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【エピソード 066】 はっきり転調と、一時転調。『月の光』は、フォルテからデミヌエンドか、ピアニシモからクレシェンドか。最もわかりやすい書籍は? ヤッ子がハルに心配。

【前書き】


当作品は、楽典をアニメで表現することを目的としています。文字を読んでアニメを想像する手間があります。楽典以外は余談ですので、次々とストーリーが続くジャンルではありません。


なぜ記号だらけの楽譜を見て、音にできるのか?

初心者向け楽譜の謎解きエンターテインメント。


▼ 登場人物

ハル、ミッツ、ステラ、ショージ …… 同じ中学校の生徒。

ヤッ子 …… 理科教師。プライベートでジャズピアノ。


楽譜の読み方「楽典」を、アニメ脚本っぽい形で説明します。


「一方的に教えるのではなく、疑問に応える」「アニメ表現を利用」です。




オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』から、「余計な物語りは不要、要するに音楽の話だけ」の需要に応えた、楽典に特化したものです。


そのため、ドラマチックな「キャラの魅力」「ラブ要素」「ジョーク」は無くなりました。


唐突に音楽の話になる「教育アニメ(エデュテインメント)」となりましたから、ストーリーには違和感があります。


「再放送や、Blu-rayの、長期的な繰り返し需要の視点から、web小説よりも、アニメで説明したい」という気持ちが強いです。




人間ドラマも含めたもの、アニメ化に向けての自由度(情報の取捨選択、話数変更など)は、オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』を、ご覧願います。


ここでは、人間ドラマなどが無く、音楽の情報だけが、連続している。レトロSFの宇宙食のように、味気の無いものです。



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【エピソード 066】 はっきり転調と、一時転調。『月の光』は、フォルテからデミヌエンドか、ピアニシモからクレシェンドか。最もわかりやすい書籍は? ヤッ子がハルに心配。


ハル「長調の音階スライドは、ここからここまでの長さ」ピアノの鍵盤の、ドからドまでの1オクターブを、両手の指で幅を表す。


ハル「短調の音階スライドは、ここからここまでの長さ」ピアノの鍵盤の、ラからラまでの1オクターブを、両手の指で幅を表す。


ハル「始まりと終わりの位置が違う……」第4話でショージからもらった、長調の音階スライドと、さっきヤッ子からもらった、短調の音階スライドを少しずらして、重ねて持つ。


ハル「こういうことだっ!」自分の考えを確認するために、2枚のスライドを片手で持ちながら、鍵盤モノサシに合わせる。


ハル「こうして、2枚のスライドを重ね持ったまま、鍵盤モノサシのどこなのかということだ」


ハル「だから、最後の♯に、音階スライドのシを合わせる。最後の♭に、音階スライドのファを合わせる。長調でも短調でも同じ」


ヤッ子「素晴らしい。きちんと説明できたな」


ハル「さっき、ヤッ子先生が言った通り、気付けば当たり前ですね」


ヤッ子「長か短か。名前の由来があるだろう」


ハル「距離が長いか短いかの違いですね」


ヤッ子「鍵盤の上に、これを置いてみよう」手を開くと、ダイヤモンドゲームの駒が出現した。


ハル「ヤッ子先生、手品師?」


ヤッ子。ハルの指摘を無視する。「調号に従って駒を置くと、こうなる。ほら、主音のDから数えて、Fまでは「短い3度」、つまり「短3度」だろう。だから短調だ」


ハル「「長は長だらけ」「短は短だらけ」ですね」


ハル「日本語では、ニの鍵盤で、短和音だから、ニ短調ですね」背景に「調はニ短調」と表示。「キーはDマイナー」と並べることで、漢字とフリガナのように見える。


ハル「主音が同じなのに、短調と長調が変わる……あれ? どこかで聞いたな」


ヤッ子「長調の主要三和音は、全部が長和音。短調の主要三和音は、2つが短和音で、1つが長和音」ダイアトニックコードの楽譜を指す。


ヤッ子「主音から数えて1番目と4番目の和音は、長和音と短和音の違いがある」


ハル「大文字と小文字だ!」


ヤッ子「大文字?」


ハル「済みません、以前、ミッツから聞いたのですが、ローマ数字を使って和音を示す方法があって、主音から数え始めるので、主音が変わると数え直しをするって」


ヤッ子「そう、それが転調だ。調号が変わったり、調号は同じでも長調と短調が変わっても転調だ」


ヤッ子「それにしても、蜜霧君の知識には驚きだな。ローマ数字のことも知っているとはな」


ハル「普段は、どんな生活をしているんだか、謎です」


ヤッ子「あはは、そうだな」


ヤッ子「調号は変わらないで、長調から短調に転調することもある。はっきり転調ではなく、転調したっぽいというのもある」


ヤッ子「こうして、調号を変えて転調することもあれば、ほんの短い部分だけの転調は、調号を変えずに、臨時記号で対応することもある」


ヤッ子「『ハバネラ』は、はっきりと転調だが、一時的な転調の「一時転調」をする曲もある」


ハル「はい」


ヤッ子「臨時記号があれば、必ずしも転調かといえば、そうとは限らないってことだ」


ハル「そりゃそうでしょう。メロディが臨時記号ってことは、よくあるし」


ハル「確かに、音階スライドで選ばれた鍵盤だけを使うから、それ以外の鍵盤なら「スライドがずれる」で転調ですが、時々スライド以外の鍵盤を使う度にスライドがずれたら大変です」


