第96話『Chromatic Ascension(極彩色の出撃)』 B Part
ローダ・ロットレンが一家総出にて、サイガン・ロットレンとドゥーウェンが再構成を果たした人型兵器『EL・Galesta』に搭乗。完全なAI駆動である3機目と共に出撃した少し手前。
意気揚々とForteza市に、空から飛び降りて来たルヴァエル達。試作機『RaviNero』をさらに進化させた量産型。サイガンの仕掛けに弾かれた。
バチィィッ!
『……な、何ぃ!? 今のは一体なんだぁッ?』
弾かれた内の1機に乗機していたルヴァエル。
強力な電磁波に依る干渉を受け、仲間へ流す無線さえも雑音入り混じった文句と疑問の狭間。長い三つ編みを強く振ったルヴァエル、頭が酷く痛い仕草。
『……落ち着いてルヴァ。敵の云うバリア……そんなもの…無い』
ルヴァエル機と同じく電磁波に弾かれ地面に倒れたエレーネ機。無線すらまともに機能しない最中、通常営業の呟き。増々聞き取り辛い最年少の台詞。
『妹エレーネの言う通り……超強力な電磁波で一時的に『RavinGray』の操作中枢に少し影響を受けただけ。やられたわね……流石、リディーナ博士の師匠』
三人中、独りだけ成人を迎えた後、数年生きているエルミュラ・フィス・スケイル──大人女性の冷静な判断力。エレーネを妹と告げたあたり、血縁の一族か或いは妹分なのか。そんな繋がりを匂わす。
サイガン・ロットレンがForteza市上空に仕掛けた魔術の種。乱れた計器類を用いて瞬時に分析、仲間達を落ち着かせるべく吐いた言葉。
さらにエルミュラは『リディーナ博士の師匠』──実に気になる台詞を続けた。
リディーナ博士は、300年前にサイガン・ロットレンと吉野亮一から技術を盗むべく接触した挙句、弟子を偽った存在。
ルヴァエル達が乗る機体。腕は2本、脚部は3本の最新機──通称『RavinGray』。リディーナは、それ以前の試作機RaviNeroの設計者でもあるのだ。
少々解説的な話──。
試作機のさらなる以前、リディーナ博士が存命の時代。自ら設計から開発及び製造まで全てを手掛けた4足歩行の専用機が存在した。
この機体をもっと量産化しやすい設計に起こし直して、何れは各国に売り飛ばす算段だったのが、RaviNeroと、現在ルヴァエル達が搭乗しているRavinGrayなのだ。
従ってこの正式採用機RavinGrayですら、比較対象に上げると玩具の類に落とすのが300年前の前衛機。
然もこの初代黒猫の操縦者──。
ルヴァエル達が誇り高き先祖と日頃からあやかるレヴァーラ・ガン・イルッゾ。
さらに同乗者──蜘蛛の糸を繋いで電子の代わりを果たしたファウナ・デル・フォレスタの両名。
当時現人神であったファウナと、そのファウナすら従えたレヴァーラの専用機。
この戦場へ降下する際、エレーネが語った『エルドラ様の御意思』──。
実は当時レヴァーラ達の手が届かない場所に存在したエルドラを殺害すべく、リディーナ博士が制作した云わば呪縛の機体でもあった。まるで星を落とす様な話──然もそれは300年前に達せられた。
宇宙から襲撃を敢行出来た立役者──エルミュラと同じ姓名。『エルドラ・フィス・スケイル』即ちエルドラは、当時宇宙からレヴァーラ達と相対していた云わば天敵。
そんな憎悪の塊と云うべき存在を模した兵器を操るルヴァエル一派の特異が窺い知れる話。
エルドラ・フィス・スケイルと、レヴァーラ・ガン・イルッゾ──ルヴァエル達が真に従っているのは果たして何方なのか?
『慌てる事なんかないのよ。私達は普段通り、自分達の異能に力を集中すれば良いだけ』
最年長者エルミュラがルヴァエルと妹エレーネをさらに促す計算の上に成り立つ台詞。
執拗な話、RavinGrayはAI操作──。Forteza市を扉の異能者毎、掃討する様に命令が刻んである。
例え転倒した処で搭乗者達の操作不要にて野性動物の様子で勝手に立ち上がった。然も本物の生物が如く、岩盤に叩きつけられた痛みから頭を振る仕草さえ見せた。
ドガガッ! バァァァンッ!
バシュッ!
バシュッ!
『なっ!?』
『……!』
『あ、アレは!』
未だルヴァエル達が襲撃を果たせていないForteza市内から不意に湧き上がった轟音。操縦室の計器類が騒ぎ出した警告。
さらに金色の人型兵器がなんと翼を広げ天高く舞い上がった。
続いて金色よりは低めに跳んだ白の同機種と、最後に跳躍した漆黒の機体。
ルヴァエル一派の戦慄を呼び込む必然。あろうことか上空から見下された焦燥。
その内、金色の機体だけ、神の鉄槌でも落とすかの如く、悠々自適に上空を旋回し始めた。
エルミュラはRavinGrayの視覚が捉えた機体情報を即座に検索──正体は即時に知れた。
『アレはEL97式! 22世紀、連合国軍空挺部隊に所属していた機体が何故此処から!?』
機体照合をとうに終えたエルミュラ、次に駆け抜ける疑問。
22世紀に世界唯一の軍隊が所有した汎用人型兵器。過去から届いた|現代の技術を超えた存在が自分達を付け狙う逆転劇。
『く、クククッ……あぁ、もぅ我慢の限界。アァーハッハッハッ! 此奴はとんだ傑作だよ!』
『る、ルヴァエル……様?』
ルヴァエル、エルミュラからの報告を待つ迄もなかった。
腹を押さえた引き笑いから抱腹絶倒へ転じた。操縦席の肘置きを強かに叩いた。同胞のエルミュラとエレーネより動転を引き出した必然。
『エルミュラ、アレはEL97式改! 然も Lydina Customさ! こ、これは腹が痛い……無理ぃ』
リディーナ博士が設計したRavinGrayを操る自分達。
立ちはだかるのは、同じ血筋を引いた機体群。然も数すら揃った3機が出現したのだ。これは片腹痛いでは済まされないと感じた。
『然も黒以外は僕らと同様。機体から異能が溢れ出している!』
護りの女神の御使いを彷彿させる金色の光を散らした天使。
そして自分達のRavinGrayでも届かぬ最高点に達してから、大胆にも重力を載せた拳を振り下ろして来た白に輝く英雄。
躱すのに徹したRavinGray達。躱した後に残留するクレーターの様に拉げた地面がルヴァエル達を恐怖へ誘う。
最後尾の黒は堅実。
Forteza市に最も近しい場所へ着地後、これも瞬時に両拳を上げた戦闘態勢へ移行したのだ。常軌を逸した他の2機より学習しながら、動きへと反映していた。
黒い機体以外は、ルヴァエル自身が嘗て生身で戦った相手──扉を拓いた正候補者ローダと、彼を認めた精霊術を格闘に活かせるルシア。ルヴァエルには瞬時に知れたのだ。
パチンッ!
ルヴァエル、大胆にも既に繋いでいた無線を全方位──ローダ達にも知れ渡る様に切り替えた。
『エルミュラ! エレーネ! 遠慮は要らない! でなきゃ僕達の方が先に喰われる!』
ルヴァエル機より拡声器を通した感じの声が白の英雄と、金色の女傑達にも自ずと伝達された。敗北する気など微塵もない宣誓攻撃──敵味方双方へ堂々浴びせ掛けた。




