↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/252

第84話『Divine Truth of the Encounter ♪奏で"逢う"ひとの"神誠"✷』 B Part

 生命召喚(アルボケーレ)──。


 (かつ)てこのベランドナがForteza(フォルテザ)市にローダ達を招待(召喚)すべく使った呪文(スペル)。元来()りの女神ファウナ・デル・フォレスタが考案した術。

 それを再び用いた多大なる()()()()。されど今回は規模(きぼ)が違い過ぎた。直径約100mの錬成陣(れんせいじん)から立ち昇る蒼色の輝き。呼び込むべき者共──数人ではないと知れた。


 ベランドナの流した血を以て描いた陣は彼女の体力を(うば)う必然。

 さらにこの術式を完遂(かんすい)させるため此処までの道中、魔力(マナ)の消費も極力抑えた。


 然も召喚を成し得た後も彼女の先陣(過酷)は続くのだ。

 疲労したベランドナの脚代わりを引き受けた短剣使いのファグナレン。己が胸内にて詠唱果たした独りの女性──(わず)かでも力に成れた自分に誇りを見出した。


 ◇◇


「な……!?」

「なんて美しい輝き……」


 此方は敵地カーヴァリアレの砦の裏側──切りたった(がけ)の上でジェリド本隊の到着を待ち続けていた()()()()()()()

 ラオ守備隊の団長──青い(しゃち)の異名を持つランチア・ラオ・ポルテガと副団長──赤い(しゃち)を名乗るプリドール・ラオ・ロッソの両名。


 此処からでも見えたベランドナの為した輝き(狼煙)

 話には聞き及んでいた生命召喚(アルボケーレ)(きら)めき。想像を遥かに超越(ちょうえつ)した風景に言葉を(いっ)したランチア。代わりに継いだプリドールも異名通りの赤に顔を染める。


 例え人より進んだ魔法力を秘めた悠久の森人(ハイエルフ)の力と云えど、これが同じ人族の為せる(希望)!? 戦場の最中、人類の正しさ(はら)んだ高貴に心躍(こころおど)った。


 ◇◇


 敵地の背後から(おが)めた奇跡の()()

 敵地そのものからも映える当然──カーヴァリアレ・カルベロッソ等、ジェリド隊の宿敵に転じた連中も同じ光に反転の失望を見出す。


「──一体なんなのですかアレは!?」


 たじろぐカーヴァリアレに(にじ)む焦りの色。ラファン山中に敷いた石塁(せきるい)が敵の手に堕ちる以前、たった二人の兵が先行した事実は既に理解していた。

 されど精々威力偵察(いりょくていさつ)(たぐい)だとタカを(くく)っていたのだ。この現象が巻き起こす真実を知りたい処だが誰にも判らぬ正体。さりとて()()()()に思えた。


 ◇◇


 再び場面をベランドナ達の元へ返す。

 生命召喚(アルボケーレ)にて呼び出された者共は散りばめられた一粒の(きら)めきに分解され、術者が描いた錬成陣(れんせいじん)の元で再構成される。


 再構成されゆく者達──。

 すべからく揃いの白を(まと)う鎧の騎士達。ジェリド・アルベェラータを含むおよそ100名にも及んだ人々を数百kmは離れた己が地へベランドナは召喚したのだ。


「な、なんて無茶な……」

「……」


 生命召喚の本質を(ようや)く知り得たファグナレン。味方総勢をたった独りの力で引き出したベランドナの決してブレない他人を頼らぬ精神力。


 黒目を白黒させたファグナレンの瞠目(どうもく)(のぞ)き込まれたベランドナが無言で首を横に振る微笑。『最後、貴方が支えてくれたので出来ました』(人間)の優しさが()みた。

 

 ベランドナ自身、ただ男に支えて貰っただけの(幸せ)にしか思えなかった。年齢を忘れがちなエルフ族の民草(たみくさ)が蒼い星に抱かれた生命の(いとな)みを(かえり)みた。


