表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/75

第70話 大一番

「アル!今の内だ!」

 無責任な変態の声がする。直視はしていないが目がチカチカしてんだよ。だが、俺達を狙っていた四体は確実に直視したようだった。何体も地面に落ちた音がしてたのでそこら辺に転がってる筈だろう、と慌てて周りを確認する。


「いた。」

 近くに倒れていた一体に狙いを定め、剣を振りかざす。が、やはり扱い難いこの剣では狙いが少しズレてしまった。急所を外した所にかろうじて刃が当たったのだが、バターを切るが如く鱗ごと肉を断ち切っていた。


(せめてもう一体にも………)

 視覚は直ぐに回復するだろう。折角なので少なからずダメージを与えておかなければならないと必死にもう一体に詰め寄る。鱗を切り裂きダメージを加える事はできた。しかし、ドラゴンも必死に回避しようとするので致命傷は与えられない。


「オラ!」

 のたうち回るドラゴンの口の中に狙いを定め、拳を突っ込み爆弾を握り潰す。という毎度の自爆を遂行する奇人がそこにはいた。その不憫なドラゴンは、黒い煙を目鼻口からモクモクと上げ白目を剥いて痙攣している。かなり効いてはいるだろうが絶命までには至ってないようだった。そしてマグを狙ったもう一体も、まだ視力が回復しない内に同じ様に毒牙にかかることになっていた。


「悪いな。余裕が無かったから上手く合図できなかった。ほぼほぼ全体が目潰し食らってるから今の所は安全だ。まあ、もうすぐ敵味方共に回復するだろうから注意は怠らないようにな。」

 心のこもっていない謝罪の後に他人事の警告を言われてもな。納得のいかないアイツが許すとは到底思えない。案の定俯きながらゆらりゆらりと肩を震わせ近づいてくる影があった。


「何回目だァ、まぐ夫から食らったの?流石にそろそろきちんと清算しておかないとコッチの気が収まらないよねぇ?」

 まだ目がチカチカしてるのだろう。朧気な姿を追う様にディッドがマグに近づいている。


「おい!今は戦闘中だ!揉めるのは後に………」

 無駄だと分かってるが一応制止しようとはしてみた。結果的には無駄だったな。避ける間もなくディッドの鋭いボディがマグの腹にめり込んでいった。戦闘中に何やってんだよ………


「ぐへっ!」「うわっ!」「何だぁ!?」「目が〜!」

 ディッドは律儀にいつも通りのボディを繰り出した。毎回の如く狙われてる腹にはマグの手が待ち構えていた………爆弾握って………  うーん、ディットのパンチとマグの爆弾の合わさった威力はまとめてマグに行く訳だからな、普通の生物なら死んでもおかしくないだろう。でも変態は死ぬこと無いから心配はしてやらない。で、煙に巻かれて煤だらけのディッドが目をパチクリしながら立ち尽くしている。カウンターをモロに受けた事を理解したのだろう、髪の毛が逆立ち始めている。このままだとあと数秒で大爆発してしまうだろうな。それとデカブツうるさい、いい加減に閃光弾を反射的に直視するな。


「へっ!ザマミロ。ただやられてばっかりだと思うなよ。」

 だから焚きつけるなよこんな時に。しかも、普通だったらそっちの方が致命的だからな。


「ほほ〜、コッチが優しさで顔面張らないでやってんの利用するとはいい度胸してんねぇ〜。もう一回同じ事ができるか試してみないとね………」

 ほら、時と場所を問わず乗ってきたじゃんか。


「おい……お前ら今の状況分かってんのか?戦闘中に何やってんだ?そんなことは全部終わった後でやれ。正直まだ一体も倒し切ってないんだぞ?甘く見てないで終わりまでドラゴンに集中しろ!!」

 トドメ担当(強制)の俺が言うのも何だが、このまま長期戦にもつれ込むと俺の精神力が破綻するだろう。先に進まない状況に業を煮やし、思わず声に出してしまった。


「だってさ〜、まぐ夫がちゃんとしてくれない上にコッチの事汚してくれたんだよ?」

 汚れだけで済むオマエ等が不思議でならないよ。


「行き過ぎた所があったのも確かだが、ディッドと違ってドラゴンの速さに反応しきれない事の対応だと納得してくれ。それに無駄な体力使ってる場合じゃないかもしれないぞ。もしかしたら、さっき回収された負傷ドラゴンだって戦線復帰してくる可能性だってあるだろ。」

 言ってる傍からそこいらに転がっていたドラゴン達は回収済みになっていた。だが、直ぐに復帰できる位の軽傷のドラゴンはほとんどいないと思う。この戦場での頭数は確実に減らしている筈なんだよな。


「またまた持ってかれてる!逃げ足早すぎるだろ!ちきしょー!!真面目に戦う気ないのか?コノヤロー!!」

 稚拙な罵声を発してる不真面目に戦ってるバカがいた。傷ついた仲間を守って生きて返すのは人間としてでも当たり前の事だ。それをこのドラゴン達は正しく遂行していた。分かるか?ディット。お前なんかよりずっと人間っぽいことをドラゴンがやってるのに、お前ときたら………………はぁ。


「キャオーーーーーーーーーッ!」

 甲高く澄んだ鳴き声が辺りに轟いた。多分、大将格の個体が何かしらの指示を出したのだろう。さっきまでの汚い悲鳴を上げてたドラゴンは下っ端だったって事か。どうでも良いことだが、やはり上位クラスになると声も体色も格別に良くなるもんなんだな。カリスマに溢れているよ。


 離脱者を運び終えたドラゴン達が、こちらに戻る手前で180度方向転換をし森へ消えていった。今ここにいるドラゴンはレッドパールの輝きの鱗を持つ大将格の一体と黄金色の鱗の一体、合わせて二体のみとなっていた。


 これは………部下を逃がして殿を受け持つって事か?仲間が見えなくなったのを確認してゆっくりと俺達に視線を向けてきた。黄金色の方は一度は退却を命じられたっぽかったのだが、大将と一蓮托生の覚悟にてここに残ることを決意したらしい。しばらく揉めていたようなのだが、最終的に大将が折れた感じだった。


「面白い。ホントに面白いね〜♪いいよ、思う存分やり合おうよね!」


「いいですね!この緊張感。空気がヒリヒリして背筋がゾクゾクしてきました!正々堂々とお相手致します!」





 ………なんかウチのは共感したっぽいな。このウチのを含めた〈四匹〉に俺ら他の人間が介入する余地は無いと思われる。





 楽しそうだから勝手にやらせとこ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