【エピソード 042】 テレビのスタジオ収録(3)ピアノの指番号は従うべきか。薬指の長さと、猫の肉球。ショパンの『英雄ポロネーズ』には、32分休符。
【前書き】
なぜ記号だらけの楽譜を見て、音にできるのか?
初心者向け楽譜の謎解きエンターテインメント。
▼ 登場人物
ハル、ミッツ、ステラ、ショージ …… 同じ中学校の生徒。
ヤッ子 …… 理科教師。プライベートでジャズピアノ。
楽譜の読み方「楽典」を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
「一方的に教えるのではなく、疑問に応える」「アニメ表現を利用」です。
オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』から、「余計な物語りは不要、要するに音楽の話だけ」の需要に応えた、楽典に特化したものです。
そのため、ドラマチックな「キャラの魅力」「ラブ要素」「ジョーク」は無くなりました。
唐突に音楽の話になる「教育アニメ(エデュテインメント)」となりましたから、ストーリーには違和感があります。
「再放送や、Blu-rayの、長期的な繰り返し需要の視点から、web小説よりも、アニメで説明したい」という気持ちが強いです。
人間ドラマも含めたもの、アニメ化に向けての自由度(情報の取捨選択、話数変更など)は、オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』を、ご覧願います。
ここでは、人間ドラマなどが無く、音楽の情報だけが、連続している。レトロSFの宇宙食のように、味気の無いものです。
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【エピソード 042】 テレビのスタジオ収録(3)ピアノの指番号は従うべきか。薬指の長さと、猫の肉球。ショパンの『英雄ポロネーズ』には、32分休符。
▼ 場面変更
司会(音楽の先生)「「ピアノの楽譜に、指番号がありますが、従わなければいけませんか?」というご質問です。ピアノといえば、蜜霧さん、お願いします」
ミッツ「はい」すごく緊張している。テレビカメラを見て良いのか、司会者を見れば良いのか、迷っている。
ミッツ「えーっと、指番号は、絶対ではありません。けれど、その指遣いを推奨するには、それなりの根拠があると思います。えーっと、ですから、書いてある指番号を、試してみましょう」
司会(音楽の先生)「指番号が、絶対ではないというのは?」
ミッツ「人それぞれの癖? があります。あ、モチロン、それが「悪い癖」かも知れません」
ハル。横から口を挟む。「テレビでみんなが見てるぞ」
ミッツ「うっるさいなあ」ハルをピコピコハンマーで叩くと、想像を絶する間抜けな効果音。
ミッツ「指遣いではなく、姿勢が、例えば手首の高さや、肘の広げ方にも、理由があると思います」
ミッツ「書いてある指番号で弾くと、最初は弾きにくいと感じても、やがては、やりやすくなることもあります」
司会(音楽の先生)「なるほど。楽譜に書かれている指遣いが、自分にとっては、やりにくいと思っても、姿勢を変えれば、やりやすくなることも、あり得るのですね」
ミッツ「そうです。椅子の高さなど、一般的な「正しい」という姿勢には、幅があってもいいんじゃないかなと思います」
ミッツ「多くの研究者の多数決で、指遣いの「正しさ」が決定するにしても、少数派を「誤った人」とするのは、言い過ぎだと思います。楽しく弾くのが大切ですし、指遣いの違いは、弾いている時の手を見られなければ、気付かれません」
司会(音楽の先生)「少数派ではないのに、独自の指遣いをするのは、悪いことではないのですね」
ミッツ「そうです。譬えれば、蕎麦は箸で食べるのが「正しい」としても、フォークを使っても、蕎麦を蔑ろにはしていません」
ミッツ「外国人や、指の動きが少数派の人だけが、フォークを使う資格があるっていうのとは、違うと思います、あ、いえ、それと同じです、あ、資格が無いってのは、違って、あ、いえ、……」
司会(音楽の先生)。ミッツの混乱を鎮めるように。「指に着目すると、薬指の長さが違うのですね」背景に、手の指の長さが違う例。
ミッツ「あ、そうです……」小声で「すみません」バツが悪そうに、頭を下げながら、顎を前に出す。
