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第57話 メイン

 広い、広すぎる。 そうだよな……あんなスピードで疾走るんだもんな。しょうがないけど観覧席も広すぎんだよ。こんな群衆の中からどうやって探せばいいんだよ………


 いや、良く考えろ。アイツラが遠くから悠然とレースの結果を見てられるはずがない。勝敗が目の前で分かる一等地に陣取るはずだ。そう、ゴール前に。


「いた、思った通りだ。」

 満身創痍の俺を放って置くことができなかったのだろう、マグも着いてきて肩を貸してくれている。


「成る程な。一瞬で見つけるなんて凄いな。それだけあの二人が恐ろしく単純なんだがな。」

 マグが俺の予測を感心したのだが、そんな単細胞'sを言い聞かせられ無かった事が悔やまれる。

 ………いや、待てよ?あのバカこの街に競馬場が有ること知ってたな!!アイツはギャンブルに関する情報は怖いくらいに頭に入っている。まさかここで遊びたいが為に俺に殺意を向けてたのか?!疲弊しきって動けなくなるのを計算に入れて………


「許さねえ、バカディッド。本気で俺を潰そうとしやがったな……」

 アイツラの場所は分かったのだが身体が言うことを聞かない。遅々として進まない自分にイライラしながら怒りが止め処なく溢れてくる。俺が起きたのは正午を優に超えていた。レースは何時まで行われるのだろうか?アイツは最終レースに必ず大勝負を仕掛けるはずだ。それまでに捕まえられなければ俺の敗北が決まる。




 敗北ってなんだよ?勝手に負けさせんじゃねえよ。


「畜生、マジで広すぎだろ…」

 熱狂した観客を避けながら一番盛り上がっている場所を目指す。その時耳を疑うアナウンスが聞こえた。


「さあ、本日開催のメインイベント!最終レース王国杯の出走準備が、今まさに全頭整いました!………… 」

 あ、終わった。間に合わなかった………うなだれる俺を慌ててマグが支える。そのまま気が遠くなり意識を失ったのだった。











 気付くと宿屋の部屋でベッドに横たわっていた。何だ、今まで夢見てたんだ。とんでもない悪夢を見てしまった。早く起きてバカ二人を制さないとな、正夢になってしまう。


「あのさぁ、アル。聞いて欲しいことがあるんだけど……」

 ディッドが話しかけてきた。どうせ競馬場にでも行かせてくれと言うつもりだろう。まあ、小遣いやってその範囲内なら文句を言うつもりはない。


「とりあえず全財産持って競馬場に行ったんだけどさ………」

 ………は?行った?過去形?あれ?夢じゃなかったっけ?え?全財産?    ?????




 結局カジノの時と一緒のことを繰り返しただけだったな。お互い大体同じセリフの繰り返し。なんだ、俺も成長してないな。ただ今回は最後を見届けていない。待っている結末を告げられる事を達観して待っていた。


「最初はさ、調子良かったんだけど何レースかやってたら見る見るお金が減っちゃったんだよ。」

 全くブレない話の導入部分だな。何回聞いても腹が立つ。


「それで、最後のレースで大逆転を狙ったんだけど……」

 俺の予想通りだな。ホント全部が全部ブレないな。


「でもさ、アルに心配かけちゃダメだと思って堅めを狙ってみたんだよ。」

 おや?いつもとちょっと違うな。だが、そう思うならギャンブルやめてくれ。


「結果は持ち出したお金に多少プラスになったんだけど、許してくれるかな?」

 おお、勝ったのか?そんな事あるのか!?俺は物凄く動揺したのだが、何とか表面に出さずに落ち着いた感じを出して言葉を返す。


「ふう……まあ、たまたま負けなかっただけだろ?自制できるのは分かったけど心配させないでくれるか?ギャンブルが好きなのは知ってるし、息抜きで楽しむくらいだったら仕方ないとは思ってたんだからな。」

 ちょっと心が軽くなったのか優しい言葉を掛けてしまった。しかし、今度ギャンブルに向かいそうな時にはやはり強めに制しとかなければならないと心に刻んどいた。悪ノリは治らないだろうからな。


「ふふ、いつも心配かけてゴメンね。今日は少し豪華にゴハン食べようよ。この頃アルは頑張りっぱなしだったからご褒美だね♪」

 うっ、確かに腹が減っている。しかも夕飯時なのか辺りにはいい匂いが漂い始めている。食欲に抗う事ができずその提案を受ける事にした。


 とりあえず危機は去った。と、思いたい。久しぶりに食べるちゃんとした料理に舌鼓を打ち緊張がほぐれていく。4人で他愛のない話をして緩く時間が流れていく。なんか楽しんでしまったのだがそのうちまたやらかされるんだろうなと思うと複雑だった。荒んでるな、俺。


 部屋に戻り再びベッドに倒れ込む。30分程だろうか、意識を完全に失ったのだが尿意に起こされた。事を済ませてまた寝に戻るとそこにはマグしかいなかった。


「あれ?二人は」


「ナイターに行くって言ってたぞ。」










?えーと…………何の?

 

 

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