【エピソード 053】 装飾音符は、こっそりと。前打音の記譜の種類。前打音の「同時」と「先んじて」。
【前書き】
当作品は、楽典をアニメで表現することを目的としています。文字を読んでアニメを想像する手間があります。楽典以外は余談ですので、次々とストーリーが続くジャンルではありません。
なぜ記号だらけの楽譜を見て、音にできるのか?
初心者向け楽譜の謎解きエンターテインメント。
▼ 登場人物
ハル、ミッツ、ステラ、ショージ …… 同じ中学校の生徒。
ヤッ子 …… 理科教師。プライベートでジャズピアノ。
楽譜の読み方「楽典」を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
「一方的に教えるのではなく、疑問に応える」「アニメ表現を利用」です。
オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』から、「余計な物語りは不要、要するに音楽の話だけ」の需要に応えた、楽典に特化したものです。
そのため、ドラマチックな「キャラの魅力」「ラブ要素」「ジョーク」は無くなりました。
唐突に音楽の話になる「教育アニメ(エデュテインメント)」となりましたから、ストーリーには違和感があります。
「再放送や、Blu-rayの、長期的な繰り返し需要の視点から、web小説よりも、アニメで説明したい」という気持ちが強いです。
人間ドラマも含めたもの、アニメ化に向けての自由度(情報の取捨選択、話数変更など)は、オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』を、ご覧願います。
ここでは、人間ドラマなどが無く、音楽の情報だけが、連続している。レトロSFの宇宙食のように、味気の無いものです。
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【エピソード 053】 装飾音符は、こっそりと。前打音の記譜の種類。前打音の「同時」と「先んじて」。
ヤッ子。ミッツに代わって、ピアノの椅子に座る。
ヤッ子「私も挑戦してみるが、私が失敗しても、温かい目で見てくれ」テンポの乱れなく、弾ける。
ヤッ子「これが、装飾音符を無視した場合だ。早坂君、次は装飾音符も含めて演奏するから、今のテンポで、手拍子しながら、各小節の音価が正しいか、確認してくれないか。要するに、拍子が乱れないかってことだ」
ハル「はい」手拍子しながら、ヤッ子の演奏を聞く。
ヤッ子「どうだ? ぴったりだろう」
ハル「はい。綺麗ですし、なんだか誤魔化されているようです」
ヤッ子「ははは。メンデルスゾーンは、喜ぶだろうな」
ヤッ子「装飾音符は、しっかり鳴らすが、音価の足し算には含めない。ということは、どこかの隙間に、そっと潜り込ませるのが、装飾音符だ」
ハル「そっと潜り込ませるって、雰囲気はわかるけど、釈然としない」
ヤッ子。ピアノをミッツに譲り、黒板に大譜表。右手の段は、16分音符2個を符桁で繋げた装飾音符で「ドレ」の次に、4分音符の「ミ」。左手の段は、4分音符の「ド」だけ。
ヤッ子「これを弾いてみるが、弾き方には2種類ある」
ヤッ子「これとこれが同時の場合と」両手の4分音符同士を点線で繋ぎ「a」を添える。
ヤッ子「これとこれが同時の場合だ」右手の装飾音符の先頭から、左手の4分音符を繋ぐ、曲がった点線に「b」を添える。
ヤッ子。「a」を指して「これの場合は、装飾音符は、本当の手拍子よりも、少し早いうちに鳴らす」
ヤッ子。「b」を指して「これの場合は、普通の音符は、本当の手拍子よりも、少し遅く鳴らす」
ヤッ子「左手は、装飾音符が無いから、正しく手拍子のタイミングだ」
ヤッ子「右手は、装飾音符があるから、4分音符を左手と同時にするか、装飾音符を左手と同時にするかだ」
ヤッ子「説明するより、実際に演奏した方が納得できるだろう」手拍子を始める。
ヤッ子。手拍子を続けながら「蜜霧君、捲土重来だ。aを何回か連続して演奏してくれないか」
ミッツ「はい」演奏する。
ヤッ子。手拍子を続けながら「素晴らしい。今度はbを頼む」
ミッツ「はい」演奏する。
ヤッ子「バッチリだ」
ミッツ。aとbを、2回ずつ交互に演奏。「a」演奏。「b」演奏。「a」演奏。「b」演奏。
どちらの演奏をしているのかわかるように、画面の楽譜の白い部分を、aとbを交互に、ぼんやりピンクにする。
または、以下の工夫をする。
工夫の案1:楽譜を移動する縦の赤い線。赤い線が左から出現し、右に移動する。
工夫の案2:打鍵した瞬間、音符が赤くなる。
