【エピソード 060】 台所のコップで、グラスハープ。ト長調の音階が「ド、レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド」ではない理由。ト長調で使っている音と、ト長調の音階の違いは、音階スライド。
【前書き】
当作品は、楽典をアニメで表現することを目的としています。文字を読んでアニメを想像する手間があります。楽典以外は余談ですので、次々とストーリーが続くジャンルではありません。
なぜ記号だらけの楽譜を見て、音にできるのか?
初心者向け楽譜の謎解きエンターテインメント。
▼ 登場人物
ハル、ミッツ、ステラ、ショージ …… 同じ中学校の生徒。
ヤッ子 …… 理科教師。プライベートでジャズピアノ。
楽譜の読み方「楽典」を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
「一方的に教えるのではなく、疑問に応える」「アニメ表現を利用」です。
オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』から、「余計な物語りは不要、要するに音楽の話だけ」の需要に応えた、楽典に特化したものです。
そのため、ドラマチックな「キャラの魅力」「ラブ要素」「ジョーク」は無くなりました。
唐突に音楽の話になる「教育アニメ(エデュテインメント)」となりましたから、ストーリーには違和感があります。
「再放送や、Blu-rayの、長期的な繰り返し需要の視点から、web小説よりも、アニメで説明したい」という気持ちが強いです。
人間ドラマも含めたもの、アニメ化に向けての自由度(情報の取捨選択、話数変更など)は、オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』を、ご覧願います。
ここでは、人間ドラマなどが無く、音楽の情報だけが、連続している。レトロSFの宇宙食のように、味気の無いものです。
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【エピソード 060】 台所のコップで、グラスハープ。ト長調の音階が「ド、レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド」ではない理由。ト長調で使っている音と、ト長調の音階の違いは、音階スライド。
■ 第10話。
▼ OP曲前
OP曲前の定型。他の登場人物は知らない、過去の出来事。
ハル(小学2年生の頃)、ミッツ(小学3年生の頃)。
ハルの一人称は、ミッツに対しては「俺」だが、ここでは小学生時代なので「僕」としておく。
ミッツの家。表札の「蜜霧」。ミッツの顔だけのセリフ「あたしは蜜霧多岐(みつきり・たき)。ハルの従姉だよ」。
台所で並んで、食器を洗っている。従姉弟同士なので、互いの家では、家事を手伝う。
ミッツ「はい、終わり。あたしの仕事は終わったから、あとはヨロシク」
ハル。洗い終わったコップで、グラスハープ。水を入れたタライの上で、コップの縁をこすっている。
ミッツ「ねえ、なあに? 今の音」怪しむ。
ハル「テレビでやってた」
ミッツ「何の音?」台所に近付く。「ああ、コップだ」
ハル「知ってた?」
ミッツ「音が出るのは知ってたけど、こんな風に、ずっと鳴らそうとは思わなかった。ハル、面白いじゃなーい」軽く肘でつつく。
ハル「こうすると、音が変わる」
水を入れたコップを、斜めにする。水を捨てて、タライの水に半分沈める。伏せる向きで沈めて、斜めになって水が入り「コポ」と鳴る。
ハルとミッツ。図らずも面白くて、笑って噴き出す。ミッツが鼻水を手で拭く。
▼ Aパート
校外で、美術の写生。ハルとステラが並んで写生。トロール将軍が見回っている。
二人とも、時間に余裕がある。
ハル「ステラは、転校してから、音楽を始めたんだろ」
ステラ「そう。それまでは、普段の生活に、楽譜なんて使わないし」
ハル「ステラなら、わかるかなあ」
ステラ「何?」
ハル「音楽のテストで、「ト長調の音階を書きなさい」の問題で、「ド、レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド」って書いたら、バツだったんだ」
背景に問題用紙。五線とト音記号。そこに手書きで、♯が1つの調号と、音符は下第1線の「ハ」から、1オクターブ上の第3間の「ハ」まで。手書きがわかるように、鉛筆の先で順番にトントンと叩きながら出現する。
