【エピソード 010】 音符とは無関係な場所にある調号が気になる。臨時記号の有効範囲は、そのうちに。ナチュラルは必ず白鍵。「半音」は距離ということ。
【前書き】
なぜ記号だらけの楽譜を見て、音にできるのか?
初心者向け楽譜の謎解きエンターテインメント。
▼ 登場人物
ハル、ミッツ、ステラ、ショージ …… 同じ中学校の生徒。
ヤッ子 …… 理科教師。プライベートでジャズピアノ。
楽譜の読み方「楽典」を、アニメ脚本っぽい形で説明します。
「一方的に教えるのではなく、疑問に応える」「アニメ表現を利用」です。
オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』から、「余計な物語りは不要、要するに音楽の話だけ」の需要に応えた、楽典に特化したものです。
そのため、ドラマチックな「キャラの魅力」「ラブ要素」「ジョーク」は無くなりました。
唐突に音楽の話になる「教育アニメ(エデュテインメント)」となりましたから、ストーリーには違和感があります。
「再放送や、Blu-rayの、長期的な繰り返し需要の視点から、web小説よりも、アニメで説明したい」という気持ちが強いです。
人間ドラマも含めたもの、アニメ化に向けての自由度(情報の取捨選択、話数変更など)は、オリジナル『ガクテン』または『ガクテン♪ソフト版』を、ご覧願います。
ここでは、人間ドラマなどが無く、音楽の情報だけが、連続している。レトロSFの宇宙食のように、味気の無いものです。
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【エピソード 010】 音符とは無関係な場所にある調号が気になる。臨時記号の有効範囲は、そのうちに。ナチュラルは必ず白鍵。「半音」は距離ということ。
▼ 場面変更
音楽室。
ハルとミッツが、ハルの教室から移動して来た。
黒板には、音符の音価を示す長方形と、『メヌエット ト長調』(バッハ)の2小節が、既に再現されている。
ミッツ。『メヌエット ト長調』の下に並べて、手拍子用の、4分音符だけの楽譜を書く。
ミッツ。2小節を、軽く歌う。
ミッツ「曲は知ってるでしょ」
ハル「うん、知ってる。だけど、それ……」調号の♯を指す。「……これって、何だっけ?」
ミッツ「ああ、シャープっていうの。半音高くって意味」
ハル「それが、よくわからないんだよ。シャープやフラットって、音符のためのものだろう。どうして、音符とは関係無い場所に、書いてあるんだ? そんな所に書いてあると、音符とは別な意味なのかと思った」
ミッツ「うーん、仕方ないなあ。じゃあ、横道に逸れるけど、シャープの仲間の話をしよう」
ハル「お願いします」
ミッツ「まず、普通の音符は、ピアノの白鍵を弾く。これはわかるでしょ?」
ハル「うん、わかる」
ミッツ「普通だったら白鍵だけど、じゃあ、黒鍵を弾く時はどうするか。そのために、シャープやフラットを使う」
ミッツ「まずはシャープ。これは半音高く」
ハル「半音って?」
ミッツ「隣の鍵盤ってこと。白でも黒でも平等に、隣の鍵盤。ギターで言えば、隣のフレットのこと」
背景に、ギターの演奏者の視点から、ギターを見下ろす。フレットが一斉に赤く点滅。ギターを見下ろしているのがわかるように、ギターのボディの半分から、糸巻き部分までが画面の中。演奏しない左手の指も表示しておく。
ハル「ああー、あれか」納得する。立ち上がって、ピアノの鍵盤の蓋を開ける。
ハル。第1話と同様に、紙を出して、ピアノの鍵盤の、手前側の、白鍵だけの部分を隠す。鍵盤の奥の、白鍵と黒鍵が縞模様のように見える。
ハル「鍵盤では、白と黒になっているけど、白と黒を平等に扱って、隣の鍵盤が半音か」
ハル「理屈としては、「半音上げて、半音上げて」は、「シャープにして、シャープにして」と、同じことだな」
ミッツ「それは、言い方がおかしい」
ハル「楽典としての表現方法の正しさではなく、理屈として……理屈が正しいかってことだ。理屈は、合っているよな」
ミッツ「そう、正しい」
ハル「この理屈から、楽典での正しい言い方を、理解するんだから」
背景に、カラオケの操作で「♯」「♭」のボタンのうち、「♯」を何度も押す様子を表示する。押す度に、「♯」の吹き出しが増える。
字幕で「二人共、中学生なので、カラオケの操作のことを、思い付いていません」を表示する。
ハル「あれ? 「半音」って、距離か? 半音が1つ分、2つ分、3つ分って」
ミッツ「そう。ドとレの距離が全音。その半分の距離だから半音。ドの全音高いのはレ。ドの半音高いのはド♯」黒板に、鍵盤の「ド」「ド♯」「レ」だけの簡単な鍵盤を書く。