ヤッ子「では、ダイアトニックコード以外の和音が使われていたら? 転調か?」


ハル「コードだったら、転調……かな?」


ヤッ子「これもまた、転調とは限らない。更に言えば、メロディは、必ずしも和音構成音を鳴らす必要も無い」


ハル「とにかく、どっちでもいいってこと?」


ヤッ子「そうなのだ。転調なのかの判断は、時にははっきりわかることもあるし、どっちとも思えることもあるし、どの基準を採用するかで変わることもあるのだよ」


ヤッ子「「ほんの短い転調」や「転調したつもり」というのもある」


ハル「音楽って、厄介だな」


ヤッ子「違うのだ。音楽が厄介なのではなく、様々な解釈があって、どれも否定しないでいたいのだ」


ヤッ子「新たな見方や解釈を発見したことを競うのも面白いが、自分が発見した見方を、相手が見付けていないからといって、相手に対して「君はまだ、この曲を理解していない」というのは、避けたいな」


ハル「つまりは、穏便に、楽しくなるよう、努めようってことですね」


ヤッ子「そういうことなのだよ」


ハル「ヤッ子先生の説明は、「そうとは限らない」とか、「どっちも正しい」が多いですね」


ヤッ子「人との余計なトラブルは避けたいしな。しかし、宇宙人に長調と短調の説明をするように、シンプルな説明をしている時に、「そうとは限らない」なんて言うのは無粋だな」




ミッツが音楽の先生を、強引に連れて来る。『月の光』( )ドビュッシー)の話題。


ミッツ「『月の光』の下行部分は、フォルテからデミヌエンドか、ピアニシモからクレシェンドか、どっちが正しいか、実際に聞いて、感想をお聞きしたいんです」


嬰ハ短調の終わりの、F♯m7の2小節と、続く変ニ長調の始まりまで。


背景に楽語と記号の一覧。不等号記号を横に伸ばしたような、クレシェンドとデミヌエンドの楽譜を、上下に並べる。それぞれ「クレシェンド 段々強くする」などの説明。


文字で書く場合もあるとして、「cresc.」「dim.」など、略記と略さない書き方も併記。デミヌエンドはデクレシェンドとも書く。


音楽の先生「ですから、それはご自由にと」


ミッツ「アナリゼをしたんですが、どうしてもわからなくて」


ステラが入って来る。


ステラ「お邪魔しまーす」


ミッツ「あれ? 吹奏楽部は?」


ステラ「今日は、もう終わりました。『木星』のアナリゼの話だけだったので」


ハル「アナリゼだって? 今、アナリゼの話をしていたんだ。知ってるか?」


ステラ「はい、研究するんでしょ。作曲者が、曲にどんな演奏を求めているか、作曲者の人生や、当時の暮らしを勉強して」


ショージが入って来る。


ショージ「うん、賑やかですね」


ミッツ。該当の箇所の、数小節前から演奏する。


ミッツ「まずはこれ」ピアニシモからクレシェンドで演奏する。ミッツの解釈で演奏。


ミッツ「次はこれ」フォルテからデミヌエンドで演奏する。楽譜に書かれている演奏。


ミッツ「どっちがいい?」


みんなが、それぞれの感想を言う。


ヤッ子「ところで、早坂君」


ハル「はいっ」


ヤッ子「解析や解釈の話題から変わるんだが、実は、君に対する心配が、2つあるんだが」少し、真面目な雰囲気。


ハル「え? はい、何でしょうか」


ヤッ子「ひとつは、君に楽典を勧めたのは私だが、余計なことだったのではないか。もうひとつは、楽典だけでなく、音楽の質問をいくつも受けているが、私の説明で理解できているか」


ハル「いえいえ、楽典の謎解きは楽しいですし、説明もわかりやすくて、助かっています」


ショージ「でも、俺にはなんだか、理屈っぽくて、難しい」


ヤッ子「それは済まなかった。東海林君への説明だったら、もう少し別な言い方だったろうな」


ミッツ「でも、楽典はちゃんとした書籍もあるし、受け取り方の違いは少ないんじゃないでしょうか」


音楽の先生「世の中、様々な解説本があって、しかも、同じジャンルの新たな解説本が出版されています。音楽に限らず」


音楽の先生「もちろん、経済活動として新刊を作るのもあるでしょうが、既存の書籍を読んで「自分なら、これよりもっと、わかりやすいものを書ける」って思うのも、きっかけのひとつと推測します」


ステラ。目からウロコが落ちたように「あ……」


音楽の先生「だから、「最もわかりやすい書籍は?」の問いには、自分には合っていても、他人にも合っているとは限りません」


ハル「そうですよね、僕に楽典を勧めたヤッ子先生」


ヤッ子「そうだったな。市販の楽典は、早坂君には面白くないだろう。そう言った記憶がある」


ミッツ「でも、そろそろ、市販の楽典を読んでもいいんじゃない?」


ヤッ子「それなら、音楽の事典がいいだろう」


次回は …… 【エピソード 067】 コードの「D/A」は、「D」「A」どっちのコードか。根音以外をベース音に。ギターで使わない弦。最も低い音なのに、ベース音にしないのは、ベースのメロディ。



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