第71話 タッグマッチ
激しいな、こりゃ。手助けする余地がこれっぽっちもありゃしない。下手なことをすると身内のリズムを壊しかねない。バカデカコンビは何というか脊髄反射………いや、完全にゲーム感覚で闘ってるな。
ドラゴンの動きは速い。だがこの二体は今までのとは桁違いに速すぎる。しかも連係が恐ろしく上手い。一体が攻撃を仕掛けると必ず一体は死角から忍び寄ってくる。また、急降下してきたかと思ったら、目の前で急旋回をして攻撃目標を変えたりと縦横無尽に空間を移動し、臨機応変に手数を繰り出してくる。
「うお〜、鋭い!ディッドさん!気を付けて下さい!ちょっと掠っただけなのに結構抉られてしまいました!」
思った以上に血がダラダラ垂れてるのだが、本人はニヤニヤしている。いやだ、気持ち悪い。
「よし!ラッキー!ウチ等も連係するよ!負けてらんないからね!」
ディッドの身体の所々に細い赤線が引かれている。触れなくても空気の刃みたいな感じで皮一枚切り裂かれる様だ。余りディッドの流血は見たことはないのだが、それだけに相手の強さが窺える事になる。
レッドパールの大将は常に二人を正面に見据えている。隙を見せた方に一瞬で距離を詰め、鉤爪で肉を抉りにくる。嘴での攻撃も強力そうだが、先程マグが口の中で爆発させたのを見ていたのだろう、自分らの弱点を俺達が認識しているのを悟っているようだ。しかも狙われた方(今回はラッキー)の背中の方にもう一体の黄金色が低空飛行で旋回し、板挟みにする二段構えで挟み撃ちにしてくる。
「コッチを無視しちゃ怒っちゃうよ〜!」
しかし、ディッドはラッキーと大将の間に一気に飛び込み、鱗の隙間を狙って剣を滑らす。だが、この大将は翼を強力に翻し急停止をすることができた。鱗を剥がすことは叶わなかったが、その隙間からは鮮血が滴り落ちていた。
「ふんっ!」
ラッキーの方は最初から大将の方には意識を持っていっていない。すべてディッドに任せている。 いや?それ連携じゃないだろ?なんでそこまで信頼してんだか………正面から大将の攻撃食らったら、流石のラッキーでも腕の一本や二本持ってかれてもおかしくないと思うぞ。
ラッキーは死角から狙ってくるであろう黄金色を全神経で警戒していたのだろう。タイミングを合わせて鉄球を振るう………こちらの黄金色も相当できるな、当たった瞬間に咄嗟に大きく羽ばたいた。威力を殺すことに成功したようだった。
「効きました!」
直撃はしなかったものの、ラッキーはそれなりの手応えの感触があったようだ。黄金色は結構先に吹き飛ばされ、ラッキーはその方角に向かって間髪を入れず竹の槍を投げつけた。
黄金色は頭に鉄球が掠めたらしく、脳震盪を起こしたのかこちらに口を開けて横たわっている。その口に狙いを定めた竹槍に地を這うような低い姿勢で並走する影が現れる。何が何でも串刺しにしたいんだなコイツ等。相手に恐怖を与えるのが快楽なんだろうか?
「頂き〜♪」
陰惨な結果が訪れると思ったのだが、竹槍はレッドパールの壁に遮られた。高硬度の鱗に正面から攻撃は阻まれ竹槍の先端は潰れてしまっていた。
「あぁ~、コノヤロゥ!よくも茶柱を!!」
この一瞬でどの竹槍か判断できるんだ、すげえな。でも刀が鱗に直撃したら、刃こぼれどころじゃなく最悪は折れてしまったかもな。そう考えれば運が良かったと思うしか無いか。
それにしても、ウチの奴らは守るってことを考えないのか?眼の前に大将がいるのに二人して黄金色に止めを刺すことしか考えてなかっただろ。大将が仲間を救援に向かわなかったら、ラッキーはあの凶爪で引き裂かれて今頃絶命しててもおかしくないんだけどな。
敵との間に奇妙な信頼感が生まれたのだろうか、大将にディッドとラッキーは目を合わせほくそ笑む。ドラゴンの表情は分かりかねないのだが、おそらくその三匹は同じ表情を浮かべているに違いない。
「茶柱の敵!討たせて貰うよ、ピンク野郎!!」
とは言うものの、あの鱗の鎧にディッドの刀は分が悪い。だから素直に俺の聖剣を使ってくれればとっくに勝負は着いていた筈なんだけどな。でも俺はあんなのの中に入る勇気は全く無い。原型を止めず肉の塊にされるのは目に見えてる。願わくばディッドが自発的に俺から聖剣を奪った上でそのまま自分の剣にして欲しいよ。
大将と対峙し直したディッドはラッキーから二本目の竹槍を受け取っていた。刀よりかはリーチは全然長いが所詮は植物なんだけど………そんな俺の危惧を他所に大将の顔面に突きを放つ。勿論狙いは口であるのは明確だった。確かに神速と言える程の恐ろしい速度の突きなのだが、狙ってる場所がバレバレで尚且つ相手もそこへの攻撃を警戒している訳なので………あっさりと躱されてしまった。
のだが、ディッドを飛び越えデカブツが鉄球を叩き込む。…………ちょっと、まて。ほぼ直立状態のディッドの上を越える!?しかも鉄の球片手に持ったまま…………おかしいだろ、そんなの人間の限界超えてるだろ。このドラゴンらが軍龍と言われるのは、相手の能力を見極めて戦略練ったりする事からきてるんだろう。
が、ここまで人間を超越されたら対処できないよな。でもなんでデカブツは鎖で振り回さず鉄球自体を掴んでるんだろう?スポーツじゃないんだから大将の頭で点は入らないよ?
「ナイッシュー、ラッキー!」
だから、シュートじゃ無いってば………でもしっかり脳震盪は起こした様だ。頭が破裂しないのは流石ドラゴンだな。その腹の下から一気に二閃、ディッドの掬い上げる太刀筋に大将の胸の鱗が剥がされた。Vの字に鱗が捲られ刃の通りそうな肉が剥き出しになる。
「ほらほら〜、弱点剥き出しだね〜♪守りきれるかなぁ〜?」
サディスティックな視線を大将に向けて正気と思えない笑みを浮かべている。絶対的な力ではドラゴンの方が全然上なんだけど狂気の点では抜きん出てるなコイツ。
「はははははは!私達の勝利が見えてきましたね!狙うゴールがはっきりした以上、必ずシュートを決めさせて貰います!!」
コイツ等だったな、狂気持ち。戦闘を競技としてプレイしてんじゃない。命のやりとりしてる感覚あんのかよ?自信満々で間違った方向に進まないでくれ………俺は止めらんないからな………
黄金色が意識を回復し、自分の大将の肉が剥き出しの胸に気付き動揺をする。それを感じた大将は黄金色の頭を掴み、目と目が合う様に捻り上げた。その瞳から大将の心を汲み取ったのか急速に落ち着きを取り戻していく。
いやぁ、大将かっこいいよ、芯が全くぶれないな。仲間からの信頼も大したものだったんだろう、行動一つ一つが品格を感じさせる。
………ウチの子達には無いよな、そういうの………なんか………悲しい………
「アル、ミッション完了だ。あったぞ、奇跡の石。」
俺とマグはやること無かったからな。ゴメンな大将。こんな不誠実な俺達で…………