ハル「鍵盤の白と黒を平等に扱うってことは、色の違いを無視するってことか? だったら、要するに、2つ分の距離が全音、1つ分の距離が半音か」
ミッツ「ザッツ・ライト(その通り)。白とか黒とか、♯とか♭とかナチュラルとか、そんなことは無視して、全音か半音かってこと」
ハル「わかった」
ミッツ。ちょっと考える。背景に「半音階的半音」「全音階的半音」の文字が浮かぶ。
ハル「わかったから、話を続けてくれ」
ミッツ。背景の文字「半音階的半音」「全音階的半音」が、ぼんやりと消える。
ミッツ。心の声。「(まあ、これは、そのうちでいいか)」字幕で、「この話は、第9話で説明されます」が表示される。ここの主題の「音符の音価」「拍子記号」から外れるため、気になった箇所は予告程度にしておく。
ミッツ「シャープは半音高くだよね。次にフラット。これは半音低く」
ハル「フラットが低いのか」
ミッツ「レの半音低いのは、レ♭」黒板のド♯の鍵盤に、「レ♭」も書く。
ハル「あれ? その鍵盤はド♯じゃないのか?」
ミッツ「そうなんだけど、レ♭でもある。黒鍵は、2つの白鍵に挟まれているから、このように2つの名前がある」
ハル「ほほう」
ミッツ「では、シャープやフラットで黒鍵を指示した後、また白鍵を弾くように指示するには、どうするか」
ハル「何も書かなければいいだろう?」
ミッツ「そうじゃないんだな。というのは、例えばドに♯を付けたら、しばらくは♯を付けたままでいたいこともある」黒板に、ドの音符を4つ続ける。最初の2つのドに♯が付いている。
ミッツ「ハルが言いたいのは、こういうことでしょ。これとこれは黒鍵で、これとこれは白鍵だって」
ハル「そう。それでいいだろう」
ミッツ「それでもいいんだけど、楽典では、こうしても4つのドはシャープで黒鍵の指示になる」2番目の♯を消す。
ハル「どうしてなんだよ。それじゃあ、不便だろう」
ミッツ「あたしに言わないでよ。これは決めの問題だから、そう決まっているのっ!」
ハル「♯とかは、俺は「これを変える」だと思っていたが、「ここから変える」なんだな」
ミッツ「そう! まあ、音符に付く♯や♭は「臨時記号」で、有効範囲は、あれこれの理由がある。今の本題ではないから、詳しくは、そのうちに教える」
ハル「うん、そうなのか。で、何の話だっけ?」
ミッツ「もう、話の横道から、また横道に逸れるから、わからなくなんのよ……」黒板を見て、ミッツも何の話だったか思い出す。「……♯で黒鍵にしたのを、また白鍵に戻す方法でしょ」
ハル「そうだった」
ミッツ「白鍵に戻すには、ナチュラルを書く」黒板の、3番目のドにナチュラルを付ける。
ミッツ「こうすると……」音符を、1つずつ指しながら。「……シャープの黒鍵、シャープの黒鍵、ナチュラルの白鍵、ナチュラルの白鍵。ということ」
ミッツが、4つの音符を、1つずつ指すのに合わせて、吹き出しで文字が「♯の黒鍵」「♯の黒鍵のまま」「ナチュラルで白鍵」「ナチュラルの白鍵のまま」がポヨンと表示される。
ハル「なるほど。何かが付いたら、それを続ける。次に何かが付いたら、またそれを続けるってことか」
ミッツ「そう! 因みに、♯と♭は、白鍵から黒鍵に変えるから「変位記号」と呼ぶ。ナチュラルは「本位記号」と呼ぶ。ナチュラルは必ず白鍵だよ」
ハルは、ミッツのこの言葉から、「♯や♭は、必ず黒鍵」と誤解して、第9話で混乱する。
ハル「わかった。でも、フラットとシャープの、どっちが上がるのか下がるのか、間違えやすいな」
ミッツ「それくらい、暗記しなさい」
ハル「そう言われてもな。まだ楽典が身に付いていないから……」
ミッツ。心の声。「(これくらい、覚えられないのかな? みんなそうなのかなぁ)」
ハル「よし、♭は下向きの矢印に似ているって覚えよう。♯は矢印っぽくないけど、♭の反対だ。こじつけだけど」背景に、「♭」と「↓(下向き矢印)」を重ねて、似ている表示。
ミッツ「もう、好きなようにしてよ」
ハル「でも、シャープとかは、音符に付くんだろ? それって、音符とはずいぶんと離れているな」着席したまま、黒板の調号の♯を指す。
ハル「それのことが知りたいんだ」
ミッツ「これは調号。「全部の音符に付ける」って意味」
次回は …… 【エピソード 011】 調号は、倍音の「2倍の2倍の……」で同名という強い絆。五線の左端が繋がっていれば、同時に演奏。4分音符と手拍子のチャンス。符桁は、旗の本数、休符の出っ張りと同じ。
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