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第82話 精神と心

 思った以上に大変な事になっていた。まさかこんな状態になってしまったとは思ってもなく、余りにも軽く考え過ぎていた。


 心の端っこにずっと引掛ってはいた。ただ、まだ大丈夫だろうと結論を後回しにしていた。実際表面上は上手く取り繕っていたつもりだ。ここまでこれと言って何欠ける事も無く行程を進んで来れた。



 ……冗談じゃない。俺達はこれから組織から標的にされるかもしれないし、国からの指令もこなさなけりゃならない。なのに、下手したら最悪の時が刻一刻と近付いているのを分かっているのにどうする事も出来ないでいた。


 一般常識とかけ離れた力に慣れ過ぎていたのだろう。俺は飛び抜けた能力も秘めた力もない小さな存在なんだよ。信じられない才能を持つ奴らに囲まれて気が大きくなっていた。仲間と言う括りの中で深く認識し合わなければならなかった事の筈だ。





 最終的には上手く行く。





 そんな風に勝手に思っていた。







 そう………手持ちの金が底をついたのだ。






 マジで破産です。一大事です。





 俺は街に戻ってすぐ手続きに向かって一生懸命説明をしたんだけど………


 証拠不十分で報酬が5分の1だって。

 支払い待って貰ってた所の分は………それじゃ足りないってさ。



 で、結局………国の研究費………使い込んじゃった。




 横領ってヤツだよな。





「悪い、マグ。国相手に立場ない状況に巻き込んじゃって………」

 王国に任命されたと言っても、マグ自体は俺達のお目付け役を兼任しているのだろう。下手に実力だけが飛び抜けてる奴らに国内で勝手に暴れられる事を危惧されたんだろうな。


 「ふふ、構わないよ。アルは気苦労が絶えないからね。自分も罪だろうが罰だろうが一緒に受けるから皆で今後の対策を考えなきゃね。」

 今は2人だけで会話をしているので、素(?)のマグの口調になってる。精神のまた新しいステージに到達してしまった様だ。

 あの時話して分かっていたのだが、面倒臭い状態だよな全く。ちょっと思い出して復習しておかないとな………






 ………「戻った」という俺の質問にマグは明白な反応を示した。諦めた様な、それでいてホッとした表情で話始めた。


「まあね、何時からってハッキリした感じじゃ無いんだよね。でも、今までも人が入れ替わるって感じではないんだよ。意識の根本ではずっと変わってはいない。強いて言うならアルコールで酔いが回ってる感じかな?気が大きくなったり、主張が強くなったりね。」

 うーん、よく分からんが多重人格の類では無い様だな。マグのその時に一番強い我が表面に出てただけの事らしい。


「まあ、なんだ。どんな時でも本質は変わらないって事かな?マグはマグだからそこいらはいいとして……痛みだよ痛み!感覚がわかるってダメージもあるってことか?怪我とかはするのか?どうなんだ?」

 これ以上ディッドに殴られて気付いたら天に召されるなんて洒落にならない。身内で大事件とか勘弁して欲しいよ。


 不安に押し潰されそうになりながらも大事な所はしっかり押さえなければならない。戦闘での注意点が増える事には変わらない様だしな。


 マグの様子を再度じっくりと確認をする。まあ、見た目で判断はしようがないの分かっているのだけどな。

 ふとマグの顔に目をやった。何故かキョトンとした顔をしたかと思ったら、俯きかげんになり体が細かく震え始めた。


「どうした!?他にも体で異常な所があるのか!!隠さず全部吐き出せよ!」

 せめて俺だけは全て知っておかなければディッドから守ってやる事ができないからな。変な気は使うんじゃないぞ、どうせ芯は変態なんだから。


「いや………自分は態度がガラッと変わっていただろ……、嫌だったんじゃないか?ディッド君とは喧嘩になるし、ラック君には上から指示を出したり………でも、今の自分でもその内心の感覚に違和感はないんだ。本当の自分の本心で間違いないんだよ………だから……皆とは……」

 なんかウジウジし出したな。話が長くなりそうだからとっとと切り上げようと思う。


「はぁ?別にどうでもいいよそんな事。マグは籠って研究ばっかしてただろうからあんまり分からないんだろうな。俺だってディッドがギャンブルで負けた時はガンガン責め立てたり、あいつが逆ギレしそうになったら手の平返して機嫌取ったりしてるだろ?それと大して変わんないよ。」

 ディッドの事考えたらマジで腹立ってきた。今は関係無い、考えるな。


「大体、ディッドは嫌な相手とは絶対同行しないしな。ラッキーは隠し事できないから嫌なら直ぐに分かるだろ。初めて顔合わした時のマグならそんな事気にしなかっただろ?変に考え込むなよ、らしくないんだよ。」


「ああ……うん……」

 納得いってないのか歯切れの悪い反応を返してくる。

 そんな事はもうどうでもいいから身体の変化を把握しなければならない。覚悟しろよ。






 この後、叩いたり抓ったり火ぃ付けたりと、傍から観ると拷問してるような事を繰り返し行なっていた。どうだ、実験される感覚は?少しは被験体の気持ちが分かったか?などと考えながら時間は過ぎていった。






 そういやその間マグはソワソワモゾモゾとしていたな。

 なんだ、気持ち悪い。普通にしてろよ。







 でも変態だからな、普通っちゃ普通か。

 




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