第100話『Freedom and justice descending(舞い降りる自由と正義)』 B Part
発射時の反動を重力制御にて無くした自動小銃『Leythemend』を持ち主であるレイ当人から託されたローダ・ロットレン。
レイ専用の拳銃を渡されたローダ。
彼の創造性が人間向けの自動小銃を人型兵器EL・Galesta用の巨大な銃に進化させた。さらに加えてレイの空間転移すらローダは創造力を以て如何なく発揮。
白いEL・Galesta専用の拳銃に転じた物を飛ばした。
銃毎、空間を飛び交う脅威。
ルヴァエル達の機体、RavinGrayの熱源等のセンサー類に依る包囲網の外側から抜け出して、弾丸を直接ルヴァエル機に浴びせた。
ルヴァエル、堪らず赤の輝きを扱い、ローダ機の銃撃を静止。避けられ胸を撫で下ろしたのも束の間。
避けた先に待ち受けていた金色のEL・Galesta──ルシア母娘専用機が、精霊術『勇気の精霊』の底上げも乗せた拳を叩き込んだ。
『な、何故だ? 如何してこんなに僕の動きを見破られる!?』
これ迄、一切負けを知らなかったルヴァエルの動揺を見事に誘い出したローダ一家。
ルヴァエルが放つ光──。
通常時の緑色、攻防一体の最も安定の取れた色合い。
総ての攻撃を避け切る朧じみた青色。
そして最後の切り札──秒にも満たないとはいえ、自分以外の周囲の流れを停止させる赤色。
「け、計算!? わ、解りませんよサイガン先生。時間停止が計算だなんて。これは現実、仮想世界やゲームじゃありませんよ!」
ルヴァエルが放つ輝きの力──これらは全て計算された結果だと、元エンジニアのサイガン・ロットレンは云い切ったのだ。
俄に信じ難い吉野亮一、ここぞとばかりに食ってかかる。例えゲームの世界であったとしても、チートが過ぎる出自怪しき裏技に思えた。
サイガン先生の語りを盲目に信じた彼の常識が、音を立て崩れ落ちた時。
「まあ、そう考えるのも無理はなかろう。だが私やお前とて生き物の意識を今もなお、電子の形で操ろうと模索しておる……」
「……!」
意志を持ったAI──人工知性『IRIS』の話を持ち出したサイガン。
人の意識を企画及び製作している自分達こそ異端である処から解説を切り出す。
それこそTRPGの取り仕切り役を気取る様な二人。人類に異能の切欠を授けた張本人。
ルヴァエルの色艶──。
緑色時は、相手の動きと攻撃の強度を瞬時に読み取り、それに合わせた硬度と行動性に反映させた。
次に擦り抜ける青、これは相手の行動パターンを読み解く方に特化。素早く避けて元の位置に戻るだけ。如何にも攻撃を透かされたように相手は感じ取る。
赤も同様──相手の動作を読解する能力を振り切らせ、目にも止まらぬ先回り。敵に合わせ込む行動を以て如何にも止まった様に見せ掛けた偽りに過ぎなかった。
「云うのは容易いの典型だ。奴の素早さだけ切った処で群を抜いておる。──ただ、人々を惚れさせ爆弾に錬成する異能。そして『暗転』とやら、アレは恐らく違う仕掛けだろうよ」
管制室にて両手を組み、枯れた頬を乗せ、陰気な顔でサイガンは話を〆括った。ルヴァエルの異能、暗転の種も粗方知れた老獪の仕草。
ブツンッ!!
ルヴァエル達の駆る『RavinGray』の無線を乗っ取ったサイガン達に届いた強制的に何かが切断された音。ヘッドホンを被ったドゥーウェンが鼓膜を揺すぶられた嫌気を顔に覗かす。
バチンッ!
