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第64話 リターン

「お前さ、俺がドラゴンと戦ってたの遠くから観てたんだろ?」


「うん。頑張ってたね。えらいえらい。」

 イラッとした。


「キンキン剣が弾かれてる音とか聞こえてた?」


「凄かったね。学芸会でトライアングル鳴らしてるみたいだったよ。」

 ムカッとした。


「で、何の為にラッキーに投げ飛ばされてここ迄来たんだ?」


「アルが一人でドラゴンと戦うのなんて滅多にないから近くで見たいじゃん。」

 はぁ?てなった。


「前を塞がれて邪魔臭いから蹴っ飛ばしたら刺さっちゃった。イラッとしてムカッときてはぁ?てなったよ。」

 成る程な、感情のシンクロ率はとてつもなく高いのは分かった。なのに何故俺の心の内が分からないのか、このバカディッドは。


「この剣もさぁ、あっさり刺さっちゃダメだよね。もっとなんか盛り上げるとか空気読んで欲しいよね。」

 あっ、突然の流れ弾で柄を握る俺の手にドス黒い感情が流れ込んでくる。残念だな、褒めて貰えなくて。でも、俺はとても感謝してるよ。それで何とか我慢してくれないかな。


「………もしもヤバくなったらこの剣渡すから、それでしっかり守ってくれれば文句は言わないからな。」

 どさくさに紛れて渡してしまえば案外気に入るかも知れないし、そうすれば聖剣というか邪剣と言うか………俺が見合わないこの剣から解放されるかも知れないしな。


「えっ、ヤダよ。全く趣味じゃないからソレ。なんか気持ち悪いから触りたくないしね。コッチにはカルテット柱がついてるから必要ないよ。」

 うわぁ……禁句だよそれは………聖気も邪気も抜けきってただの呆けた鉄の棒になってしまったかのような感じがした。


 これ以上は何を言っても進展しないのは目に見えてる。どうでもいいから元のルートに戻ることに集中しよう。


「で、あっちの二人の所にはどうやって戻るんだ?」


「分かんない。」


 即答かよ。マジに何しに来たんだコイツ。結果が良かっただけで何一つまともな行動理念が無いんだけど。そんな話の終わり間際に俺達の乗っている台地の縁に金属の鉤爪が打ち込まれてきた。そこに繋がるワイヤーの先にはマグの機械があった。何だかんだ役に立つよ、ウチの人間以外は。




「あっちに繋がったのは分かったけど、どうすればいいんだ?コレ?」

 結構な距離があるな。ジップラインみたいに滑るしか無いかな………この谷凄え深いし、ワイヤーの強度は大丈夫だと分かっててもチビッと数滴やってしまいそうである。




「それじゃあ行くよ。アル、忘れ物ないよね?」

 忘れたい出来事なら沢山あるんだけどな。


 俺達の横にデカブツが投げた滑車みたいな物が転がった。相変わらずいいコントロールだな。拾い上げて使い方を考えてみる事にした。


「行くってこれをどうやって………あっ……」

 慣れた手つきで俺を小脇に抱えて自然に谷間に向かって歩き出す。歩き出す?歩き出す!!


「おおおおおおおおいいいいぃぃぃ!!!」

 まず俺はペットじゃない。その持ち方はどうなんだ? ってそこじゃない。項垂れた俺の視線の先は落ちてる最中に10回は走馬灯が見れる高さの闇しかない。人って空飛べるのかな?と勘違いしちゃうよ、俺。


「アルうるさい。静かにしないと投げ落とすからね。」

 鬼がいる。ドラゴンに掴まれて攫われてる時より人生の終わり感がヤバイ。何で俺を抱えた上で、この高さで、ワイヤーの上で、何事もなく歩いてんの?……………おいおいおい!ふざけんな!!ワイヤーの上を滑走するな!ちょっと慣れたから遊んでみた。じゃないんだよ!万が一、バカがミスったとしてもバカは何とかワイヤーを掴めばどうにかなるだろう。その時は俺は遠ざかっていくバカを見ながら闇に引き摺り降ろされて行くんだろうな…………




 ほぼ詰んでんじゃねえのか?俺。




「ひゃっほ〜〜〜い!うほ〜〜〜ぉ!」

 楽しいですか良かったですねアナタには全く共感できるトコロがありません。こんな光景をこんなスピードで見る日があるなんて思ってもみなかったです。ついでに結構な滴が溢れてます。…………いや、溢れたのは涙だけだからね………俺の尊厳的に、多分。




 時間で言ったらあっという間だったのだが、その分俺の寿命がガッツリ縮んだ気がする。






「おお、お早いお帰りだな。そうやって戻って来れるとは思いもしなかった。アルが白目剥いてるけど辛うじて生きてるからクソディッドの事は許してやるよ。」

 マグが何か言ってるが俺の頭には届いていない。


「素晴らしい体幹です!ディッドさん!ちょっと私もウズウズしてきたんですけど、流石に今のアルさんを連れていけないので次の機会には私にお願いします!!」

 いい加減にしろバカ筋肉。俺を同乗させる意味なんかあんのか? あれか?嫌がらせか?それとも俺の魂を刈り取りたいのか?悪いけど俺はデカブツのうっかりに絶大の信頼を置いている。手を滑らせて谷底に葬り去られるのは想像に難しくない。


「ふふ、いつでも挑戦を受けるよラッキー。負ける気はさらさら無いけどね♪」

 勝手に競技化してるんじゃない。甚だ心外でしかないよオマエ等には。負の要素は俺にしか掛かって無いだろ………


「アルが戦ってたドラゴンだが、群龍って奴だな。さっきの個体が成体の大きさだから、あれサイズを纏めて相手することになるかもな。仲間意識が高いから必ず報復に来るからな。」

 倒した敵の素材やら肉やらは、さっきの台地からディッドが投げてデカブツがキャッチしていた。俺達が合流するまでの間にマグが色々調べていたようだ。







 ………群れ………仲間………報復…………って、俺は獲物として襲われた方なんだけど……逆恨みだよな、それ………勝手に周りで盛り上がらないで頂けませんか…………ねぇ………


 被害者って俺だけだよな…………

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