↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/253

第84話『Divine Truth of the Encounter ♪奏で"逢う"ひとの"神誠"✷』 A Part

 カーヴァリアレ・カルベロッソ──。

 (かつ)て同じ国を護る(にな)い手であった巨大な斧(バトルアクス)の使い手ジェリド・アルベェラータの師であった彼。

 フォルデノ王国・暗黒神ヴァイロが故郷カノン・()りの女神ファウナ神の故郷ラファンを一手に抑え込む砦の守護者。


 黒騎士マーダが(うば)いカーヴァリアレに護りを依頼したこの地を取り戻すべく、ジェリドは師と(こころざし)を分かつ舞台へ出向いた中途(ちゅうと)


 悠久の森人(ハイエルフ)ベランドナと短剣の扱いに長けたファグナレンだけを先行させ、やがてジェリドと同郷の少年ロイドと彼等は合流果たし、敵の本拠地へ向け樹々(きぎ)生い(しげ)る最中、早馬を駆けた。


 この戦闘に一切手を出す事(まか)りならん──。

 そんな理不尽を主人マーダから言い渡されたヴァロウズの三者。No3の剣士トレノ、No5の女格闘家ティン・クェン、No7の大気使いザラレノが過ぎた手合わせ(暇潰し)を望んだ結果。

 No4の女魔導士フォウ・クワットロからの壮絶(そうぜつ)なる()()を受けた一部始終。


 そのさらなる裏方、割と長い時間待ちぼうけを喰らった連中。既にカーヴァリアレが護る砦の背後。但し100mはありそうな崖上から見下ろした先に在る。


 ジェリド本隊を待ち受けているラオ守備隊の団長ランチア・ラオ・ポルテガ。危険極めた崖の上を普段地元で操る船の様に騎馬を見事()()()()先に辿(たど)り着いたが故、暇を持て余していた。


 けれども仮にジェリド達が正面から訪れた処でこの崖を如何(どう)にかせねば挟撃(きょうげき)などとおいそれにも言えぬ現状。


『団長は此処から一体如何(どう)するつもりだ?』


 自由過ぎる団長(大きな子供の)()()()()、副団長プリドールでなくとも自然と沸き立つ疑問符。


 渦中(かちゅう)の人、ランチアは此処まで道案内をしてくれた勇気ある少年ビアットとすっかり意気投合。

 20代前半の未だ子供じみた若さ残る男性と、勇猛(ゆうもう)さと知恵を(あわ)せ持つ少年。


 年齢を越える(くだ)けたやり取り、崖下に居る敵に(さと)られぬよう待ってる間。経った数日の間柄(あいだがら)を一挙埋め尽くす会話に華を咲かせていた。


 そんな()る日──。

 やはり暇を持て余したランチアがいよいよ子供の様に蹴った石ころが谷底へ転がり行くのを見送った。


「ムッ!?」


 妙に気になったランチアが幾度(いくど)も石を同じ場所から蹴り落とす。増々以て少年じみた仕草を繰り返した。


「おぃビアット……さっきから石が同じ場所を転がってゆく様に俺様には見えんだが……」


 歳の離れた友達を(かえり)みるランチアの少年心。


 ラオの海を思わす青い鎧に込めた団長の意地と矜持(きょうじ)。なれどビアットへ語り繋ぐランチアは、そんな偉ぶった肩書きを一切合切(いっさいがっさい)捨て去る。

 まるで新緑が芽吹(めぶ)いたばかりの純粋無垢(じゅんすいむく)寄越(よこ)した。


 話が()れるのだがプリドールも、この純情(じゅんじょう)(にじ)むランチアの(胸元)()()()()()()()返した昔の経緯(馴初め)があった。


 一見切り立った()()の崖。されど現実的には()()9()0()()なんてそうそう在りはしないもの。だが極ありふれた大人ならば気にも留めないものだ。


流石(さっすが)おいらの見込んだランチア兄ちゃんだな。目の付け処が違うぜ」


 如何(いか)にも満足気な腕組みを以て(うなず)いたビアット少年。


「ア"ンッ!? 一体何言いてえんだビアットぉ?」


 確実にランチアを()めているビアットなのだが、まるで幼なじみから(あお)られた(てい)で絡み出す。


「いいから耳貸しなって……」


 勿体(もったい)つけるビアット。他の友達(連中)には内緒にしたい気分を匂わした。


 態々(わざわざ)(かが)んでビアットに耳を(かたむ)けたランチア()()の友情。


 もしこの場に()()()()()()()()()()29歳独身のプリドールお姉さん(お母さん)が居れば、さぞや(とうと)絵面(えづら)身悶(みもだ)えしたに違いなかろう。


