【エピソード 057】 それを思い出せるのは、ナイスなことだぞ。念のために、余計に臨時記号を書いたり、書かなかったりの、『ワルツ』(作品64-2。ショパン)の例。
【前書き】
当作品は、楽典をアニメで表現することを目的としています。文字を読んでアニメを想像する手間があります。楽典以外は余談ですので、次々とストーリーが続くジャンルではありません。
なぜ記号だらけの楽譜を見て、音にできるのか?
初心者向け楽譜の謎解きエンターテインメント。
▼ 登場人物
ハル、ミッツ、ステラ、ショージ …… 同じ中学校の生徒。
ヤッ子 …… 理科教師。プライベートでジャズピアノ。
楽譜の読み方「楽典」を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
「一方的に教えるのではなく、疑問に応える」「アニメ表現を利用」です。
オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』から、「余計な物語りは不要、要するに音楽の話だけ」の需要に応えた、楽典に特化したものです。
そのため、ドラマチックな「キャラの魅力」「ラブ要素」「ジョーク」は無くなりました。
唐突に音楽の話になる「教育アニメ(エデュテインメント)」となりましたから、ストーリーには違和感があります。
「再放送や、Blu-rayの、長期的な繰り返し需要の視点から、web小説よりも、アニメで説明したい」という気持ちが強いです。
人間ドラマも含めたもの、アニメ化に向けての自由度(情報の取捨選択、話数変更など)は、オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』を、ご覧願います。
ここでは、人間ドラマなどが無く、音楽の情報だけが、連続している。レトロSFの宇宙食のように、味気の無いものです。
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【エピソード 057】 それを思い出せるのは、ナイスなことだぞ。念のために、余計に臨時記号を書いたり、書かなかったりの、『ワルツ』(作品64-2。ショパン)の例。
▼ 場面変更
先生ちゃんの説明が終わり、さっきの続き。
ハル、ミッツ、ヤッ子。
ヤッ子「あ、先生ちゃんの説明は終わったか」本棚から『結婚行進曲』(メンデルスゾーン)を出し、ハルとミッツに見せる。
ミッツ。大声で。「ほら、やっぱり!」ハルを睨む。ヤッ子から楽譜を横取りする。
D7の「♪ドーーレ、ドードー」と、次の小節のGsus4の「(1オクターブ高い)ドーーー、ソー、(元の高さの)ドー」を指す。
ミッツ「ほら、ここは本当は、ソ、シ、レの和音なのに、前の和音のドを引き継いでいるでしょ。しかも、ドからシにならないで、ずっとドのまま」
ハル「それは、もういいよ」
ミッツ「いいってこと、ないでしょ!」
ハル「音楽理論での「禁止」は、「しないことを、強くおすすめ」だから、効果的なら、違反しても、誰も困らない」
ミッツ「それはわかっているけど」
ヤッ子。ミッツを軽く抱き寄せる。「よく見付けたな。和音にも気配りしているんだな」
ミッツ。ヤッ子を見上げる。
ヤッ子「それに、弾いている時には気付いても……」ハルを見て。「……susの話題の時に、それを思い出せるのは、ナイスなことだぞ」
ハル。軽く目を閉じ、あくびするように返事。「はあーい」
ヤッ子。ミッツに微笑む。
ヤッ子。Bメロの7小節目、左手がオクターブユニゾンで、コードが「Dm7、D7」の小節を指す。
ヤッ子「右手のドにシャープがあるが、次はナチュラルが現れたから、シャープの有効は終わり、ここからはナチュラルになる」
ヤッ子「左手は、両方のファにシャープがあり、次のこのファはシャープが有効だが、1オクターブ下のファは初めてなのでシャープを書いている」
ハル「あそうか、付けていないと、ナチュラルのままか」
ヤッ子「そうだ。まあ、言い方の違いだが、ナチュラルのままというより、調号に従ったままの方が、適している」
ハル「「念のための記述」というのは、ありますか?」
ヤッ子。さっきの小節の、7小節後を指す。「このレのナチュラルが、念のためだ。前の小節のレのシャープは、小節が変わったら無効だから、このレは自動的に調号に従ったナチュラルだが、念のために書いている」
ハル「書かなければ、どうなります?」
