基本という意味だから、根音でしょう?」
ヤッ子「これもややこしいから、確認しておこう。「ソプラノ」「アルト」「テノール」「バス」って聞いたことが無いかな?」
ミッツ「あります。合唱の、パート分けですね」
ヤッ子「その通り。低音を担当する「バス」は、楽器のベースギターの「ベース」と同じだ」
ヤッ子。黒板に「ベース」「bass」「低音」と、「ベース」「base」「基礎」を書く。
ハル「ややこしい!」
ヤッ子「だから、ベース音は「低い音(bass)」の意味だ。「基礎の音(base)」「根音(root)」ではないぞ」
ショージ「でも、ベース音は、斜め線じゃなく、「on」って書きませんか?」
ショージ。黒板に表記の違いの「D/A」と「D on A」を上下に並べる。
ヤッ子「どちらの表記もある。更に、こんな書き方もあるぞ」黒板に「D Bass A」と書く。
ヤッ子「斜め線の書き方は、ちょっとした弊害もある」
ヤッ子。黒板に、上段の歌と、下段のギター、2段の楽譜。理科室なので、楽譜は略した書き方。「4/4」拍子。歌はソの付点2分音符と、4分休符。ギターは、前半の2拍はC、後半の2拍はG。コードネームは上段の上に。
ヤッ子「この場合で、コードは、2拍はC、次の2拍がGだとわかる。しかし、もしもギターの楽譜が無くて、歌とコードだけの楽譜なら、どこからGに変わるのか、わからない」黒板の、ギターの分を隠す。
ハル「真ん中に書かれていたら、何となく半分だって、わかりますよね」
ヤッ子「ところが、こう書く楽譜もある」Gの左側にスラッシュを加え、「/G」とする。「これで、小節の真ん中だと表す場合もある」
ショージ「そんなの、見たことが無い」
ヤッ子「ところが、実在するんだ」
ハル「もし、小節の横幅が狭かったら……」
ステラ「小節の半分でコードが変わるのか、ベースの意味なのか、区別ができない……」
ヤッ子。別途の楽譜で、小節の幅が狭いので、「C」「/G」が近付き、「C/G」のように書く。
ヤッ子「そうなんだ、区別できないんだ」
ミッツ「この、斜めの線は、分数の表記を借りているんですよね。だったら、上下に並べたらどうです?」背景に、分数の表現あれこれ。時速の「40km/h」、印刷物のページ「現在ページ番号/総ページ数」、回転数の「3000rpm」なども。
ヤッ子「その通り、良いアイディアだ。「分数和音」といって、上下に書かれているものも実在する」
ヤッ子。黒板に上下の分数の表記も書き加える。これで、黒板には「D on A」「D Bass A」「D/A」「D/Aを上下の分数の形」の4種類が書かれた状態になる。
ヤッ子「上下に書けるなら書いているが、昔の活字の時代、写植の時代、歌詞の上にコードネームを添えるものなどなど、面倒さや、機械の制約や都合などで、様々に表現方法が工夫されて来た」
背景に、コードネーム付きの歌詞など、表記あれこれ。
次回は …… 【エピソード 071】 コードネームの「G/Am」は、アッパー・ストラクチャ。サクランボのような音符。音のモアレ模様で調律と、テルミン。
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