第68話 探り合い
思う様に戦果を上げられないドラゴンなのだが、未だじっくりと俺達を観察している。まだまだ攻撃のバリエーションは残ってるとの如く戦況の確認を深めている様だった。
「上空からの遠距離攻撃は終わった様だな。流石にあの石粒もう一回分は用意してないだろうよ。」
一度効かなかった攻撃を続けないと思ったし、結構な量使ってきたのでもうストックは無いと踏んでいた。
「!気をつけて下さい!後ろの方で何か動きがあります!」
ラッキーが注意を促したと同時に何体かのドラゴンが前衛の後ろから飛び上がり、空中でボレーシュートを決めるような動作をし始めた。その鉤爪には長い枝の様な物を持ち、ラッキーのお株を奪う鋭さで投げ付けてきた。
「おい、凄いヤバそうな雰囲気ががするんだ………け、ど〜〜〜〜ぅわぁ!」
俺の脇を掠めたのは枝なんて生易しい物じゃなかった。ナイフと言って差し支えない長く鋭い黒曜石であり、紛う事無き殺傷武器だった。
「連続で来ます!気を抜かないで下さい!」
ラッキーが緊張し叫ぶ。何だよ連続って………。見ると中央に大きな実?(ココナッツみたいな)を掴んで空中に停滞しているドラゴンがいた。ただ、その実にはウニの様に棘が生えていた。いや、めちゃくちゃ大量に黒曜石のナイフが刺さってる!?
コイツ等当たり前の様に色んな道具を使いやがる。しかも、加工まで施して効率まで上げている。さっきの石礫だってそれ専用に加工した物を使ってたから物凄い量の雨になったんだろう。
投げては旋回し、抜いてはまた投げ付けてくる。一定のリズムのローテーションで行動してるのでナイフは連射で襲ってくる。しかも正確に俺達に向けて。
「ふふ、凄いね。下手な人間よりかよっぽど戦い甲斐があるよね。まだまだ面白くなりそうだよ。」
ディッドは刀で黒曜石を弾き飛ばしながら何事も無いかの様に前進をして行く。その隣には調理用の鍋を盾にズンズンと進んでゆくでかい背中。俺とマグは二つの壁の後ろで恩恵を授かっている。
「マグ、どうする?音とか光とか試すんならちゃんと前もって言っておいてくれよ。自爆したらドラゴン相手じゃ致命的だからな。」
変態も例に漏れず行き当たりばったりだからな。
「ん?ああ、分かってる分かってる。じゃあ音から行ってみようかね…………」
やっぱりコイツ相談無しにやろうとしてやがったな。目が泳ぎまくってるぞクソが。
「コラッまぐ夫!つまんない弾使って白けさせないでよね。チマチマやらないで正面からちゃんとやっつけて欲しいんだけど。無理かも知れないけどね。」
人間相手じゃいつも小狡いのに何で魔物相手の方が正々堂々としてるんだよ。それ以前に戦力的にめちゃめちゃ不利なんだけど………このままだともうすぐ近距離戦になだれ込むんじゃないか?そうなったら数で潰されてやられちゃうよ、俺。
「うるせぇ!クソディッド!お前だってそのナマクラは通用しないんだろ?爆風の巻き添え食らわないように後ろで隠れてても構わないんだぞ。」
「いい加減にしろ!今しなきゃならないのはそんな事じゃないだろ!!相手を見縊ってんじゃねえよ!集中しろ!!」
いい加減我慢も限界になってきたよ。俺だけはあんなドラゴンに一発食らったら即終了なんだよ!俺のスタミナも舐めんなよ?持久戦になっただけで過労死するからな。
「相手はいくら硬くっても生き物には変わりないんだから、頭揺らせば脳震盪くらいおこすだろ。音爆弾は遠くから増援が来た時に、閃光弾は囲まれてどうしょうもなくなった時まで取っておくこと!使う時はちゃんと合図しろよ!弱点は口の中!鱗は剥げる!後は………俺の剣は当てにす…………」
「分かった。行くよ、アル! 止メは任してるんだから一匹残らずちゃんとやっつけないと怒るからね。」
一番大事な所を先に潰しやがったなバカディッド。その一言だけは俺を除く三人はいたく同意しているらしく、一斉にこっちに目配せし頷いてきやがった。俺への嫌がらせのコンビネーションは相も変わらず健在の様だな。それを戦闘に活かしてくれないか?マジで。
「それじゃあ私から行ってみますね!さっき作った武器もありますので試してみます!」
近距離戦が始まる雰囲気に一気にボルテージが上げ切ったなこのデカブツは。 大体さぁ、武器って名のある職人が丹精込めて鍛え上げた物が良いに決まってんじゃん?何故俺達は現地調達、現地生産しようとするんだ?今更だけど。
まあ、そこら辺の元凶はバカディッドなんだがな。命名含め竹槍から始まってるよな、確実に。
「この私の“ドラゴンハンマー”とくと味わって下さい!」
ほら、名前つけてるし………しかもおこちゃまレベルの安直さじゃんよ………少しは捻れよ大人っぽく。
チェーンの付いた鉄球に最初に倒したドラゴンの鱗が綺麗にびっしりと貼り付けられている。マグが飯の時、機械を使って一生懸命作ってたとの事だ。良かったな、この機械が仲間で。本体はどうでもいいけどな。
なんか変態が人の考えを疑うような目で見てきたから戦闘に思考を戻そう。
「うーーーー、があぁぁーーーーっ!!」
うるせえな。黙って叩きつけろよ。地面が抉れる程の強烈なステップインで一気に距離を縮め、捻り切った身体を回転させ鉄球を叩き込む。あれだな、ドラゴンのボレーシュートと同じ位の力の乗り具合だな。人間なのに。
「ァギャーーーー!」
ドラゴンは咄嗟に脚でガードした。硬くて鈍く光る鱗を持つ表面は何ともないのだが、内部に衝撃は確実に伝わっていた。脚の形は歪になってしまっているので、おそらく骨はバラバラに粉砕されているだろうと分かった。立ち上がることもできないでいて地面に伏せって苦しんでいる。
「ィギーーーーー!」
もう一方ではディッドが刀を下から振り上げ鱗の下に滑り込めせていく。前の木竜の時は一枚ずつしか剥がせなかったのだが、一気に五枚剥きを披露してくれた。そのドラゴンは経験した事の無い痛みなのだろう。動揺し、悶絶している。
「ゥギョーーーーー!」
マグの機械から砂煙の中に一筋、真紅の光が伸びる。いつもの砲口からじゃなく、脇に増設されたレンズの様な物が付いた筒から発せられていた。光が当たった鱗は黄色、赤、白と目まぐるしく色が変わり焦げ臭い煙を立ち上げていた。強烈な熱さなんだろうな。生きたまま焦がされるなんて考えたくもないよ。転がり廻ってうずくまっている。
(((さあ!)))
バカデカ変態トリオが今こそ俺の出番だと振り返り無言のまま眼で合図を送ってきた。
さあ!じゃねえよ。オマエ等そのまま致命傷与える事ができるんじゃないか?わざわざ止め刺す余白残してんじゃねえよ!しかも三体同時になんて俺ができる訳ねえだろうが!
俺はたじろぐ事しかできず、ただその場で固まったままになってしまっていた。




