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第65話 思った通り

「よしっ!行くぞ、俺から離れんじゃないぞ!」


 全く困った奴らだよ。俺がまとめてやらないと各々がてんでバラバラになっちまう。皆で力を合わせて確実に遂行するやるべきミッションがあるはずだったろ?一番重要なことを忘れんじゃないよ。







 そう、俺の身の安全を全力で確保すべきと言う事だ。







 分かってんのかな、コイツ等。バカと筋肉と変態が雁首並べていやがったのに俺一人をドラゴンから守ることができなかったんだからな。しかもこれからそいつらが群れをなして襲い掛かってくるんだろ?なんだろうな、パーティーがまた一つに戻ったのだけど全く安心感がない。背中を預けてる感じが全くしない。寧ろ後ろからフレンドリーファイヤーを食らう予感しか全く無い。全く全く全くもって不甲斐ない奴らめ。





 俺は小脇に抱えられながら現状に幻滅していた。そして悪魔のキャッチボールが再開されたのであった。










 ……俺の足下には土がある、草がある、そして感覚がある。そう、この崖を踏破したのである。何もしてないだろうと思うだろ?ふざけんなよ、どんだけの恐怖を俺が味わったのが分かるか?いつ発狂してもおかしくない状況を良く耐えきったと感じている。そういう意味では正しく俺の力(精神の)で踏破したとの認識で間違いは無い。



「アル!何ぼーっとしてんの?次!洞窟!洞窟行くよ!そんなに疲れてないでしょ?ほら、行くよ!早くしてよ!」

 そうか、お前は精神ごと根こそぎ葬り去りに来てるんだな。俺の事を労う気がないのは分かっていた。今日は俺を生かす気が無いことも分からせてくれたよ。


「アルさんは後からゆっくり着いて来て下さい!私とディッドさんとで様子を見てきます!いつどこでドラゴンと出会うかも分かりませんしね。アルさんはその時の為に力を温存しておいて下さい!」

 デカブツ、お前もやっぱり大バカだな。なぜ後ろから襲ってくる事があると予想できない。以前それで痛い目あっただろ?……俺が。  と、なると………今度こそちゃんと死ぬんだろうな………


「マグ、このパターンって見覚え無いか?」

 

「ああ、人間とドラゴンの違いはあるがシチュエーションの流れは一致してるな。」

 離れた所から俺達の様子を伺ってる気配がする。ここには奇跡の魔法使いもいなければ山を下るにも時間がかかる…………もしも深手を負ったら……ヤバイヤバイ!!


「マグ!急げ!アイツ等から離れるな!多分遠くから狙われてる!孤立したらやられるぞ!」

 気持ち的には嫌々だが命は大事だ。三半規管がやられてフラフラなのだが必死に真っ暗な闇の境界へと走る。マグは機械で後ろを警戒しつつ俺と距離を開けずに並走している。

 

 洞窟の入り口は狭かった。人間一人分の間口しかなく滑り込む様に暗闇へと進入した。


「何も来なかったな。まあ、警戒するには越したことは無いからな。」

 マグが拍子抜けとばかりに一言発した時だった。


「ぐわっ!」

 マグの身体が弾け飛び、前のめりに地面に叩きつけられた。怪我はしないだろうから心配はなかったが、一瞬にして現れたドラゴンの運動能力に唖然となった。


「危ねえ!マグ!もっと奥に進むぞ!」

 ドラゴンは狭くてこの先は入ってこれない。が、もうそこにはドラゴンの気配は残っていなかった。


「これ以上は無駄だと分かって撤退したのか……だとしたら知能レベルもかなり高いんじゃねえか?熊でも虎でもこういう時はずっと入り口をバカみたいにガリガリして執拗に追っかけてくるのにな。」

 多分人間的な思考回路なんだろうな。下手すりゃプレッシャーを与える為だけに来たのかもしれない。


「ん……ちょっと認識を改めないとな。想像の倍以上素早いとなると捕捉しきれるかどうか………しかも硬度も筋金入りだしな………うーむ………」

 マグの攻撃手段では今まで通りという訳には行かないのだろう。さっき倒した個体はデカブツの弾を避けようともしなかった。自分の防御力に絶対の自信を持っているのがありありとしていたもんな。その中でも聖剣の斬れ味は想定外だったんだろう。ドラゴンも俺も。


「流石はドラゴンが住み着いてから数百年間奇跡の石が採掘できなかった場所だけはあるな。こんな事クソディッドに言ったらテンション上がって面倒臭いから黙ってたけどな。」

 何で黙ってんだ、クソはお前だ。


「おい………それじゃあ何だ?……俺達が今やってる事って伝説級の偉業なんじゃねえの?……えっ?……」


「そうだな。見る者が見たらそうなるかもな。」

 いや、誰が見てもそうだろ。


「自分らなら問題無いと思って受けたんだが少し考えを変更しないと苦戦するかもな。」

 余裕で敗戦できるだろ。自信過剰な変態って救いようがねえな。先行してる二人に早く追いつき作戦会議をしないと………


 薄明かりの中、追いついた二人に声を掛ける。振り返った顔は不気味な笑みを湛え、異常な空気を漂わせていた。そして実際に漂うは足元に転がった肉片からの血の匂い………








 作戦会議は諦めた。








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