第77話 心機一転
「自分の手持ちももう無いぞ。そこの二人に全部渡したからな。」
一縷の望みに賭けマグに確認したのだが、本当に全部突っ込んだんだなバカ2人は。
今思い返してみると、ジャスに街を案内して貰ってた時に視界の片隅で俺の目を避けるように猛烈なスピードで動く何者かがいた気がする。浮足立ってた俺は見逃してしまった、すっかり警戒を怠ってしまった。奴らは何度も競馬場とマグの間を往復し、全て持ち去って行ったとの事だ。
「宿に滞在できるのは後二日か。こんな事ならもっと先払いしておけば良かった………
マグ、俺達ってこの街でアルバイトしたら国から怒られるかな?」
ちょっと前に驚くほどの報酬を貰ったばかりなのに、下手に国に頼ったら足元を見られて更に使い倒されてしまう気がする。何とか自分達で解決しないと怖くてしょうがない。
「まあ、多少なら問題はないかな。例えばこの街の安全の為の依頼とかならいくらでも誤魔化せるしな。」
マグがそう言うのならちゃんと誤魔化せるのだろう。期待はできないが行動しない訳にはいかない。重い足取りで役場に向かう事となった。
俺一人で。
ぬぁーっ!腹立つ!マグはしょうがねえよ、金貸しただけだしな。デカブツは頭下げさせて苦労させたいけどよ、無駄なお人好し発揮して金にならないボランティアばっかし請け負ってきやがるに違いない。バカディッドはバカディッドで依頼は選り好みするわ、頭は下げないわ、あまつさえ脅迫紛いに仕事を取ろうとするだろう。
結局連れて行くのは俺の負担でしかないのは分かりきったことだった。畜生、あいつ等後で死ぬほど働かしてやる。
ダメ元で役所に乗り込んだのだが、役所の人の反応が何気に凄く良かった。何やらこの頃この街は景気が良いらしく、税収も好調なので今の内に不安因子を掃討しておきたいと議題に挙がっていたらしい。観光客の誘致も拡大中らしいので、安全でクリーンな街として付加価値を高めていきたいんだと。
……「本当にこちらの案件でよろしいのでしょうか?」
俺の事を頭のてっぺんからつま先までマジマジと見ながら受付の担当者が確認する。
「間違いない。この中で一番報酬の高いのが良いんだよ。」
見た目で判断するな、腹ただしい。実際見た目通りなのは置いといてだけどな。その他三人は並大抵なモノは相手にもならないだろうし問題はない。
「承知しました、諸々説明致しますので奥まで来て頂けますか。」
それから説明を聞いたり、登録をしたりとガッツリ時間を取られてしまった。俺ばっかり苦労してないか?ホントに………
「オラァ!仕事持ってきたぞ!明日朝イチで出発するからしっかり用意しとけよな!」
まったりとしてるコイツ等見てるとハラワタが煮えくり返って来やがる。
一日二日もかからない所が目的地なのでチャッチャと終わらせて戻ってゆっくり休ませて貰うからな、言うこと聞けよバカコンビ。
「でさ〜、何の討伐すりゃいいんだっけ?」
ちゃんと教えたよなバカリーダー。
「魔物でも怪物でもない正体不明の何かに襲われる事例が多発してるらしいってよ。その調査と討伐と解決、全部できたらボーナス付きだ。」
後2、3回は同じ事言いそうだな。メモして渡しておこうかな、多分無くされるけど。
「正体不明ってどういう事なんでしょうね、動きが速くてよく分からないとかですかね?」
デカブツもこの頃は自信が出て来たのか態度に余裕が滲んでいる。魔物であっても自分の運動能力が通用するのが分かったからだろう。
「聞いた感じだと、ぼんやりとした身体にフワフワと空に浮いていたとか、音もなく忍び寄って状態異常を発症させられたとか………取り敢えず人を襲ってくる事は確からしいから何とかして欲しいらしいな。」
依頼内容自体フワフワしてるが、理由が分からない問題が不安を煽り、街の評判が悪くなるだろうと心配しているとの事だ。正体だけでも分かれば新たに対策も立てれてると言うので、情報だけでも報酬を出すと言っていた。
「え〜と………ええっ!それって幽霊とか妖怪とかの類ですか!?呪いとか祟りとかなんてされたらど、どうしたら良いんですか!?し……塩とかいっぱい持ってきました!?お札とかお守りとか準備しといた方が良かったんじゃないですか〜!?」
おっと、デカブツの新たな弱点発見したぞ。夜寝る前にお化けの話でもしてみようかな?デカい体をガタガタさせて一緒にトイレに行って欲しいとか言い出したりな………面倒臭え、からかうのも俺の負担になんじゃねえかよ、クソッ。
「幽霊なんてもんは存在しないだろ。原理が分からない事を妖怪や悪魔の仕業にして恐れてきただけだ。昨今の研究じゃ、昔から伝わる非科学的な事も色々解明しているからな。」
科学至上主義のマグはそこら辺の超常現象は認めないらしい。まあ、魔法に関しては科学で解明しきれてないので否定案件なんだろうな。コレも討論するのは面倒臭い。
「くくくっ、ラッキーお化け怖いんだ〜。大丈夫だよ、コッチがでっかい声で わー! て言えば消せるからさ。昔何回かやった事あるからね。」
何波を打つつもりだコイツは?そんな能力あったのか、初耳だな。ハイハイ、よろしくお願いします。
「本当ですか、お願いします。本気で苦手なんです………」
流石ポンコツ、まるっと信じちゃったな。騒がれても嫌だからそのまま放っておこう。
一晩キャンプをし、次の日の昼頃にはもう目的地に着いていた。なんとも薄暗い如何にもラッキーの苦手なソレが出そうな雰囲気がある。既に隣で小型犬の様にプルプルしてるのがいるんだけど………デカい図体で可愛くないんだよ、身の程を知れ。
なんだかんだこの三人に任せておけば誰かしら対応できるだろう。俺は引率者として全体の取り纏めとして機能することにした。事務仕事は俺が頑張ったんだから肉体労働はそっちの仕事だからな。
森に足を踏み入れ程なくして待ち構えるようにソレは佇んでいた。
全長が20m近く足が透けてる存在。
ま、要するに幽霊って奴だな。