工夫の案3:太鼓の達人のように、打鍵タイミングが上から鍵盤に向かって来る(振り降りる)。打鍵タイミングが向かって来る時、指し棒も一緒に動いて「同時」「少し早い」「少し遅い」の図示。
工夫の案4:ピアノロールの長方形を用いる。手拍子の時刻の線も添える。
工夫の案5:ピアノロールの長方形を表示するだけで、演奏に合わせて色が流れる変更はしない。「a」と「b」のピアノロールを上下に並べ、少し離して下に左手のピアノロールを表示。「a」と「b」のどちらを弾いているかだけ、色変わりで知らせる。
ミッツが、4回ずつ、交互に演奏する。ハルの顔が、どんどん晴れやかになる。
ハル「わかりました!」
ハル「本当なら、同時に鳴る音符は、縦を揃えるんですが、今は説明のために、「b」はずれた位置にしているんですね」
ヤッ子「ああ、そうか。そういった解釈もあるのか」
ハル「はい」
ヤッ子「早坂君は、「b」の楽譜は、こう書くのが正しいと考えているのだろう?」改めて、似た楽譜を書く。右手の装飾音符の「ド」と、左手の音符の、縦が揃っている。
ハル「そうです」
ヤッ子「確かに、このように書けば、「a」と「b」の、どちらの演奏をすべきか、明示できるな。しかし、小玉は楽譜上でも、そっと忍び込ませるんだ」
ショージ「つまり、棒が短く、玉が小さいのは、ものの数に入らないってことだ」
ヤッ子「こんな、ほんのちょっとの装飾音符でも、あるか無いかで、随分と雰囲気が違うもんだ。例えば、この曲はどうだ?」スマホを出して、曲を鳴らす。
鳴らす曲は、当アニメのBGM。装飾音符の多い曲。
ヤッ子「聞いたことがあるだろう?」
ショージ「どこで聞いたか覚えていませんが、凄く馴染みがあります」背景に「当アニメのBGMです」を表示する。
ヤッ子「これの装飾音符を無視したら、こうなる」スマホで鳴らす。背景に楽譜。差し棒で「この装飾音符を無視すると、こうなる」と示す。
ハル「聞き比べて、初めて気付きます。装飾音符が、いい感じですね」
ヤッ子「ついでに言うと、装飾音符には、棒をカットするような線が、あったり無かったりする」
ヤッ子「カットするような線があると、短前打音で「とにかく素早く」の意味。線が無ければ、長前打音で、装飾音符なのに「この音符の音価を使え」の意味」背景に「短前打音」と「長前打音」と、そのフリガナ。
ハル「なんでー?」
ヤッ子「などとなっているが、どっちの書き方でも短前打音を意味することもある」
ハル「これも、曖昧なんですか」
ヤッ子「言葉と似ているかな。時の流れと共に、言葉の使われ方が変わって、それが通用するようになると、辞書にも新しい意味と、元々の意味の、両方が載るようになったり。同じ辞書でも、版によって内容が変わることは、珍しくない」
ステラ「それで、さっきは、カットするような線が無くても、短前打音にしたんですね」
ヤッ子「そうだ。しかし、元々の意味も一緒に教えたから、私がデタラメを教えたとは思うなよ」
ステラ「ところで、aとbの、どっちが正しいんですか?」
ハル「そう、教えてください。演奏の違いがわかって、嬉しいんですから」
ハルとステラが、揃って晴れやかな笑顔。
ヤッ子。同じく、晴れやかな笑顔で応える。「どっちでもいい」
ハル。晴れやかな笑顔が、残念そうに固まる。「どっちでもいいって、ちゃんと教えてください」
ヤッ子「だから、決まっていないんだ。『春の歌』ではaで弾く。ショパンの曲は研究結果としてbだという話があるが、プロの演奏を聞くと、ショパンの曲でも、aの演奏もある」
ヤッ子「要するに、決まっていない。芸術であるから「正しい」「誤り」ではなく、どっちが面白いかだ」
ハル「じゃあ、『月の光』の2連符も、誤りではないんですか?」背景に、『月の光』の2連符の部分。
ヤッ子「ああ、あれか。はっきりした答えを知りたいか?」
ハル「はい! 知りたいです」
ヤッ子「よし、はっきり言おう。「わからない」だ」
ハル「そりゃ、逃げっていうことでしょう」
ヤッ子「責任逃れと思うこともあろうが、私が連符を決めたのではない。誰かが決めたのだ。だから、いくつかの資料を比較することと、それを紹介する以上に、できることはない」
ヤッ子「そもそも、専門家でも意見が分かれているんだ。私が決着を付けられるわけがない」
次回は …… 【エピソード 054】 なぜ赤いサスペンダーは、コードの「sus」の伏線。「小節線」か「縦線」か。ハルが自宅で、2種類の「×(バツ)」と、「ミ♯」で悩む。
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