第48話 遺跡
鬼は一体じゃないんだ、ウチにはもう一体ヤバイのがいたんだな。
「ふぅぅぅん!」
今回デカ鬼には爆発弾だけじゃなくマグの試作棘付き鉄球が渡されていた。ただ単に物理的な攻撃だけの道具なのだが、これはこれで恐ろしい………マグは純粋な力の暴力を見たかったのだろうか?只の石ころでさえ相手を爆砕できる攻撃力なのだが、この棘鉄球はそれに空気の渦も増幅するらしい。
「うわ……アレも非道いな……」
鉄球の当たった所は空間を抉るかの様に身体を削り取っていく。何の衝撃も無く自分の胸の真ん中に空洞ができる様だ。何が起こったのかも自覚できない内に倒れてゆく。しかも貫通力が半端じゃない、一気に4,5体まとめて喰らい尽くしていく。
「ラッキー凄いね!コッチも負けてらんないよ!行っくぞー5枚抜き!!」
オマエの道具は植物なんだけど…鉄に対抗するなら刀を使えばいいんじゃないのか? どうでもいいっか。こいつらは相乗効果で更に殺傷能力が上げてきてる………まだまだ底しれない恐ろしさがあるな。
「ふっふっふ。素晴らしいです、この鉄球!思った通りに変化掛けられますし、敵に当たっても威力が落ちないんですよ!」
「うんうん、凄まじいねぇ〜ここまでとはぁ〜思ってぇ〜無かったよぉ〜……‥ああ、いかんいかん、ちょっと刺激が強すぎだな。しかし、やはりラック君のコントロールだけでなくあの破壊力をどうにかして攻撃のぉ〜軸にぃ〜 げほぉ!」
マグの土手っ腹に魔物の腕がめり込んでいる。例え離れていても確実に任務は遂行する。なんなんだ?オマエのその無駄な責任感。こういう時はコントロール抜群だな、トロールの腕だけにってか?
はは、バカじゃねのか俺。もう壊れてるの確定だな。
「粗方終わったな。結局何体くらい倒したのか分からんけど、まあいいか。……ん?様子が変わってないか?」
死屍累々となり山と重なっている魔物の高さが徐々に低くなってる気がする。地面に飛び散った血の海もじわじわと床が吸っているようだ。
「外で倒した魔物は死体も普通に残っていたから、この現象は遺跡内限定のことなんだろうね。魔物は生まれるのではなく発生するっていう感じなんだろう。」
マグの推察を聞いて俺も考えた。遺跡の中で生まれた魔物は遺跡を出ない限りは生物として存在することができないって事か。だから必死に遺跡の外に出ようとするのかもな。
「そう言えばタク君が遺跡毎に特色があるって言ってましたよね。魔物が大量発生する遺跡って事はこの先もこんな感じなんでしょうか?それ前提で装備を整えた方が良さそうですね。」
ラッキーもちゃんと考えるんだな。ただポイポイ投げるだけかと思ったよ。多分それで合ってるだろうな、これ以上ワラワラ来られるのは俺は本当に嫌だけど。
「様子見も何もできないで戦いになったからな。あと、初っ端俺に俺にしたこと忘れてないか………」
「マグさん!弾の補充お願いします!他にも何が希望があれば言って下さい!そのうちサインとか決めといた方がいいかも知れませんね!」
………はぐらかしやがったなこのデカブツ。なんか、だんだん自分の欲望に素直になってきてないか?困るんだのこれ以上我が強いのが増えてもよぉ………時間の問題かもな…………
「扉開いたよ。あれ?外に出た。中庭みたいだよ。うひひ、また一杯いるよ♪」
やはり大量が続くんだな。しかも今度は縦に範囲が広がっている。要するに飛行可能な相手だってことなんだな。
「空から遺跡の外は出れないのか?」
囲いも何もないのでそのまま外に行けそうなのだが、そうもいかないらしい。
「魔物が外に出れるのは正面の入口だけなんだよ。だからそこに向かって来るのが基本なんだけど、遺跡の中で君臨し続ける魔物もいるんだって。そういうのがクセが悪いんだよ。」
マグさんよぉ、事実の共有遅くない?せめて俺だけには前もって教えてくれよ。確かに俺もやることないだろうから何も聞く気なかったけどな。
「上からって面倒くさいね。取り敢えずまぐ夫はなんか面白いもの出して。」
本当に面倒くさいんだな。
「それじゃあラック君、この弾を順番に投げて当てて反応させて欲しいんだけど。」
直径30cm程のいつもよりちょっと大きい弾といつもの大きさの鉄球を今回は使うらしい。
「余り近くで反応すると自分達にも被害が出るから30m位の上空で当ててくれるかい。」
何危険な香りを醸してんだ変態科学者。
「分かりました!ふん!」
疑問を持てデカブツ。信用しすぎると痛い目見るぞ、俺が。素直は美徳じゃないからな。
俺は慌てて地面に伏せった。何でお前らは平然と結果を見届けようとしてる?この変態の爆弾の威力知ってんだろ?
衝撃に備えて身構える。弾がぶつかったらしきこもった音が聞こえたすぐ後、もう一つ違う音が聞こえた。そう、音だけが聞こえたのだった。
「ぐわあああ、何だ?うるせぇ!!」
辺りは甲高い音が響き渡っていた。頭の奥に反響して感覚がおかしくなる。近くで音を食らった魔物は堪ったものではないだろう、ボトボトと空から落ちてきた。
「うわぁ!これは酷い。もうちょっと遠くで反応させないとダメだったか!完全に成功って訳じゃないけどまあいいっか。」
変態てめえ。またいい加減な確率で実験しやがったな。ラッキーは油断してたんだろう、結構ダメージを食らってる。
「うるさい!アホまぐ夫!!」
あのディッドも流石に音には耐性が弱いんだな。マジに怒りのパンチを繰り出した……変態の顔面に………て、おい………
「テメェ、何やってんだ?クソディッド?いいから早くそこに転がってるモンに止め刺しとけよ。さっさと次行くぞ。」
あれ?マグ…さん?
「なんだと?……言われるまでも無く処分するけど、最後にはまぐ夫に止め刺してあげるから、ね。」
変態ルーレット回っちゃったよ………お願いだから任務中の場所で面倒事増やすのやめてくれないかなぁ………




