第44話 もう十分
「ほら、行くよ!リハビリって奴をしなくっちゃいけないらしいじゃん?疲れたら背負ったりマーシーに乗せたりしてあげるから大丈夫だよ、ね?」
…ディッドよぉ、ネギラエ、イタワレ、キズカイしろ。そりゃ動かないといけないのは分かる。自分でも日常生活に支障が出るくらい体がなまってるのは感じる。
………なぜその上を行く〈旅〉でリハビリをしなきゃなら無いんだよ?トドメか?トドメ刺す気なのか?
「確かにね、次の任務の遺跡までは距離あるし、任務期間も迫って来てるしね。因みに改造した船もあるから身体の負担も最小限で移動できるから安心してね。」
無駄に器用な事やるんじゃないよ。国って怖えな、生きてる限り使い倒されんのかよ……
「あ~、分かったよ。一応俺の事もしっかり考えてるようだし、俺のせいで足止め食らうのも嫌だしな。でも、移動の間は俺のペースは守らさせて貰うからな。」
自己主張はしとかないとな。大体反故にされるけど。
「安心して下さい!私がリハビリのお手伝いをします!その暁にはアルさんも、筋骨隆々鋼のボデーを獲得できるように全力を尽くします!!」
おい、ナチュラルに殺しに来るんじゃない。こういう時、お前みたいなやつが悪気無く最悪なんだよ。身の回りの事だけやっといてくれデカブツ。
「ほう、もう行くのか?まあのう、今後の身体のケアの仕方はマグに教えておる。わしが施術したのにコロッと逝かれたら沽券に関わるしのう。おぬしはわしの大事な研究材料だしの〜。」
砕け過ぎだ、調子に乗るなよクソジジイ。前の事はどうでもいいと言ったが、今からはまた別の話だからな。まあ、たまには様子見せに来てやるから安心しろよ。
「それじゃあ船まで案内してくれ。あんまし変なのだったら俺は行かないからな。」
おいおい…なんだよコレは………ふざけんのも大概にしろよ……マグ、ちゃんと説明してくれ。ちょっと開いた口が塞がんないんだけど……
「国王からね、余ってた船一艘貰えたんだよ。マーシーを組み込めば結構な急流でも逆走できるようにしてあるからね、例え海に出たって大丈夫だよ。」
余ってたって………コレって軍で使ってる船だよね?大砲みたいの付いてるんだけど………ねえ、なに?何と戦わせる気?喜んでんじゃないよ、暗黙の意思を感じるんだけど……
「凄いよね!格好いいよコレ!よーし、コレなら河でも海でもドンと来いだね!」
どっちかって言うと海賊のほうが似合ってるよ、お前は。俺達は無法者じゃないんだよ?法の下の特殊機関員なんだからな。心してくれよ。
「リハビリ用のスペースもあります!機材は重くて持ち込むのは無理でしたけど、身体一つでできるメニュー作りました!少し見てみますか?」
見たよ、その前に俺の限界教えてやる。全盛期で腕立て腹筋背筋スクワット、15回2セットだよ?一応あれから少しは進歩してるんだけどな。ラッキーのメニューは……クイックに俺を殺りにきてるね。俺の何日分を一日に病み上がりにやらせるつもりだ? 却下だ却下!
「マグよ、おぬしには他の者には伝えてないことまで教えたんじゃからな。王都に戻った時は必ずわしに報告すんじゃぞ。待っとるからのう。」
切ない雰囲気出してんじゃないよ。要するにマグが勝手にフォネトの後継者にされたようなもんだな。不思議なもんだ。
乗船し出航する。取り敢えず渡し船の街に向かうこととする。あの探索隊に無事だった姿見せときたいしな。怪我人もいなかったようだし安心したよ。
「なに!俺魔法で生き延びたの?マジで?どうなってたんだよ?どんな魔法?……スゲェ、そんな事できるんだ!なんだよ〜見たかった!いや、これから会うかも知んないだろ?そうしたら見せてもらえるかな!?間近でちゃんと魔法見たこと無いんだよな、楽しみだな〜!」
なに白い目で見てんだよ、お前ら全員で。俺だってはしゃいだって良いだろ?そのおかげで俺は生きてここにいるんだからな!感謝してもしきれないだろ?
「なんか秘密にしてる魔法らしいからその事は言っちゃダメだからね。」
お前が秘密を守るとか冗談きついぞ。
「どこから情報が漏れるか分からないから絶っっっ対にその事は表に出さないでね。そういう約束してるんで。」
なんか意地でも認めようとしないのな……魔法に関しては頭ガッチガチに固くなるんじゃないよ、変態のくせして。
「私達がもっと本気を出してたら次の日には王都に着いてましたよね。魔法を壊しちゃいけないからその分余計な時間が掛かってしまったんですよ。」
例えそうだとしても移送中に全力の衝撃で死んでるだろうよ。やっぱ一番危険なのはこのデカブツだな。
「分かったよ!もうこれ以上言わないよ!取り敢えずそこにいるシーホース(淡水)をどうにかしろ!飛び乗ってきそうだぞ!」
「よ〜し、まぐ夫!大砲だ!打て〜!!」
「意味無く打つな!荒くれ者か!」
「よし!それでは、このぉ〜新しいぃ〜兵き ……ゴホぅ」
「急に興奮すんじゃねえ!お前も律儀にボディ入れてないで迎え撃て!」
「ちょっと距離が近いですけどガンガン衝撃弾当てていきますね!ふんっふんっふんっ!」
「ふざけんな!今は衝撃弾じゃねえだろ!石でいいんだよ石で!船転覆しちまうだろうが!!」
ダメだ、ホントにダメだこいつら。今での神妙な空気はドコ行ったんだよ?マジでガキだな。 …へへ…、まあ今だけはいっか。しょうがねえな、俺も少し前向きになってやるよ。
「いい加減しろ!おまえら〜!!」




