第73話 休息と報酬
「ラッキーは大丈夫なのか?」
マグは医療道具やら機械やらを使ってラッキーの状態を細かに診断している様だった。俺達と組む前は人の治療ってモノに興味も必要も無かったっぽい、ほぼ無敵の身体を持っていた訳だし、そこら辺の知識は深くは必要としてなかった。
だが俺が死にかけた時に改めて必要性を感じたのだろう。フォネトの助手をしたり、研究レポートを受け取ったりして急速にその方面の知識を会得していった。
嫌だね天才って奴は。その代償が変態だからプラマイゼロだけどな、俺は遠慮するけど。
「内臓破裂とかは無いな。命に関わる問題は心配しなくて良い。」
何だよ、単なる怪我止まりか。安心したと共に腹立ってきた。痛い思いして大人しく反省してくれても良いと毎度思ってしまう。
心が狭いんだよ、俺は。何とでも言え。
マグはラッキーを診終わった後、律儀にドラゴンの治療も始めていた。まあ、あの雰囲気なら回復しても襲い掛かってくる事は無いだろうしそこまで復活するとは思えない。何かこっそり隠れて薬?を投与してたのは見てない事とする。相手は人間じゃないしな、問題ないだろう。
「そういえば奇跡の石なんだが、二個あったから一個はアルが持ってていいぞ。ディッドも文句無いだろ?」
何を勝手に決めてんだよ、石狂いが文句言わない訳無いだろ!? 大体俺はそんなの求めてなし、高価な品を持った所で管理が面倒臭い。
「俺はそんなも…………」
「いいよ、問題ないよ。良かったねアル!毎日一緒に磨いて二人で大勝ち間違いなしじゃん♪ んふふ〜♪た〜のしみだな〜♪」
俺は何も承諾してないんだけど………まず興味がないのが前提として、
①毎日磨かない。
②ギャンブルをしない。
③信じてない。
以上をもって丁重に辞退させて頂きます。
「ねぇ、楽しみだよね。」
間髪入れずに同意を求めてきたのだが、
①低く威圧の込もった声。
②鋭く刺すような視線。
③力を込めて握った拳。
以上を含んで脅迫紛い、いやそのものだった。
………断れる訳無いだろ、殺気を向けるな人でなし。
「これで後は放っておいても死にはしない筈だ。仲間も後から確認に来るだろうし、見逃した以上は生きて貰わないと、な。」
その雰囲気だと含みがあるな。マグは何かしらの生体実験でもしてるのだろう。この先余りいき過ぎるならディッドにブッ飛ばして貰わないと………いやいや、間違って完全に破壊しても困るし………う〜、やっぱ万が一に備えて俺も毎日石磨きしておかないとな………頼りにしてるぞ奇跡の石。
ラッキーを休ませて体調の確認をする為に洞窟でしばらく留まる事にした。どうせ普通の人間じゃ考えられない回復力で一晩寝たらピンピンしてんだろうと予想する。
ついでに俺もゆっくり休んでおこうと思ったのだが、悪魔が石の磨き方を強制レクチャーし始めやがった。俺は三日三晩ちゃんと寝ないと完調迄は程遠いんだよ、さっさと解放してくれよ………
「おはようございます!清々しい気分です!昨日はご迷惑かけましたがもう大丈夫です!いつでも準備万端です!!」
うざい、うるさい、鬱陶しい。昨日血ィ吐いて泡吹いて失神してたのに、何事も無かったかの様に回復してんじゃねえよ。まあ、怪我して動けなくなったデカブツを山から降ろすよりかはまだましか………
降りる?
忘れてた。いや、考えようとしなかっただけかも知れない。
もうこれ以上は奇跡の石は要らないからな、龍の住む崖とかは金輪際御免なんだよ。
「おげぇっ………オロロロロロォ………」
今、俺達は既に麓にいる。山を降りてる描写は無しなのか?俺の苦しみや恐怖の扱い軽くない?そりゃもう何回も球扱いされてるけど、余りにもサラッと流しすぎだろ?今回も色々あったんだよ………回転かけられたり、変化つけられたり………俺的には語るに尽くせない出来事なのだが完全にスルーされてるよね?
これ以上掘り下げると俺って面倒臭い奴になっちゃうのかな?………そんなボヤきも悲しく木霊するだけだった…………クソッ。
「奇跡の石の引き渡しはこの間の街でする事になってる。相手の到着予定までにはまだ余裕があるから慌てなくていいぞ。」
マグが俺に気を遣ったような物言いをする。(競馬)というワードを意図して出さなかったのだろうが、二大バカがもう既にソワソワしだしている。マジで分かり易くガキだなこの二人。
「はぁ………報酬が入ってから軍資金を渡すから、勝手に共有財産まで持ち出すんじゃない。いい加減、俺の主張も聞いてくれないのなら一緒にやっていくことはできないからな!」
よし、今回はちゃんと伝えられたな。行くなとは言ってない。今回は俺も折れたんだからオマエ等も枠内で楽しんでくれよな。週末まではまだ暫く間があるから、その間に報酬も貰えるだろう。資金が無くなったら終わり、それ以上は我慢するようにと念を押したからな。
それから数日後、王国の使徒と合流し報酬を受け取ることができた。
「……マグ、この報酬額マジなのか?」
式典用の宝飾なのである程度は期待していたのだが、予想より一桁違っていた。
「間違い無いぞ。ここ数百年人間の手にされなかった宝玉だからな。あそこは有名所のトレジャーハンターの終焉の山として知る者には知られていたからな。勿論、命の終わりの場所って意味でだ。」
だから、依頼を受ける前にその事実を教えてくれ、相談してくれ、確認してくれよ。俺は全力で拒否することができたじゃねえかよ!(その拒否を却下されるのは別の話だとしてだ。)
ていうか、その石を俺達は二つ持っている。尚且つ、一つは俺預かり………下手にバレたら確実に狙われるよな………俺。
うぅ、どうかその時は奇跡で助けて下さい、御石様………
その後、旅の必要経費を除いて四等分した。一回で使い切らない、考えて使う、貸し借りをしない、と念を押したのだが………
俺はお母さんか?
キミたち一体何歳なんでしょうか………ねぇ?




