第80話 組織
「この王国の国家転覆を図る組織が、何の為にココでこんな騒ぎを起こしているんだ!?」
おっと、いけない。台詞が棒読みになってしまった。まあ、そんな事気付く感じの相手ではなさそうなんだが、一応もっと感情が乗った言葉にしとかないとな。
「ほんと何も知らんのか〜?ぬしらの国はさ〜、民を娯楽で骨抜きしてさ〜、裏では周りの国を侵攻する準備を着々と進めてるんさ〜!だからこの先の町に遊びに向かう奴らを戒めているんさ〜。」
えっ、そうなんだ!?……って、俺達は王国の深い方に属している筈なんだけど、そんな話は聞いてないな。
「それより……大体なんなんさ〜、ぬしらは?だいだらんちゅは何百人だってまとめて無力化できるはずなんさ〜。それをこんなにボコボコにするなんてな〜、そんな奴がいたらもっと名が知れ渡ってるてるはずなんさ〜。」
ああ、ダルい話し方してんじゃねえよ。そのアホっぽい喋り方されっと、警戒心が薄れていかん。と、俺の気が抜けた隙にディッドが会話に入り込んできた。
「何とか会とか言われても全く興味も沸かないな。大体こんなすっとぼけたのがいる集まりなんて大したことないだろ?何だったか、前にウチらが潰したなんちゃら決起団とかと似た集団ってことか?
そういえば、アイツ等反国家勢力だなんだと言ってたな。王国がどうたら言ってたが、特別討伐隊にされたコッチには外に侵略するなんて話は聞いてはいないけどな。そんな事やらされるのならコッチから願い下げしてやるんだがな。
まぐ夫は国王とも面識があるんだったよな? 王国の科学研究のトップとしてそこら辺の話はどうなんだ?もしコッチに下手な事させるなら王国もまぐ夫も纏めて許さないからね。」
「おい!ばか……っ! 」
しまった!ウチのバカも全力で併泳始めやがった!鋼の決起団だかのボスを倒したのが俺達だとバレたら、今後報復で狙われる事になるだろうが!!
「そんな事は自分は聞いたことは無いな。あくまでも科学の追求しか興味無いし、防衛の為の戦力の強化を任されているだけだ。」
あっぶねえな、マグもそれ以上口出すな!外に出しちゃいけない話だらけだろ!?お前の話は!!
「今なんていったんさ〜!? 鋼の決起団を潰したって〜!?何者かに壊滅させられたってゆうのは聞いてたさ〜!!それがぬしらって事になんかさ〜!?」
ほら見ろ!絶対繋がりあるだろ、組織同士で。マジでこれ以上はお願いだから黙っててくれないか?無駄に命を狙われる事になっちゃうだろが!特に俺が。
「しょうですよ!なんてったってアルしゃんが相手のボスを一太刀に切り落としたのでしゅよ!!えっへん。」
まともに喋れないなら大人しく黙ってろ、デカブツ。
「なにい〜、そこの一番ちっこいのが団長を倒したって〜?
………嘘つくんじゃないさ〜!あの団長はおっそろしく強くて、エグくて、ヤバい男なんさ〜!ぬしみたいなちんちくりんが敵うはずもないんさ〜!」
ちんちくりんにちんちくりん扱いされた。………お前が言うな!!間違いではないけど。
「見た目で判断するなど全くもってペーペーの若造だな。龍だろうが悪魔だろうが、アルには全く関係ない。一捻りであの世行きにしてきたからな。」
い・い・か・げ・ん・にしろ。なんか、だんだん俺が追い込まれてきてる気がする………何とか修正を計らなければ………
「おい!オマエ等分かってんだろうな!今は余計な事を話してる場合じゃないからな!コイツをしょっ引いていかなければ報酬は出ないんだからな。話を聞くなら牢獄に入れてからすれば良いだろ。行くぞ!!」
ノコノコ出てきたコイツが悪いんだ。さっさと確保して、街に帰って安心してぐっすり眠りたいんだよ。デカいのはまだフニャフニャしてるけど、三人がかりなら余裕でやれんだろう。コイツを逃がしたら俺の命に関わるからな。確実に捕まえてやる!!