次に何処かへ何かを直結させる弾けた音、これはサイガン達には決して届かない。
『ルヴァエル、いい加減に少しは落ち着きなさい!』
「──ッ!」
RavinGrayの無線傍受を強制排除したのはサイガンが裏の首領だと決めつけた青の魔導士──エルミュラ・フィス・スケイルであった。
慌てふためくルヴァエル機の操縦席内に轟く直通回線。普段自分が推してる相手を怒気帯びた声、呼び捨てで叱りつけた。
不意に怒鳴られたルヴァエル、瞠目と怒りが同時に降りかかった。
ルヴァエルの力を身勝手に過信して祀り上げてきた女から、母親の様な声を向けられた、少女の身なりを強要されたルヴァエルが覚えた理不尽。無言の歯軋りを以て答えに変えた。
レヴァーラの眷属と公言し続ける彼女達──眷属故に寄せた、黒髪三つ編みが大いに揺れ動く。
青の力を機体の速度に全振り、歪な脚部3本で駆け出す。土煙を共連れに一時的だが難を逃れた。
「ルヴァエルの動きが変わった?」
モニタにて戦況を把握し続けながら情報に変換し続けるドゥーウェン。金縁眼鏡の下、旧日本人の黒い眼にわざわざカラコンを重ねた虹彩が、驚愕に見開かれる。
「……」
面白くない顔のまま黙り込むサイガン先生。
敵機の無線を傍受していた──がっ、切られた。その後、この老人が敵側の首魁だと目論むエルミュラから、何らかの指示がルヴァエルに飛んだ想像が自ずと浮かんだ。
ヴァァァッ!
ローダ機、EL・Galestaの強みであるホバリングを全開。急に動きが良くなったルヴァエル機に負けじと追従。
白に輝くローダ機と、機体色である黒と異能の青を混ぜたルヴァエル機。人型兵器と黒豹を模した扉の候補者決戦兵器。両機が並びながら戦場を滑走するドッグファイト。
「……!」
一見切れ味鮮やかなローダ機の追従。けれどもサイガンは、真顔を僅かに歪め、閉じていた口を『あっ』と開いた。不肖の息子の判断にサイガンは難色を示す。機体状況を表示したモニタを覗き込んだ。
「何故だローダ、レイから借りた銃を飛ばせると云うのに。それでは機体に無駄な負担をかけるだけだ」
ローダ機は操縦者が用いた呼吸術により機体性能を2倍近く引き上げているのは前述した通り。
次いでに語ればルシア母娘の駆る金色のEL・Galestaとて、勇気の精霊や、風の精霊術『真なる自由の翼』を機体に再現──此方も操縦者の引き上げが著し過ぎる。何れも危険な爆弾を抱えていた。
──『ククッ……相も変わらず小賢しいな、我を造りし爺』
ローダ機の無駄な行動に気を取られていたサイガン・ロットレンの魂に直接響いた、嘲笑を交えた艶めかしい大人女性の声音。黒い気配も同刻に漂う。
「……はて? 誰かのう? 私が造った黒い存在は男だが」
わざと惚けを演じた老獪、耳が遠くなった仕草。異端なる意識だけの客人を迎い入れた。
キシャァァァッ!!
ローダ一家とルヴァエル一派が争うForteza市郊外を、夕陽の如く真っ赤に染め上げた紅に燃える翼を広げた少女が割って入る。
人間が発した声とは思えない生命の雄叫び。戦場で争う誰もが空を見上げた横殴りの戦慄。
「り、リイナ!?」
「あ、アレが不死鳥を取り込んだリイナの姿か!」
ルシア、普段は自分を『御姉様』と慕ってくれるリイナ・アルベェラータの変身ぶりに緑色の瞳を見開く。
愛娘ヒビキの出産を不死鳥の力を扱い手伝ってくれたリイナ──力の本質をそこに見たローダの思い。
ダンッ!
不死鳥姿のリイナ、その背中から飛び降りローダ機の肩に飛び移った大胆不敵。よく見知っている髭面の戦士。
「ローダァッ! お前の黒か刀ばおいに一振り寄越せぇッ!!」
示現我狼の創始者──ガロウ・チュウマが溜まりに溜まった己の正義と自由の刃を振り翳すべく、胸を張って大いに咆哮した。




