第58話 夜戦
ナイト、それは夜のこと。そして今は正に夜。そんな夜に行われること、それがナイター。
「あ?
今日の最終レースは終わったんじゃなかったのか?」
「日中は、な。主催が変わって夜にもレースがあるらしい。ディッドがたまの息抜きも必要ってアルも言ってくれたから大手を振って向かえるって言ってたぞ。」
そうだな。言ったよ、俺。実際次の機会には前もってきちんと線引きをしてギャンブルさせようと思ったんだよな。
今日だとは思わねーだろ普通は!!二段構えで追い打ちかけんじゃねえよ!!次回への間隔が2〜3時間とか想像だにしてねえよ!!
………て、言うことは………ああ……やっぱ全財産無くなってる………アイツにとってはアレは最終レースじゃなかったから抑えられたんだな。……はぁ、……納得してる場合じゃない!手遅れだとしても諦めずにはいられない。
「えっ?アル!待ってくれ!……… 」
マグが呼び止める声がしたが俺は飛び出して行った。一分一秒で状況は変わってしまう、今までそれで何回苦渋を飲んだことか。っと、やはり足がおぼつかない。頼む…後少し頑張ってくれ、俺の脚。
街は昼間とは違う風景を映し出していた。様々な色に飾られていた街並みは夜の帷と共に色合いを潜め境界線を曖昧にする。家々から漏れる儚い灯りを頼りにおぼつかない記憶の中の路を辿る。
「きゃあっ!」
「うわっ!」
暗闇から急に人影が現れぶつかりそうになる。道の真ん中を走っていたつもりだったのだがかなり蛇行していたらしい。衝突は免れたものの俺は受け身もろくに取れずもんどり打って地面に伏せっていた。
「だ、だ、大丈夫ですか!怪我は!?ちょっと見せて下さい!」
いやいや、悪いのは俺の方なので気にせず行って貰おうと謝罪をすることにした。
「すいません、急いでて周りが見えてませんでした。そちらこそお怪我が無い様でしたら俺の事は気にしないで貰って大丈夫です。」
「そんな訳にはいきません。結構な勢いで転倒しましたから怪我の確認をさせて下さい!」
おっと、思った以上に突っ込んで来られたな。とは言ってもここら辺は灯りが乏しく確認もへったくれも無いと思うんだけどな。
「ちょっと待ってください…………えいっ!」
何やら少し集中したかと思ったら握った手を開きひと声発した。すると手の上から放射状に優しい光が辺りを照らし出した。
「え?なんだ?コレってもしかして………」
ふいに目の前に現れた現象に俺の心がざわめき出した。
「はい、わたしの固有魔法です。でもコレくらいの光を出すくらいしかできなくて………周りからは”蛍光”って言う魔法名で呼ばれてま……」
「うおおおおぉ!凄い!本当に魔法だ!!」
「ふぇ?いえいえ、そんな大層なものじゃないです……皆んなからも何に使えるのかといつもからかわれてる様なものなので………」
「いやいやいやいや!何を言ってるんですか!こんな魔法、俺には眩しすぎてしょうがないですよ!しばらく眺めさせて貰っていいですか!?」
「えぇ~そんな、やめて下さい〜……そんな事言われた事無いので困ります…………もう~……ふふ〜♪」
本当に余り褒められた事が無いのだろうか?こんなに凄いのに。何か大事な事を忘れてるような気がしてるがそんな事より目の前の魔法のほうが大事に決まってる。照れながらも俺の怪我を手当してくれている手元を程よい明かりで照らしてくれているこの魔法。いいな、こんな特別な力持っているのって本当に羨ましいよ。
違う!今はそれどころじゃない!なぜって………そうだ!バカディッドだ!競馬ナイターだ!早く行かないといけないんだよ。だ‥けど…俺の目の前で、初めてまじまじと見れる距離で魔法が唱えられている。ダメだ……ワクワクが止まんない……視線を外すことができない……
「はぁ、はぁ、、アル!どうした?怪我したのか?………と…君は?」
俺の後を急いで追ってきたのだろう、息を切らせてマグがやってきた。
「あっ、わたしがこの方とぶつかりそうになったのをあわやのところで避けて転倒してしまい、怪我の治療をしてるところなんですけど………」
ああそうだった。多分俺が魔法に気を取られて怪我を見せる状態まで行ってなかった気がする。
「そうでした!怪我を見なくては!わたしの魔法なんてどうでもいいですから早くお体を見せて下さい!」
随分とこの子の邪魔してしまったようだ。あいつらの事をガキんちょなんて言っていたけど、俺も全然ダメだな。テンション上がりすぎて目的を見失っていたなんて恥ずかしいよ。離れた場所から聞こえてくる歓声がイベントの終わりを告げているようだ。こんな遅い時間まで盛り上がってるな、まあ俺も盛り上がっちゃたけどさ。
終わったのかぁ!?ナイターレース!!
「おい!アル!しっかりしろ!おい……… 」
「もし!?もし!?どうしました!?…… 」
あれ?………意識が…………遠‥く‥