「なんだよ、アルの格好良いトコもっと自慢したかったのに。しょうがないなぁ、縛り上げて引き摺り回してやらないとね♪」
言動がサイコだが今はそんな事言ってられない。隣の変態も同感な顔をしているような気がしたが、捕まえてくれるならどうでもいい。
「ぬしら〜。簡単にわーの事どうにかできると思ってるんさ〜。見た目で判断してるのはそっちの方なんさ〜!さあ!いくんさ〜!百んちゅ夜行〜!!」
ちんちくりんが空に向かって紙吹雪を出したかと思ったら、その紙片が次々に異形の者へと変化してゆく。四方八方から爪や嘴、刀に槍と、禍々しい妖怪達が襲い掛かってきた。
「なんだ!コイツ等!何なんだよコレ!?」
一体一体はそんなに強くはないのだが、数の暴力に飲まれそうになる。
「邪魔すんな!コンニャロー!」
ディッドの方は柔らかそうな妖怪達が押しかけていた。しっかりと相性の悪そうな者に囲まれて思うように動けずイライラしている。
「くっ!下手に攻撃すると誘爆して自分らにも危険だ!油断した、こう来るとは予想しなかった。」
マグは近付いてきた相手を小規模爆弾で退かせていた。炎は利きそうなのだが、もしも妖怪が紙でできてる様なモノなら一気に炎上して森林火災を引き起こしかねなかった。
「はっはっは〜!さらばなのさ〜!いくんさ〜、だいだらんちゅ〜!」
先程見た巨人は更に縮んで身長が三メートル位になっていた。その代わり、恐ろしく動きが俊敏になっていた。デイトラを小脇に抱え、颯爽と森の奥まで消えていった。
「ちっきしょー!逃げられた!!あんにゃろう、今度あったら絶対許さないからね!」
ディッドの声が静かな森に響いていた。周りの妖怪も術者の範囲外になったのか、ただの紙切れにと戻っていた。
やられた………コレで俺は下手したら常に命を狙われる事になる。ふざけんな、俺の平穏な日々を返してくれ………
「ふぁっくしっ!!……ほへ?なんかさっきよりも増して体がおかしいでしゅ………」
おいおい、デカブツの顔が赤くなったり青くなったり、紫、黄色と、目まぐるしく変色している。あの大群の妖怪の中に状態異常を引き起こすのが当然の様にいたんだろうな。そいつ等が唯一効果があるラッキーに集中して仕掛けた結果、こんなヘッポコが出来上がった様だった。
「はぁ、悔やんでてもしょうがない。今日はここで休んでラッキーを回復させようか。」
ただでさえデカくて重い上に、それに輪をかけて重い荷物を常に運んで貰ってるからな。その二つを運ぶ位ならラッキーの回復を待つ方が賢明だろう。とっとと作業に移る事にする。
「すいましぇん……おてしゅうかけましゅ………て、え、え、え、アルしゃん!後ろ、後ろ!」
何だよ、まだ騒がしいのかよ。いいから大人しく休んでてくれよ。と、思いながらも後ろを振り返ったのだが、そこには鬼の形相をした何者かがいた。………紛う事無き幽霊だった。
「うわぁぁぁぁぁだ、本物のゆ、ゆう…れい…!?」
ここら辺で騒いでいたのが気に食わなかったのか、俺を呪い殺すかの様な怨念を感じる。テント設営をする為に俺の剣は離れた場所に置いてしまっている。この状態では俺は何も打つ手立てが無かった。
「なんだ、今度は本物の幽霊か。」
何落ち着いてんだよバカディッド!いいから早く俺の剣持ってきてくれよ!アレなら何とかできるかも知れないだろ!?
「わーーーーーーーーーーーっ!」
辺り一帯の空気を震わす声がディッドから発せられた。鬼の形相の幽霊は苦痛の表情に歪み、ボロボロと形を崩して塵となり、風と共に空へと消えていった。
えっ、マジでそれで除霊できんの?




