【エピソード 055】 「ミ♯」と「ファ」の違い。「Csus4」は「ミ♯」ではない。「掛留」「先行音」の再説明。「掛留」なのに独立。『結婚行進曲』は「掛留」が半分の時間以内ではない。
【前書き】
当作品は、楽典をアニメで表現することを目的としています。文字を読んでアニメを想像する手間があります。楽典以外は余談ですので、次々とストーリーが続くジャンルではありません。
なぜ記号だらけの楽譜を見て、音にできるのか?
初心者向け楽譜の謎解きエンターテインメント。
▼ 登場人物
ハル、ミッツ、ステラ、ショージ …… 同じ中学校の生徒。
ヤッ子 …… 理科教師。プライベートでジャズピアノ。
楽譜の読み方「楽典」を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
「一方的に教えるのではなく、疑問に応える」「アニメ表現を利用」です。
オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』から、「余計な物語りは不要、要するに音楽の話だけ」の需要に応えた、楽典に特化したものです。
そのため、ドラマチックな「キャラの魅力」「ラブ要素」「ジョーク」は無くなりました。
唐突に音楽の話になる「教育アニメ(エデュテインメント)」となりましたから、ストーリーには違和感があります。
「再放送や、Blu-rayの、長期的な繰り返し需要の視点から、web小説よりも、アニメで説明したい」という気持ちが強いです。
人間ドラマも含めたもの、アニメ化に向けての自由度(情報の取捨選択、話数変更など)は、オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』を、ご覧願います。
ここでは、人間ドラマなどが無く、音楽の情報だけが、連続している。レトロSFの宇宙食のように、味気の無いものです。
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【エピソード 055】 「ミ♯」と「ファ」の違い。「Csus4」は「ミ♯」ではない。「掛留」「先行音」の再説明。「掛留」なのに独立。『結婚行進曲』は「掛留」が半分の時間以内ではない。
▼ Bパート
放課後。音楽室。
ミッツがピアノの椅子に座っている。ヤッ子はピアノに肘を突いている。ガールズトーク。
ハルが入って来る。「ヤッ子先生」
ヤッ子。今までの話を誤魔化すように、顔の輪郭がコミカル。「ピアノの鍵盤が88なのは、星座が88あるからで……、おや早坂君、どうしたんだい?」
ハル「♯は、高くなるんですか? 低くなるんですか?」
ヤッ子「高くなるんだが」
ハル「じゃあ、この楽譜……」昨夜、自宅で見ていた、クラシックギターの楽譜集を開く。「……ここ、「ミ♯」って、「ファ」は黒鍵じゃないですから、なぜなんだろうって」指してヤッ子に見せる。
ヤッ子「これは、クラシックギターの楽譜だが、早坂君はクラシックギターを弾くのか」
ハル「あ、持っているのはスティール弦ギターですが、クラシックギターの曲も弾きます」
ヤッ子「ほほう。ところで、この音符の話に戻すが、「ミ♯」は「ファ」でいい」
ハル「どういうことです?」
ヤッ子「♯や♭は変位記号、ナチュラルは本位記号といって、ナチュラルは必ず白鍵だ。変位記号は、白鍵であるナチュラルからずれるのだが、ずれた行き先が、必ずしも黒鍵とは限らない」
ハル「なるほど、わかりました。でも、なぜファじゃなくて、わざわざミ♯にしているんですか?」
ヤッ子「これは、コードが「Cの仲間」だからだ。Cの仲間は……」黒板に楽譜。「……このように、ドミソの玉を書いて、それぞれに♯や♭を書くことになっている」
ハル「はい、覚えています」
ヤッ子「では、Cmの「ド、ミ♭、ソ」のうち、「ミ♭」を「レ♯」にしたらどうだろう。Cの仲間ではなくなるな」
ハル「はい、それも覚えています」
ヤッ子。ミの♭を消して。「では蜜霧君、コードのCを弾いてくれないか」
ミッツ。弾く。
ヤッ子「ありがとう。早坂君、今弾いてくれたのがCで、「ド、ミ、ソ」だ」
ヤッ子「では、これの全部に♯を付けてみよう」黒板に、新たに「ド、ミ、ソ」を書き、全部に♯を付ける。
ヤッ子。コード「C」と「C♯」の2つの音符を指しながら。「さっきのコードはC、こっちのコードはC♯だ。蜜霧君、今度はこれを頼む」
ミッツ。弾く。
ハル「あ、全体が高くなった」
ミッツ、コードのCとC♯を、交互に弾く。
ヤッ子「蜜霧君の手を見たまえ、C♯の時は、ファの鍵盤だろう。しかし、音符ではファではなくミ♯を書くことで、Cの仲間になる」
ハル「そういうことか」
ヤッ子「ただし、演奏の都合や、見やすい楽譜の都合で、「ファ」と書いても良いのに「ミ♯」と書くこともあるから、必ずしもこういう理由だとは、思わない方がいいな」
