第53話 あたま
子供のような声に自然と目線を下に振り向いた。?毛むくじゃらの足?
自分の目の高さに視線を移す。へそだよな、ここは人間っぽい。
見上げてみる。デカい山羊の顔が見下ろし覗き込んでいる。こんな置物無かったよな?
「ちょっと僕とも遊ぼうよ。」
ミスマッチな声が山羊から響く。作り物じゃないのは分かってる、現実逃避したかっただけだよ。3m位の身長の悪魔の姿が目の前にあるんだからな、小さい時本で見た悪魔の容姿そのまんまがな………
「うわああぁ!何だお前!いつの間に!!」
後ろから来るなんて聞いてないよ。そんな気配全く感じなかった。こういう時俺は少なからず嫌な予感を感じるものなのに…………だけど今は物凄く感じる、怒りでも憎しみでもない…ただ純粋に興味という俺達にとっての悪意を。
「アル!下がれ。」
マグが自爆をする、が悪魔には効かない。というか一瞬で回避された。
「ずっと見てたよ、面白いモノいっぱい持ってるね。」
ここまでの俺達を観察してた?ずっと近くにいたってことか?
「やっと楽しませてくれそうなのが来たんだからそう簡単に終わらせる気はないからね。」
なんか言葉の端々がウチのバカに似てるな。やっぱりウチのアレも悪魔なのか?そんな事を考えてる場合じゃない!何も仕掛けて来ないなんてありえないだろう。
「力が強い弱いじゃなくて人間の感情ってのを見たいんだ。弱点をいじると人間は面白いほど色んな表情を見せてくれて楽しいんだよね。」
弱点?俺は弱点しか無いぞ。じゃあ俺をいじるか?そうだよな、すぐ死ぬのは俺だよな。でもそうすると皆んな動揺するだろうな。という事はこのパーティーにおいての弱点は俺ってことか。
なんだよ!結局俺が狙われるんじゃないか!好きで弱点やってんじゃないんだよ。でもこいつら結局弱点剥き出しのまま守る気無いよな。だからこうなるんだよ!
「狙いは俺か?何する気なんだよ……」
良い答えは返ってこないのは分かり切ってる。取り敢えず少しでも時間を稼げないかと話を振ってみる。
「凄いね、一ッ目くん達があっという間にたくさんいなくなっちゃたね。今までは全然弱っちかったのしか来なかったのにいきなりこんな強いのが来るなんてビックリだよ。」
駄目だ、コイツ一方的に喋ってやがる……俺達と会話する気は無いってことか。という事は、気分でいきなり襲い掛かってくる可能性が高いな。
刺激しないようにしつつ剣に手をかける。こういう手合は正直に言葉を聞いてるとこっちの対応が遅れてしまうだろう。
「弱点いじるね。」
何の脈略もなく長く鋭い爪で俺を突き刺してきた。でもな、思いつきや脊髄反応で生きてるのはお前だけじゃない。俺はいつもそんな奴の相手をさせられてんだよ、甘く見るな。
「へぇ、反応するんだ。想像してたより良いね、君。向こうの人達もね。」
何とか剣で攻撃を受けれた。何気に値千金の時間を稼げたな。
「マグ!ラッキーの援護を頼む!」
まだサイクロプスは残ってる。デカブツは『一人』で多数を相手をすることは得意じゃないからな。タッグ変更だ、俺のパートナーはデカブツにぶん投げられて来た鬼娘だ。キッチリ俺の横に飛ばされてきやがった。ナイスコントロールだな。
「いいね。ちゃんといたじゃん強そうな奴。まぐ夫の事褒めてあげないとね♪」
鬼対悪魔か………思わずタッグって考えたけど、俺はパートナーじゃなくてセコンド……いやサポーターくらいかな?あんなのの間に入れる訳ねーだろ!
「あははは♪凄いね君!こんな人間初めてだよ!」
「あははは♪いいねいいね!魔物はこうでなくっちゃね!」
う〜ん、何だろう、恐ろしいほど実力が拮抗しているんだけど…………悪魔は長い爪を勢い良く振り回してくるのだが、その爪を一つ一つ丁寧にいなしていく。ディッドのちゃんとした刀捌き初めて見たかも知れない。大体一閃してお終いとか竹槍突き刺したりとかばっかりだしな。
だからいつも剣で戦えよ!……とは言いつつも今現在分が悪い。連続で斬りつけているのだが、あと一太刀という所でギリギリ攻め切れない。最終的に空に逃げて躱されてしまう。
「くっそ~、後もうちょっとなのに〜。」
このままだと体力的に追い詰められてしまう。何気に悪魔は俺にも攻撃を繰り出してくるので気を抜く暇もない。下手すると俺が先にやられてしまう。プレッシャーに押し潰されそうになって自棄になってしまいそうだった。
「そろそろ限界?終わらせてもいいの?」
悪魔が囁く。随分余裕ぶってんな、追い詰められているのだけど腹が立ってきた。
「ディッド!」
「!?、うん。」
お互い何となく分かるもんだな。ディッドの剣捌きのリズムには一拍間が空く瞬間があるのだが、その隙に悪魔は距離を取り攻めきれてなかった。なので、その一拍を俺が埋めることにした。しかし、その一拍っていうのが単調じゃないんだよ。戦うセンスなんだろうな、無意識に相手にリズムを読まれない身のこなしになっていた。
そんな不均等な調子に合わせるのではなく、ディッドの息遣いに俺は集中する。
「うおお、見て下さい!マグさん!!ディッドさんが呼吸するタイミングをアルさんが繋いでます!凄い!攻撃が全く止まってないです!」
サイクロプス御一行を二人で何とか仕留めてくれた様だ。離れた所でラッキーの声がした。
「マジで凄いな。動きに合わせてるって訳じゃないぞ、あれは。アルが完全にディッドの呼吸を読んでやがる。その上、アルの一撃の為だけにディッドが剣戟を繰り出してる様にも見えるな。」
悪魔に飛ぶ暇を与えずに完全に均衡した攻防になっていた。しかしこのまま行くと俺の体力が持たないだろう。畜生、やっぱり俺が弱点なんだな。だからもう少し仲間の力を借りても怒られないよな?
「マグーーーー!!」
俺の考えてることが伝わるのか?いや、分かるだろ?分かってくれなきゃ困るんだよ!
俺とディッドの背中あたりで鉄がぶつかった音がした。俺達は背中向けてるからな、凄まじい眩しさに目が眩むことは無かったよ。




