第69話 戦局
「アル!何ボーッとしてんの?早くトドメ〜!」
自分が一番、バカディッド。
「想像以上に効きました!今なら安全に倒せますよ!」
周りが見えない、デカ肉団子。
「苦痛に藻掻いてるだけで死ぬ訳じゃない。暴れ出すかもしれないから急所へ一思いにやってくれ!」
焚き付け屋、ヘンタイサイエンティスト。
何でオマエ等同時に攻撃してんだよ?デカブツに任せて様子見る流れじゃなかったのか?しかも各々しっかりダメージを与えられてんじゃん。正直、俺の出る幕無いんだけど………
「ふざけんなっ!!一気に三体も対処できる訳無いだろっ!!お前らの攻撃ちゃんと効いてんだから各々最後まで自分達で責任持てよなっ!!!」
危ない、危ない………ここでもし万が一俺がどれか一体にとどめを刺せたとしよう。だが、他の二体のドラゴンの担当は………
パターン①ガチギレ、面倒くさい。
パターン②しょんぼりする、面倒くせえ。
パターン③拗ねる、クソ面倒。
どれが出てきても本気で面倒臭い。何で俺にトドメを刺して欲しいのかを納得いく形で教えて頂きたい。結局何かしら理由を付けて断るのは別問題としてだ。
にしても、デカブツのあの武器もヤバい事になってんな………ドラゴンの表面は硬いからまだ良かったけど、もしも普通の生き物にクリーンヒットしたものなら………水風船が破裂するように辺り一面血飛沫が飛び散るんだろうな………
基本は前には出ないだろうから良いんだけど、万が一前衛でアレをブンブン振り回したら………地獄の鬼にしか見えないだろう。
つうか、そんなハンマーに飽き足らず、怪しい装置を作ってた奴がいるんだよ………何なの?あの怪光線。あからさまに火炎放射と違くうよな?光が当たった所が燃える前に焼け焦げるなんて見たことも聞いたこともないんだけど………鱗の下が炭になってる匂いが辺りに充満している。やはり苦しみを与える事に快楽覚えてんじゃねえのか?どうしようも無く趣味悪過ぎるだろ………軽蔑してしまうからな、もうとっくにか。
「ああ〜っ!何するんだ、やめろー!」
うわっ、いきなり叫ぶな!心臓止まったらどうしてくれるんだ!! 何だ?また別の攻撃か?ディッドが慌てる様な事なんて俺は対処できないぞ。
ドキドキしながらディッドに目をやると、先程しこたまやられたドラゴン三体が仲間に鷲掴みにされて戦線を離脱した所だった。
「ちくしょー!また掻っ攫われた〜!もう絶対許さないからね、絶対潰してやる!!」
何で優勢な状況なのにキレてんだこのバカ。俺は命拾いできてホッとしてんだよ。相手の闘志を燃やす様な言動は慎しんでくれよ、バカタレ。
「失態です!折角アルさんに花道用意できると思ったのにこんな事になるなんて………こうなったら片っ端から叩いて行きます!アルさん!準備は良いですか?」
良い訳無いだろ、俺の凄い嫌そうな顔分かんないのかな?デカブツ君。こういう時に都合良くそっぽ向くのやめてくれ。
「深追いするとやり返されるかも知れないだろ!甘く見てるとしっぺ返し食らうかもしんないぞ!」
どうせオマエ等はなに食らっても死なないだろうから少し痛い目に遭って欲しいんだけどな。でもまず狙われるのは? そう、俺。うむ、ドン詰まり。
「熱は効いたが爆発とかだと燃える前に逃げられるな。ビームは……あ、ビームって言うのはさっきの熱線な。まだ一点集中しかできないからやはり致命傷にはほど遠いな。やはりアルが………」
この変態もまだ諦めてないのかよ?苦しみ藻掻いているドラゴンの急所に狙いを定めた一撃を食らわす腕は俺にはないんだよ?分かれよ!いい加減に。
「細かい事に拘ってんじゃねえよ!また違った動きし始めてるぞ!ちゃんと状況把握に集中しろよな!」
だめだ。作戦やら連携やらもへったくれもない。勝手にやりたいことを心のままに行動に移す三人と、ただ一人報われない叫びを響かす俺。眼の前の魔物の方が次々と息の合った攻撃を織りなしてくる。そんな現実に悲しくなってきた、人間として。
流石に近距離は分が悪いと感じたのだろうか、ドラゴンの攻撃パターンが距離を取った攻撃に変わっていた。いわゆるヒットアンドアウェイって奴だな。しかも一人に対して二対で仕掛けて来る念の入り用だった。上下、前後と挟み撃ちにするように狙って来ている。
「ふふふ!良いね!だけど無駄だよ!どんどんめくっちゃうからね!」
ドラゴンの動きってさぁ、すごい速いんだよ。洞窟に逃げ込む時に見えない距離から一気に真後ろに詰められたんだよな。今も見えない程の上空から一瞬で狙いを定めて降りてくるんだけど………何で反応できるんだろう?ディッドは。交差する時に相手の力を利用して鱗の隙間に刀の刃を滑り込ませていく。勢いの止められないドラゴンは一気に大量の鱗を自分の力を利用されて削ぎ落とされていた。
「うおおおおぉぉぉ!」
で、このデカブツも異常な目をしてるんだよな。ドラゴンが攻撃を狙った先から絶妙に体をずらし、ぐるぐると鉄球を振り回し命中させている。流石に先程みたいなクリーンヒットまではいかないのだが、ダメージを受けてドラゴン達の動きは止まっている。
だが、問題は俺とマグも狙われているだろうという事だ。俺達はあのスピードには絶対に目が追いつかない。とすると……今、正に俺は大ピンチだよな?ふと隣のマグを見る。
「見るなよ。墜とす。」
嫌な予感を纏った一言を発した後、マグは弾を握り潰し空に向かって手を挙げた。
「ちょっと待て!いきなり過ぎ………」
マグも目で見て確認ができないからだろう、余裕がないのは分かる。分かるけど、構える時間も欲しかったよ。何とか目を逸らしたものの、瞼の向こうが真っ白になるのが閉じた目にもはっきりと分かった。
ドラゴンの苦悶の声が聞こえる。と、同時に空から墜落してきた重い音も地面に響く。
時同じくして二人の人間の悲鳴も上がった。