ミッツ「薬指が、薬指の長さが、人によって違うので、えっと、です」
司会(音楽の先生)「はい、ありがとうございます」
回答者の何人かは、自分の手を見る。
何人かの手のひらが、順番にアップ。ここでは、実写(本物の人間の手)が良さそう。ただし、指紋の公表が犯罪に使用される話もあるので、指紋や血管には注意する。
幾人かの手が表示され、なぜか猫の肉球。サン=サーンスが猫を抱いている。
司会(音楽の先生)「サン=サーンスさん、その猫は?」
サン=サーンス「誰にも知られていないが、私は猫が好きなんだ」肉球をプニプニする。頬を赤らめる。色っぽい吐息。
司会(音楽の先生)「サン=サーンスさんの有名な曲に、『動物の謝肉祭』がありますが、猫は登場しませんね。なぜ、お好きな猫を入れなかったのですか?」
サン=サーンス「猫が好きと言っても、猫の肉は食べない。だから『謝肉祭』には入れなかった」
司会(音楽の先生)「なるほど。ということは、『動物の謝肉祭』に登場する動物は、食べるんですね?」
サン=サーンス「食べるとは限らない。感謝するのだ」
▼ 場面変更
司会(音楽の先生)「「休符って、大切なんですか?」というご質問です」
司会(音楽の先生)「クラシック音楽の生徒は、「無駄な音符は、一つも無い」と教わることも多いですが、休符の重要性を教わることは少ないと、僕は個人的に思います」
メンデルスゾーン。挙手する。
司会(音楽の先生)「手が挙がりました。メンデルスゾーンさん、お願いします」
メンデルスゾーン「休符の有用性の説明には、「休憩も必要だ」「音が鳴り続けるとうるさい」がありますが、積極的に休符が用いられることもある」
司会(音楽の先生)「例をお願いします」
メンデルスゾーン「ロックだけでなく、「ブレイク」といって、意図的に無音の時間を設けることがあります」ブレイクの演奏例。または、シンバルを、叩いてつまんでを繰り返して、「鳴る」「止まる」の繰り返し。
メンデルスゾーン「『鳩』という歌は、「♪ぽっぽっぽっ」と、休符を含めて歌い始めますが、これを、休符を無くして「♪ぽーぽーぽー」にすると、鳩っぽくありません」
メンデルスゾーン「ブレイクという程ではありませんが、私の作曲した『結婚行進曲』も、重要な休符があります」
演奏例2つ。『結婚行進曲』のイントロ3小節。楽譜の五線内が、演奏に従って色が変わる。4分休符が明確な演奏と、不明確な演奏を、交互に何度か演奏。
司会(音楽の先生)「なるほど。雰囲気の違いがわかりますね」
メンデルスゾーン「素晴らしいピアノ曲で知られている、我が友人のショパンの例では、『英雄ポロネーズ』があります」楽譜。『英雄ポロネーズ』の、2回目のAメロの2小節目32分休符。
メンデルスゾーン「ここに、32分休符があります。こんな短い時間ですが、重要です」
メンデルスゾーン「前の小節から歌うと、休符が無ければ、なだらかな起伏のある地面の上を「♪タリラーラターラーラー」と滑ります」
メンデルスゾーン「休符があると、ウキウキした気持ちで宙に浮く「♪タリラッタターラーラー」で、地面から自由になります」
雰囲気を表すために、スケートボードが起伏を、飛ばずに進む、一瞬だけ飛ぶの2種類を表示。スケートボード以外にも、何かあれば良い。バレリーナが回転する、回転しながらちょっと飛ぶなど。
メンデルスゾーン「左手は音が鳴っているのに、右手は一瞬だけ休符です。または、左手はスタッカートですが、右手が休符なのは変わりません」演奏例。休符の有無を、交互に数回。
メンデルスゾーン「音楽では、「無駄な音符は、一つも無い」ばかりではなく、ショパン君の曲には、「無駄な休符は、一つも無い」と言えます」
司会(音楽の先生)「ありがとうございます」
司会(音楽の先生)「ところで蜜霧さん。本編では『結婚行進曲』をお弾きになる予定ですが、練習はできていますか?」
ミッツ「はい、できています。「久し振りだから失敗する」の練習もしています」
次回は …… 【エピソード 043】 テレビのスタジオ収録(4)「bis」は、リピート記号のネスト回避。終止線が無いと、永久に終わらないのか。「Fine.」は晴れではない。
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