ハル「だったら、ここ」別な曲のページを開く。「この「Csus4」は、Cの仲間なのに、ファです」
ヤッ子「これは、独立したコードではなく、前のコードの音を引き継いでいるのが由来だな。「sus」は維持するの意味だ」
ハル「維持?」
ヤッ子「「タイ」のことは、覚えているか?」
ハル「はい。タイで繋がっていれば、鍵盤を弾き直さず、そのまま音を鳴らし続ける。第8話で、ショージさんが、未練の人や、浮気の人になりました。コードが変わっても、メロディがさっきのコードを維持している」
ハル。ヤッ子の言った「維持」を、自分でも言ったことに驚く。少し大きな声で。「維持、維持する」
ヤッ子「そうだ。まだ、完全に「Cの仲間」にはなっていないから、「ミ♯」ではなくても良い」
ヤッ子「未練の人に譬えたのは「掛留」といって、和音が変わったのに、直前の和音の一部の音が、タイで繋がっていて、まだ鳴り続いていることを表す。浮気の人に譬えたのは「先行音」だ」
「掛留」と「係留」の2つの表記がある。
「先行音」と「先取音」の2つの訳がある。
ハル「和音構成音とは違う……、えっと、和音外音って、クラシック音楽の音楽理論では、違反ではないんですか?」
ヤッ子「意外と思うか?」
ハル「はい。むしろ、コードネームの方が、和音構成音が、ぴったり決まっているようです」
ミッツ「それは、誤解だよ。知らないから誤解することもあるって、第5話で教わったでしょ」
ヤッ子「これ以外にも、和音を自分流に変更したり、普通に使っている手法が、実はクラシックの音楽理論で紹介されていたりする」
ハル「だから、アイディア集なんですね」
ヤッ子「用語や小ネタの名前も、例えば、早坂君が「和音非構成音」と思っていたら、「和音外音」と載っていたりする」
ミッツ「新しいアイディアを思い付いて、ハルが「俺って天才」と思っていたら、既にクラシックの時代から使われていたら、「俺はクラシックの技術を、独自に編み出した」と喜ぶか、「先駆者じゃない」と悔しがるか」
ヤッ子。楽譜を書く。1小節目が全音符の「レ、ファ、ラ」のDm、2小節目が全音符の「ド、ミ、ソ」のCで、音符とコードネームを書く。
その下に、別な楽譜として、1小節目が全音符の「レ、ファ、ラ」のDm、2小節目は、「ド、ミ、ソ」の「ミ」が2分音符で「ファ→ミ」になっていて、ファが前の小節からタイで繋がっている。2小節目には、まだコードネームは書かない。
ヤッ子「ここでコードがCに変わるはずが、途中までファが残っている」
ハル「そういうことって、ありますよね」
ヤッ子「Cの和音構成音は、ドミソだが、前のコードのファが、まだ残っているなら、「Csus4」とする。ファは、前の和音の音だから、Cの仲間とは考えない。Cになるのは、ファがミになってからだな」ここで、コードネームを書く。
ハル「だから、ミじゃなくて、ファであっても、まあ、仕方ないってことですね」
ヤッ子。少し笑いながら「そうだな、仕方ないってことに、しておこう」
ミッツ「由来ってことは、今は意味が変わっているんですか?」
ヤッ子「元々は、直前の和音の一部を引き継いでいるから、独立したコードではなかった。しかし現在では、直前の和音がどうであれ、「この音を鳴らしたい」として独立した使い方がされる」
ミッツ「だったら、維持するって意味の「sus」なんて名前、おかしいでしょ」
ハル「おかしいけど、そういう言葉って、あれこれあるよ。「こんな名前はおかしい」だけど、由来を知って納得って」
ヤッ子「音楽理論の種類によっては、引き継ぐ時間は、半分以内にとされている」
ハル「半分以内って?」
ヤッ子「本来は「C」なのだから、「Csus4」の時間は短くすべきだ。「C」がこの時間なら、「Csus4」は半分の時間以内の、短い間にすべきだということだ」
ヤッ子が両手で幅を表現。その空中に楽譜が出現。「C」の範囲の前半に、「Csus4」が、伸びたり縮んだり。音符の代わりに、ピアノロールのようなリボンが伸縮。
ハル。ヤッ子の両腕の前の楽譜を指す。「もし、「C」が全音符の時間なら、「Csus4」は、長くても2分音符の時間以内にしろってことですね」楽譜に、音符が出現。
ミッツ「え?」
ハル「どうした?」
ミッツ「だって、『結婚行進曲』では、半分どころか、ずっとsus4の部分があるよ」立って、本棚に向かうが、ハルが止める。
ハル「いやいやいや、話が横道に逸れるから、いいよ。今は僕が質問しているんだから」
ミッツ、少し不機嫌な顔。
次回は …… 【エピソード 056】 ダブルシャープとダブルフラットが使われる理由。臨時記号の有効範囲。「全音階的半音」と「半音階的半音」。
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