ヤッ子「書かなくてもナチュラルだ。演奏者が、ちょっと惑うことがあるかもだ」
ヤッ子。C'メロ(右手Bさんが「トーントトントン」の箇所)の「B7」の箇所を指す。「このレのシャープは、直前に右手の段で付いていたが、左手で初めてなので、シャープが付いている」
ハル「これは、必要なんですね」
ヤッ子「実は、意見が分かれている。というのは、大譜表を意味するこのカッコ……」左端の中カッコを指す。「……があれば、1つの楽器を、便宜上2段に分けたものだから、左手のレは初めてではないという考えもある」
ハル「念のため書いておけば、文句は言われないってことですね」
ヤッ子「まあ、そうだな。文句を言われないことも気にするし、読む人の迷いを減らせる気遣いでもある。」
ハル「ダブルフラットは、フラットが2つなのに、ダブルシャープは、シャープとは違う記号ですね」
ヤッ子「誰かが決めたんだろうな。これは、フラットが2つ書かれているというより、フラット2つ並べた、1つの記号だな」
ハル「漢字の「林」は、「木」を2つ並べた1つの漢字ということですね」
ヤッ子「記号の由来を知るのも楽しいが、「誰かが決めて、昔からそうなっている」でも大丈夫なこともある」
ミッツ「あ、思い出した! えーっと、ショパンの……」急に立ち上がり、書棚から楽譜を探す。
ハル「何だ?」
ヤッ子「ショパンも、臨時記号を多用する人だな」
ミッツ。ショパンの楽譜を持って来る。『ワルツ』(作品64-2。ショパン)の楽譜。なお、ここでは登場しないが、作品64-1は『子犬のワルツ』。
ミッツ「さっきは、「フラット2つがくっ付いた、1つの記号」という話でしたが、ナチュラルとシャープがくっついた記号もあるんですか?」
ミッツ。ヤッ子に楽譜を手渡し、4小節目の右手のファに、ナチュラルとシャープが並んでいる箇所を指す。
ハル。覗き込んで。「これって、シャープはソに付くんだろ。よく、こんなことがある」黒板に、ト音記号第3線のシと、第3間のドが1つの棒で共有した音符を書く。シにフラット、ドにシャープを添える。
ミッツ「それは、あたしもよく見るけど、この曲は違う。どっちもファの高さに書いてある」
ミッツ「ほら、シャープの高さは、ファでしょ」
ハル「本当だ。そんなの、ピアノの先生に聞けばいいだろう」
ミッツ「それが……、基本的なことだから、聞きにくくって」
ハル「要するに、弾こうとして諦めたってことだな」
ヤッ子「まあ、そんなこともあるだろう」
ヤッ子「この場合、ナチュラルは「念のため」のものだ」
ミッツ「念のためって?」
ヤッ子「直前のファには、ダブルシャープがあるだろう……」楽譜の図。前の小節の、ファのダブルシャープに矢印。「……そこで、ここは、小節を跨ったから調号に従うのが正しい。本当はただのシャープだ」
ミッツ「シャープでいいんですか?」
ヤッ子「ほら、ややこしいだろう。人によっては、ダブルシャープにシャープを上乗せして、「トリプルシャープ」だと勘違いすることもある」
ハル「トリプルシャープって、あるんですか?」
ヤッ子「あるのか無いのか、私は知らない。まだ見たことが無いだけなのか、存在しないのか」
ミッツ「だから、念のために、前の小節のダブルシャープを取り消すナチュラルと、改めて「ここでは、ただのシャープ」を書いたんですね」
ヤッ子「そうだ……」指で楽譜を辿る。「……あった、ここだ」同じページの、4段目を指す。
ミッツ「これって?」
ヤッ子「クラシック曲では、リピート記号を使わず、同じことを何度も書くことがある。すると、「全く同じなのか」「少しは違うのか」といった、間違い探しをすることがある」
ハル。興味を持って近寄る。「楽譜でも、間違い探しがあるんですか?」
ヤッ子「そうだ。こんな風に……」左右の指で、1回目と2回目を辿る。「……同じ、同じ、ここは、取り消しのナチュラルの有無が違うが、念のための有無だから、演奏は同じ、同じ……という風に、間違い探しをする」
ハル「そんなの、表記が違うだけで、違うところなんて、無いでしょう」
ヤッ子。にやりと笑う。「それが、あるんだな。ここだ。2回目のミには、シャープがあるだろう」
ハル「あ、ほんとだ」
次回は …… 【エピソード 058】 音符の玉は「右上がりと右下がりの2種類限定」「白と黒の2種類限定」ではなかった。音符の玉の、あれこれ。記譜と演奏が違う場合も、普通にある。
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