第81話 情報
重すぎんだろ、この肉団子。
「取り敢えずテントの中に転がしておけばいいだろ。どうせ起きたら完全復活するだろうし、暴れられなかったフラストレーションでムキョムキョすんだろうしな。」
ったく、幽霊如きで気を失ってんじゃねえよ、デカブツのクセに。
今回分かったのはデカブツはやはり後衛に徹して貰わなければならないという事だろう。戦闘不能に陥ったら運び出すのも大仕事になっちまう。そういう意味では不本意だが、守ってやらないといけない存在なんだな。
「おい、ディッド。幽霊倒すの俺の剣でもできたんじゃないのか?今後の為に試しておいた方が良かった気がするんだけど?」
いや、俺は全く戦う気は無いんだけどな。一応この剣のできる事は把握しておいた方がいざという時には、と思ってしまった。
「へ〜。アル結構やる気満々じゃん。それ使いこなしたらちょっと一回本気で勝負してみない?」
ふざけんな、万が一の時にはお前に持たせて難を逃れる為にだ……っと、下手に口にすると物凄く殺気を込めた拒絶をしてくるので黙っている事にする。
「幽霊の駆除の仕方でコッチが嘘つき呼ばわりされそうだったからね。ちゃんとやっつけられるトコ見せとかないと、後でやいのやいの言われた時、思わず殺す気でぶっ飛ばしちゃいそうだったからね。ちゃんと先のこと考えてんだよ、偉いでしょ?」
「ああ、まあな。そんな事で後々揉めたくないもんな。俺も知らないディッドの特技もまだあったんだな。感心したよ。」
………ヤベェ、俺ちょっと面白おかしくやいのやいのしようとしてたんだけど………あと一歩で本気で殴り殺される所だったんだな。コイツ本気の目をしてたぞ………危なかった、これこそは奇跡の石の効果かもな。
ありがとうございます、俺の御石様。しれっと話題を変えなくちゃな。
「しかし、マズイ事になったぞ。反王国因子に俺達の存在がバレたのは確実になった訳だな。今後報復に来られたりする事が始まるって事だ。ああいう奴らって、普通の住人みたいに街に溶け込んでたりしてたら全く区別付かないんじゃないのかな?どう注意すりゃ良いんだよそんなの………」
反乱しようとしてる奴なんてぱっと見で分かる格好してる訳無いだろうな。生活に忍び込んで色々工作してるに違いない。何か良い防衛方法を考えておかなければ。
「そんなのほっといても問題ないよ。疑わしい奴いたらとっちめちゃえば問題ないでしょ?」
バカじゃないのか?バカディッド。もし間違えたら一巻の終わりだぞ!?下手に一般人に怪我させた日にゃ国が擁護してくれるとは限らないだろ。都合良く切り捨てられるのが関の山だろうな。
………そうだよな、俺達は今めちゃくちゃ都合良く使われてないか?金に困って、金で雇われ、金で廻されてる。まぁ、金で踊ってるバカがいるせいで俺も踊らされてる訳だが………
「マグ、実際今の王国の事ってどうなんだ?正直、恥ずかしいけど俺はこれまで興味が無くて何も知らないし、知ろうともしてなかった。ディッドと組んでから尚更国とは関係の無い日々を送ってたしな。」
監獄送りや強制労働から逃れる為に流されるように今迄任務をこなして来たのだが、金銭の面倒を見てるだけで伝説級の任務を達成してくるなんて……都合が良いと言うか、下手すりゃ怖い存在だろうな。
「そうだな………確かに今は自分が国の任務を受けてアル達とミッションを遂行してる訳なんだが………最初にカジノで会った時の事、覚えているだろ?
あの時は研究一辺倒で他の事は全く目に入って無かったんだよな。ある意味、今の状況とさして変わらない。研究費や実験場所、自分の実利しか見ていなかったんだな。研究成果だけしか興味無かったし、それがどういう風に使われるなんて考えた事なんか無かったんだ。」
そうだった。そういやビックリする程変質者だったな。周りの偏見や迷惑なんてこれっぽっちも意に介さずに変態道を突き進んでいたっけ。
「正直、今こうして思い返してみると自分の作った兵器で仕掛ける事を考えてなかった。防衛の為と言われて何の疑問を持たずに研究に没頭していた。兵器を使用したレポートが防衛目的として上がってきてたが、その事は信じて疑ってなかった。…………都合が良いか………確かに………そうだよな。」
自問しながらマグは深く考え込んでいた。俺達と旅を続ける中で少なからず意識の変化があったのだろう。ぶっ飛ばされて意識がコロコロ切り替わっていたのは置いといてな。
「まあ、今俺達が悩んでもしょうがないしだろ?そうやって俺達の心を揺さぶるのがアイツらの常套手段かも知れないしな。上の人間に聞いたところではぐらかされるだけかもしれないし、これからちょっと注意深く様子を見る位で良いんじゃないか?」
国としては安定してると思うから周りに戦争ふっかける事は無いと思うんだよな。いい様にちんちくりんの言葉に転がされたって事か?チクショウ、スゲェ腹立つな。
あっ、ディッドがいつの間にか爆睡してやがる。興味の無い話だろうとは思ったが、それ以上につまらなかったんだろうな。いい身分だな、全く。
結局毎日の日課になってしまった奇跡の石磨きをしながら暫くぼんやりと思慮にふけっていたのだが、また別に一つ気になる事があった。
「そういや、マグ。何時から戻ってる?」
マグの体がピクリと揺れた。何の事か分からない素振りをしようとしたのだが、すぐに諦めて真っ直ぐ俺に目を向ける。
「何の事かって言いたいけどそんな雰囲気じゃないよね。」
少し前の落ち着いた口調でマグの言葉が発せられた。




