第72話 決着
「目的達成したからもう帰れるぞ。辛いなら手助けしてやるけどな、貧弱ディッド。」
煽るな変態。一方バカはバカで煽られれば煽られるほど能力が上っていく気がする。何だよ、最終的に相性良いのか?この二人。
「はぁ? もう分かったから今終わらせる所だよ! まぐ夫は茶でも沸かして待ってなよ!」
何が分かったのか分からないが、とにかく凄い自信だな。本当に終わるのかな?
「ぐわっ〜!しまった!!……げふっ…」
いつも〈しまった〉しているデカブツの声がした。黄金色にブンブン鉄球を振りかざし追い詰めていたのだが、振り終わりの一瞬の隙を狙われた様だった。強烈な尻尾の一撃がラッキーにヒットしていた。今まで尻尾での攻撃は一度も無かった。なので完全にラッキーの思考から尻尾は外れてたのだろう、単純だから。で、あの巨体が10m以上ふっ飛ばされていた。
結構な高さから地面に叩きつけられたのだが、直ぐに起き上がって戦線に復帰しようと動き出す。なんであれでピンピンしてんの?やっぱ怖え、このデカブツ。 だが、相手にとっては起死回生の一発だったのだろう、黄金色は意図した結果との解離した状況に一瞬呆然となった。その隙を逃さず懐にディッドが滑り込んだ。
………アイツ、ドラゴン相手慣れてきすぎだろ、いい加減面倒臭くなっただけかもしれないけど………
身体が捩れた所にできたであろう僅かな隙間に素早く確実に切っ先を突き刺していく。根元まで刺しては抜き、苦痛で身体を捩り、空いた隙間に再び刀を差し込む。藻掻いた分だけ血の滝が増えていく。
なんかこんな玩具あった気がする………ただ、今飛び出てくるのはじわじわと痛めつけられる悲痛の声だけど………重要な器官には攻撃は届いてないのだろう。えげつなく痛みを与えているだけの嫌なサディスティック姿を見せつけられている。仲間だけど………なんともな………
「大分動きが鈍くなってきたね〜♪そろそろ一発決定的なのお見舞いしようかな〜♪」
ウチの悪魔はとうとうドラゴンを攻略してしまったようだ。可愛そうだけどしょうがない。俺がトドメを強要されるのも無くなったって事だな。うん、しょうがない、しょうがない。
黄金色は体全体の力が抜けてきたらしく、前のめりとなり胴体がどんどん地面に寄ってきている。心臓の場所は大体ながらも想像することができた。 その場所に届く位置がディッドの攻撃範囲に近づいていた。
「じゃあね♪楽しかったよ〜♪」
ディッドの刀が深々と突き刺さった。
………レッドパールの体の中心へと。
黄金色の慟哭が轟く。レッドパールの大将はラッキーが足止めしていた筈だった。しかし、瞬間移動とも思えるスピードでディッドの前に立ちはだかり、鱗が剥がされた剥き出しの肉に刃を受けていた。
「運が悪い?………いや、わざと肉で受けた………!?」
大将は鱗だったら刀は弾き飛ばせていた筈だった。だが、肉で受けたことによって刀を筋肉で封じ込めていた。この隙に黄金色の方を逃がそうとしているのだろう、有無を言わさぬ厳しい視線を黄金色に向け、生きて逃げるように促している様だった。
「へぇ、いい子ちゃんだね♪お別れも済んだようだし、コッチを勝たしてもらうね。」
黄金色はもうこれ以上大将の意志に背くこと無く、即座に戦線を離脱する。覚悟に報いる為の行動だったのだが、黄金色の本意はでなかったのだろう、自責の念に駆られている表情をしているように見えた。
黄金色が安全な場所まで移動したのを見届けたので大将は筋肉を緩めたのだろう。ディッドもそれを感じ取り、ゆっくりと刀を大将から引き抜く。
「あっちは残念だけどまあ良いや。楽しかったよ。サヨナラだね。」
その言葉に大将は悔しがる訳でも憎む訳でもなく、只自分を倒す者の顔を静かに見つめていた。避ける気配もなく、全身全霊をかけて受け止めるべく仁王立ちになる。
ディッドの身体が一気に引き締められ、渾身の力を持って最後の一突きを繰り出す。そしてその腕にラッキーが絡みつく………?
「待って下さい!もう勝負は着きました!この方はもう全てを受け入れる覚悟をしています!これ以上、命まで奪う必要は無いと思います!私はこの戦いで色んな事を学びました!司令塔としてもリーダーとしてもここで終わらすのは忍びないです!」
珍しくラッキーが食い下がる。まあ、アスリートとしてチームに対する責任者の自己犠牲に熱いものがグッと来てしまったのだろう。目をウルウルさせながらディッドに懇願をしている。
「ええぇ〜……うう~ん……」
悪魔は殺戮がしたくてしょうがないんだな。ラッキーの願いに動揺が隠せない。で、どうするんだ?人と悪魔の境界線なんだからな。ほら、早くしないと人格を疑われるぞ、俺は疑いなく悪魔と思ってるけどな。
「素晴らしい戦いでした!またどこかで力合わせができることを心から願ってます!」
流石だな、デカブツも疑いなく頭のネジが外れてるのを再確認したよ。ドラゴン相手に握手してハグしてる。手負いでもその爪でやられたら一発だぞ。
「バカ!逃げろ!」
思わず口に出てしまったのだが、その言葉はスルーされることになった。完全に無視しやがった、あの肉団子。
が、なんかあの二匹は通じ合ったっぽい。何だよそれ?茶番劇ってやつかな?
「ぐぎぎぎぃ……じょぅ゙がな゙ぃ゙、ラッキーに免じてゆ゙る゙じでやるよ゙ぉ。」
悪魔語で喋るな、人間の言葉を使え。どうでもいいけど、デカブツは口から血ぃ吹いてんな、内臓破裂してんじゃないのか?アイツも人間じゃないのだろうか?
「おい!ラッキー!もう分かったからこっちに来い!自覚してないかも知んないけど、かなりダメージ食らってんぞ!マグ!早く準備してラッキーの事診てくれないか?!」
我に返って慌てて処置を促す。大将は………ハグの後、ゆっくりとその場に倒れ意識を失ったようだ。大怪我してるが死ぬには至らないようだった。
「ああ〜、確かに結構出血あるな。流石だなラックは。普通の人だったら二、三回は死んでそうな衝撃食らってんだけどな。内臓のやられ具合ではちょっと厳しいかも知れないな。」
ああ、ヤバいんだ。って、淡々としてんなよ!取り敢えずラッキーは岩影に腰を下ろさせておく。必要な準備をマグの指示で動き始めた、のだが。
「ラッキー、水分とか取れるか?」
声をかけ、顔を覗いたんだが………白目剥いてやがる。
意識飛んでんじゃねえか、デカブツ。