「んっ……ンンッ!?」


 あくまでベランドナが召喚したのは元フォルデノ王国の騎士達であるべき。地元(ラファン)出身のロイド少年が()()をそこにみた。


 自分と同世代の女の子──(メイス)をついた長髪の少女。朝陽を浴びた樹々の新緑を思わす色合い。白いローブを羽織(はお)っていた。


「リタッ!? 何故君が此処に?」


 慌てて駆け寄るロイドに愛想(笑顔)を振り()くリタと呼ばれた少女。(ひそ)かに好意を寄せた想い人が走って来た心(はず)む気分を懸命(けんめい)に隠そうとする。


「ふふっ……光に成って失せそうなジェリド様方に思わずしがみついたら辿り着いちゃった」


 長い薄緑の髪を()き上げ片思いの相手を誤魔化(ごまか)すリタの強がり。リタはジェリド隊の助っ人としてラファンの民衆軍(Resistance)に付き添っていた。

 そして生命召喚(アルボケーレ)(おり)、ジェリド達へしがみつく格好で此処までやって来られた次第。


 ロイドが騎馬を渡す役目を帯びていたのは知っていた。だから彼女なりの冒険心(横恋慕)をかき鳴らして現れたのだ。


 想いを寄せるロイドにはブレぬ恋敵(ライバル)リイナ・アルベェラータが居るのは重々承知(じゅうじゅうしょうち)。ならばこそ地元にその()が居ぬ間こそ絶好の機会(チャンス)。自分だけ()()()()荒稼(あらかせ)ぎするつもり気満々なのだ。


 ──ロイド! くぅ! やっぱり格好良い!


 自分の手が届く場所に向こうから寄せて来たリタの幸福。リタの思いが語る通り、ロイド少年は格好可愛い(かっこかわいい)中々の美少年である。


 いっそのこと再会の喜びに乗じ抱き付いてしまいたいリタの複雑な乙女心。然しロイドとリイナの間柄(あいだがら)は云わば誰もが知る公認の仲。

 だから鬼の居ぬ間の何とやらも慎重を(きっ)せねば乙女の常識を問われるのだ。


「べ、ベランドナ! 大丈夫なのか?」


 生命召喚(アルボケーレ)を受けたのは二回目のジェリド、依って他の兵達と違いこの術に対する大した驚きは抱かない。

 然し手首を切った出血によりファグナレンに身を寄せた姿を即座にみつけ、此方も慌ただしく駆け寄った。


「だ、大丈夫です……Master(ジェリド)

「むぅ……」


 全く以て大丈夫には見えないベランドナの強がり。

 ジェリドとてベランドナの独りよがりな忠誠心(ちゅうせいしん)を知り抜いていたとは云え、巨大な錬成陣を血で描く無茶まで想像し切れなかった。

 思わず後悔の()を吐いたジェリド、隊を率いる作戦指揮ばかりに(かま)けた己の無力さを呪う。


「──あっ、私にお任せ下さい」


 ()()()()()()に等しきリタがよもやな割り込み。握ったメイスを天へ突き出す。早速の好機が巡って来たのだ。


戦の女神(エディウス神)よ、この方にどうか貴女様の御慈悲(ごじひ)を。湧き出よ──『生命之泉(プリマベラ)』」


 突き出したメイスが放つ輝き。完全とは云えぬがベランドナが自ら切った手首の傷が(ほとん)(いや)され顔色も幾分(いくぶん)落ち着いた。


「こ、これは細胞分裂活性化の奇跡?」


 手首の傷が治癒(ちゆ)された事実に驚くベランドナがファグナレンの支えから立ち上がり傷跡の様子や手首を動かし回復の状態を確認する。


 そして治してくれた少女の方を見やる一驚(いっきょう)。これは(まご)う事なき戦之女神(エディウス神)回復の御業(みわざ)。友人リイナが扱う術と同じもの。


「ま、まだ駆け出し……正式な司祭ではありませんがその程度の傷ならば私でも。あ、傷が(ふさ)がっただけで体力は戻りませんからどうか御自愛(ごじあい)下さいませ」


 初めてお目に掛かったハイエルフに仰々(ぎょうぎょう)しく頭を下げたリタの思惑(おもわく)。何ともやらしい話、エルフの女性から礼など不要。


 大好きなロイドの見守る前にて早速好感触(ポイント)を稼げたのだ。(むし)ろ自分がこのエルフに感謝を述べたい気分──心の奥底で舌を出した。


「あ、ありがとうリタ……ベランドナさんの傷を(いや)してくれて」


 少し(ひか)えめだが地元の()()にロイドが返した御礼の言葉。

 ロイドはリイナと公認の間柄(あいだがら)にも(かか)わらず押しの一手が弱い。彼は至極真面目(しごくまじめ)。故にこの感謝も異性に対する恋愛的な意識は皆無。


 ──良っし!

 

 それでもリタはその()()()()()()()()に於いて喜び勇んだ拳(ガッツポーズ)を握る。

 リタに取って可愛い過ぎるロイドの仕草は、まるで面と向かって感謝が云えぬ男の子の不器用さに映ったのだ。

 挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。