 それはさておきビアットの耳打ちを聴きながら見る間に顔色が上気(じょうき)してゆくランチアの面白味。心躍(こころおど)る気分を抑え込めなかった。


「へぇ……そいつは滅茶苦茶(メチャクチャ)面白れぇな」


 続々(ゾクゾク)と仕上がりみせるランチア捕らぬ(たぬき)の皮算用。この漢が決めたからにはそれはもぅ絶対なのだ。


 ◇◇


 一方、形式上とは云え『Master』とベランドナが呼称するジェリド・アルベェラータからの依頼。

 樹々や岩などを避けながら馬の速歩で駆け続けることおよそ3日目。目指す敵の本拠地が(ようや)く視界の枠組みに(とら)えられた。


「──アレか」


 実に気に入らぬ態度を隠す気がまるで感じられないファグナレン。

 目指す砦の最上階でたなびく赤い竜の紋章。己の()(きざ)み付けたものと同一。


 150年程前──黒と白の神竜を(したが)えた戦争。

 資金繰り以外の参戦を遠巻きに見つめただけの国が(かか)げる偽りの御旗(みはた)。いい加減な歴史年表に並びたてた恥ずべき伝承(でんしょう)の印。


 やはりと云うべきなのか──敵は間違いなく(かつ)ての同僚(どうりょう)達。守り抜けずに置き去りし、動ける自分達だけ尻尾(しっぽ)を巻いてマーダ勢から逃亡した。


 つい数日前、自身に潜む正義の在処(ありか)を悩み抜いた二丁拳銃Leythe(レイジ)mend(メンド)の使い手レイ。


 ファグナレンは、ほぼ等しき憂鬱(ゆううつ)に取り()かれそうな己を振り払いたき思いに駆られた。

 既に散々殺ったとはいえ、決定打を打たれた気分。然も此処からが本命──あの中に居る者共を狩り尽くす迄終わらぬ()()()()()


 ──筆舌(ひつぜつ)に尽くし難い……か。こんな(とき)に使うのか?


 どれだけ(えら)ぶる言葉を並べた処で全然足りないと感じざるを得ないファグナレンの苦悶(くもん)(にじ)(あふ)れた。


 ──こんな迷い……俺もジェリド隊長に比べれば未だ精進(しょうじん)が足りないのか……。


 ファグナレンが心底敬意を示すジェリド・アルベェラータ。

 昔フォルデノ王国の聖騎士団を(まと)め上げる立場に在りながら国民を(かえり)みない王の政策に異を唱える代わりに胸の赤い竜をナイフで削り取り、(かぶと)を投げ捨て堂々脱した(辞めた)


 ラファンの山中に出現した同じ色した鎧の連中相手にも全く(おく)せず、自分の信ずる正義を(つらぬ)き通した。少なくともファグナレンの赤目(迷宮)にはそう映った。


「既に敵地は目前……今さらブレた処で如何(どう)にもならん──んっ?」


 現状のファグナレンに取って最も判り易き正義の在り処(ありか)──ジェリド隊長の命を遂行(すいこう)する()()

 その為にはベランドナとロイド少年を守り抜くのが必須。その辺りなら気の迷いなど微塵(みじん)もなかった。


 そのベランドナへ視線(思考)()()()ファグナレン。奇妙かつ何やら危い仕草を悠久の森人(ベランドナ)にみつけた。


 ベランドナがナイフ片手に何やらうろついていた。樹々が少ない場所を幾度(いくど)(めぐ)っていたのだ。


 フラッ……。


「──ッ!」


 驚愕(きょうがく)したファグナレン。遠目がちで見逃していたのだが、ベランドナはナイフを己の手首にあてがい出血を地面へ()らしながら同じ場所にて周回を重ねていたのだ。


 そのベランドナが倒れそうになるのをみつけ、鎧を鳴らす全力疾走(ぜんりょくしっそう)()げるファグナレン。


「ベランドナ()! 一体何の真似だ!?」


 自分の胸元へ落ちたベランドナを赤い目(ゆが)め見つめたファグナレンの没入(ぼつにゅう)

 美麗(びれい)極まるハイエルフの女性が息を荒げ、己の顔を見上げる姿に湧き上がる心揺らぐ想い(不信)を抱く。彼女を体現(たいげん)した金色の髪がファグナレンへ垂れて風に揺られた。


「じょ……()()()()()()()()()()()()。私がこれからやる事を支えてくれますか?」


 息を荒げ胸を上下させるベランドナが珍しく敬称も敬語も捨て去り、自分を支えた人間の男へ手向(たむ)けた懇願(こんがん)。続いてロイドも駆け寄るが何やら近寄り(がた)い空気を二人から感じた。


 何とベランドナ、直径100m程の錬成陣(れんせいじん)を己の手首から流した血で描いていたのだ。


「ベランドナ!? ──いや判った。魔法や精霊術の助力は出来んが貴女を支え切ってみせる!」


 涙目を(しか)め声を張り如何(どう)にか(しの)ぎ切ったファグナレン。

 ベランドナの手を真心込め握り、自分の身体に流れゆく漢気(おとこぎ)(あふ)れた誠意を注ぎ込む。


 やれるのか──?

 出来ないのか──?

 下らぬ理屈を振り払った漢の凛々(りり)しき顔立ち。


 琥珀色(こはくいろ)の瞳を瞠目(白黒)させたベランドナ。

 正直深い意味などなかった。足りぬ血とこれから多量の魔力(マナ)を消費するが故、ただの支柱になって欲しかった。


 されど(いだ)かれ握られた処から理屈通らぬ心地良き力の源泉(げんせん)を感じ取り、迂闊(うかつ)にも緩みきる。


「──『生物召喚(アルボケーレ)』」


 ベランドナの口紅(ルージュ)要らずな唇から(おごそ)かに発せられた護りの女神(ファウナ神)(ゆず)りの魔法。巨大な陣から蒼い光の柱──星々を昼時の空へ()()天へと伸びた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。