ステラ「あたしはマルだったよ」
ハル「何ぃ、何でだよ」
ステラ「同じ回答じゃないよ。「ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ♯、ソ」って書いたの」ハルと同じ問題用紙。調号はハルと同じ。音符は、第2線の「ト」から、1オクターブ上まで。
ハル「どっちだって、同じだろう」
ステラ「音階は、「どこから始まって、どこで終わる」も一緒に、テスト問題になってるの」
ハル「いや、どこからだって、同じだろう」
ステラ「あたしも、そう思うんだけど、トロンボーン先輩が「とりあえず、そういうもんだ」って言ってた」
▼ 場面変更
放課後。音楽室。
ハルとミッツ。
ハル「音楽のテストで、ト長調の音階で「ド、レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド」って書いたら、バツだったんだ」
ミッツ「当たり前でしょ、ト長調なんだから」
ハル「何が当たり前なんだよ」
ミッツ「音階は、「どこから始まって、どこで終わる」が決まってるんだから」
ハル「とりあえず、そういうもんなのか?」
ミッツ「「音階を答えなさい」って問題でしょ? だったら、音階スライドの、左端から右端までを答えればいいんだよ」
背景で、鍵盤モノサシの上を、音階スライドが左右に移動する。念のため、指し棒で「鍵盤モノサシ」と「音階スライド」も表示する。
ハル「あ、そういうことか」
ミッツ「ト長調の音階で「使われる音は何か」って設問なら、ハルの答えだって正解。でも設問は「音階は何か」だからね」
ミッツ「ピアノの白鍵だけなら、ハ長調でしょ」
ハル「そうだな」
ミッツ「ハ長調の音階は、ドから始まって、ドで終わる」ピアノで、ドからドの1オクターブを弾く。素早く何度も往復。
ミッツ「これが、普通の音階」
ミッツ「これを、白鍵だけのハ長調なのに、例えばミから始まったり、ソから始まったりすると、こうなる」ピアノで、ミからミの1オクターブを弾く。素早く何度も往復。ピアノで、ソからソの1オクターブを弾く。素早く何度も往復。
ミッツ「どう?」
ハル「え? それって、本当にハ長調か?」
ミッツ「ハ長調で使う鍵盤だけ、つまり、白鍵だけだよ。でも、始まりを変えただけで、ハ長調っぽくないでしょ。だから、どこから始まるかってのも答えるのが正解」
ミッツ「第6話での、長調と短調の話で、ヤッ子先生が言ってたよね。教会旋法は白鍵だけだから、ハ長調と同じ鍵盤だけど、主音が違うと印象が変わるって」話しながら、ちょっと憤慨したように、足音を大きくして、書棚に行く。
ミッツ。書棚から、学校に配布される副読本を取り出し、『グリーンスリーブス』のページを開く。
ミッツ「ホラ、この曲は、調号のシに♭がある、ニ短調の曲。だけど、せっかく調号でシに♭を付けたのに、メロディではナチュラルになっている」
ハル「本当だ。だったら、調号に♭なんて、付けなくていいのに」
ミッツ「調号に♭が無ければ、ハ長調と勘違いするでしょ。主音がレ、つまり、音階はレから始まってレで終わる。それを知らせるために、♭があるの」
ハル「そうか。だから、ぱっと見て、すぐに「レが主音」とわかるのか」
ミッツ「でも、ニ短調のように見せて、本当は教会旋法の「ドリア調」だから、ヤッ子先生は、「乱暴な言い方だが」って前置きして、「長調」と「短調」のどちらかに集約って言ったの」
ミッツ「音階は、どこから始まって、どこで終わるかってのが重要。主音から始まって、主音で終わる。ト長調だったら、「ト」が主音だから、「ト」の鍵盤から始まって、「ト」の鍵盤で終わる。わかった?!」
ハル「そういうことかぁ」
ミッツ。ピアノで『月の光』(ドビュッシー)を弾く。
ハル。後ろから楽譜を見ている。「これって、Bさんの声部が、左手から右手に担当が移動するんだろう?」左手の速いアルペジオが始まった箇所を指す。
ミッツ。手を止める。「そういうのって、曲が終わってからにしてくれない?」機嫌が悪くなったミッツが、急にペダルを離した「ガコ」という音があっても良い。
ハル「あ、悪い。気になって」
ハルが楽譜に見入っているのを、ミッツが「仕方ないなぁ」という顔で見ている。
次回は …… 【エピソード 061】 2段の楽譜で、手拍子のタイミング位置が、ずれて書かれている。ポリリズムの種類によっては、2段の楽譜で拍子記号が違う。
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