第51話 源
下り階段が続いていた。両脇には水を湛えた2m角のスペースがこれまた階段状に続いている。それでそこから発生するんだよ、ヌメヌメの魔物が。
「なんだこの魔物たち、俺達を見向きもしないで上の階目指すのか?」
発生した魔物は虚ろな目をしたままで上の階へ向かい出す。ここでは戦う気が全く感じられない。何体か攻撃して倒したのだが反撃すらしてこなかった。
「放っておいて大丈夫そうですね。無抵抗な相手を倒しても余り気分が良いものじゃないですし。」
ラッキーの言葉に俺も賛同する。先に進むのが最優先事項だな。気色悪い音をたててズルズルと液体を引き摺りながら動く魔物の間をひたすら降りていく。全くもってテンションの上がらない花道だな、悪意に誘われてると言われても納得してしまう。
「祭壇みたいな所が出たら最深部らしい。十中八九ボスがいるだろうな、しかも厄介そうな奴がいるんじゃねえかな。」
今までの報告と照らし合わせても異常な状態らしいし最後も一筋縄では行かないってことだろう。俺はこのパーティーの呪縛から逃れたいんだけどな。
「それにしても随分深いねぇ。この深さ丸ごと最後のフロアだったら凄い広いんじゃない?凄いでっかいのがいるってこともあるんだろうね。」
怖いこと言わないで欲しいんだけど。バカが単純に思いつくってことは余裕でそんな事あり得るって事だよな。この後思い知ったよ。
「おお〜、凄い空間ですね!この広さだったら巨人の大群が出ても収まりそうですよ。」
バカ2が単純なこと思いつきやがった。ホントやめて欲しいよ、デカブツの目はフシアナなので遠くは見えても雰囲気は見えないんだよな。身動き全くしてないけど敵対する気満々の雰囲気を。
「まぐ夫、花火用意しといて。ラッキーはアルのこと頼んだよ。」
流石にディッドは雰囲気を察したようだ、バカだけど野生の感的なものは鋭いな。
「んだよ?なんかいるのか?取り敢えず照明着けとくか。」
機械から一筋の光が伸び天井に張り付く。連続して発射した後に明るくに広がった光景で男三人が硬直した。
「目ぇ閉じてるけどあれって一ッ目だよな………サイクロプスってやつかな?初めて見た………」
「おかしくないですか?ここの出入り口くぐり抜けられる大きさじゃ無いですよ。魔物って遺跡の外に出るのが目的なんじゃないんですか?」
そうなんだよな、今までの話だと表に出てこの世界に顕現するのが願いらしいのにこの巨体は矛盾してる。今、生命感なく佇んでるのも他の存在の意思を感じる。
「やはり誘い込まれてたって事だろ?あの肉の壁の向こうに確実に何かいるだろうよ。」
10m近い巨体が理路整然と整列している。確かに壁だな、あっ目が開いた。
「うりゃ!」
バカディッドが斬りつけたからだった。
マグの兵器の先制攻撃のチャンスだったんじゃないのか!?何やってんだよ大バカ野郎!ちょっと突いて様子見ようってレベルの相手じゃないだろうよ!静かにしてる内に作戦練る時間あったんじゃねえのかよ!
「始めやがったやクソディド。ただな、余り大きな爆発だと四散した肉塊の流れ弾食らうかも知れないからな。くく、ど〜しよ〜かな〜。」
やはり変態は変態なんだな。興奮して目がイッてき出したよ。
「まあ、あのサイズだと頭か心臓狙うのがセオリーだよな、よし。」
マグは選んだ鉄球をラッキーに渡して指示を出す。
「二個目の弾は衝撃加えても爆発しないから思いっ切りはたいても問題ない。一個目の弾に接触するの絶対条件な。当たった向こう側に効果は広がるから手前のクソディドは気にしなくても大丈夫だ。」
「分かりました!頑張ります!」
ラッキーは狙いそ定めて放射状に弾を放つ。籠球の3ポイントシュートみたいだな。綺麗な弧を描いてサイクロプスの最前列の上辺りに飛んでゆく。
「ディッド!下がれ!攻撃が行くぞ!」
声を掛けた横でデカブツの強烈な運動エネルギーを感じた。前方に弾を投げ上げ助走をつけ跳び上がった。見事な海老反りから宙に浮かぶ弾を弾き飛ばす。排球だったら確実にサービスエースだな、レシーブした人間ごとぶっ飛ばされる位強烈な勢いだ。
‥………なんで俺達と一緒にいるんだこのデカブツ。もっと世界に夢と希望を与えるアスリートになれるはずだと思うんだけどな………
ゆっくりと落ちて行く弾に低く鋭い軌跡を描く球が接触する。爆散すると思ったのだが、二つの弾は空中で溶けて融合し奥に向かって怪しい霧を伸ばしてゆく。
「おい、何だあれ……」
マグに質問する。本意としては人としての倫理があるのかを。
「爆発させられないなら溶かすのもアリかなと思ってな。アルは人型にこういうの使うのは嫌だろうけどあんだけデカけりゃ人間よか別物だろ?」
なんだよ溶かすって、生き物に使って良いのは冷え切った心にだけだろ?俺とデカブツの心は慄いてるぞ、流石にこの光景はラッキーも引いている。マグを野放しにできない俺の気持ちを少しでも分かってくれると有難いよ。
「またエグいの持ってきたね。あとどれくらいで前線戻れば良いの?」
ディッドが戻ってきて効果の確認をしてきた。
「あと10分くらいは溶かし続けるかな。余り急ぐと一緒に溶けるから気を付けろよ。」
「おっけ〜。10分後に第二ラウンドだね。まだまだいっぱいいそうだから楽しめそうだね。」
雪だるまが晴れた日にドロドロと溶けていくのをただ眺めてる感じがした。ただ現実は生きた肉ダルマがうめき声を上げながら小さくなっている姿だった。




